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最弱のドラゴンは今日も生きる  作者: 因幡うさぎ
第一部
5/8

最弱のドラゴンは作業を覗き見る

 壁の裏側に隠れていると、スラリとした体で、金髪のロングパーマスタイルの美男子がやってきた。結構なイケメンだ。結構なイケメンなのだが……


 あの人間何やってんの。人の家で唐突に彫刻なんて始めて。人間のいう土地権なんてドラゴンにないけど。

 

 あいついつもノミとハンマー持ち歩いてるのか。芸術家か何かか? 個人情報も鑑定出来ればいいのになぁ


【〈あの人間〉の情報を開示します。

名前:ルドルフ=エリソン

種族:ハーフエルフ

職業:上級冒険者/芸術家

身長:181cm 体重:62kg


ステータスは自身より強すぎるため表示できません】


 …鑑定できたんか。そしてもう俺より強い人間現れちゃったよ。それより種族のハーフエルフってなんのことだろう。地球にはなかった種族だな。


【ハーフエルフ:非常に長命とされるエルフと他種族が交わって産まれた存在。ただ、エルフは潔癖症のある種族なので、他種族と交わることを良しとしない。よって、非常に珍しい種族であると共に、エルフから疎まれる存在でもある。耳が少し尖っているのが特徴】


 いや、エルフってなんだよ。そして他にも種族があるのか…。取りあえずエルフはっと。


【エルフ:非常に長命とされる人型の種族の1つ。通称森の精と呼ばれ、森に集落を築いている。排他的な種族であり、他の種族を集落に近寄らせることはほぼない。なおエルフは美男美女が多く、耳が尖っているのが特徴】


 まぁ純血主義の人間みたいなもんか? んでハーフエルフが純血主義から見る裏切り者みたいな立場か。

 そのハーフエルフ、ルドルフはここで絶賛彫刻なうだけどな。あ、とても綺麗。やっぱ本職なだけあるなぁ。


 ……あれから3時間ぐらい経過したか? ルドルフは女神像を完成させらしい。その間ずっと俺はゴロゴロしてた。覗き穴に近づくと、ルドルフの独り言が聞こえてくる。


「…やっちゃった。うっかりこの彫刻に見惚れて自分も彫刻を彫っちゃったよ、しかも2個も。反省しなきゃ。それにしても、この彫刻掘ったのは誰なんだろう、会って話をしたいな。明日もここ来てみようかな。それでは失礼、お邪魔しました」


 そうルドルフは部屋に礼をし、去って行った。

 …あれ? ここって言語日本語だっけ? まあいいか。人間から逃げる立場だし。


 5分ぐらい経ったし、そろそろいいかな? 俺は隠れスペースから出る。ほう、これがルドルフの彫った彫刻か。

 女神の方は流水が如く滑らかだ。岩で作られた布1枚ですらも、絹のような滑らかさを醸し出している。


 マーライオンの方は、これはまた猛々しい雰囲気だ。下半身の魚も、負けず劣らず堂々としている。教科書で見ていたのとは違うが、これはこれで名作だ。


 ルドルフ=エリソン、彼は地球でも最上級の部類に入る彫刻家と言っても過言ではないレベルだった。これ、最初のお客さんなんだぜ?


 よし、これ、飾るか。飾るスペース…うん、物置でいいか。置く物なんてちょうど無いし。ただ飾る台は作っておくか、ガリガリガリ。

 俺はルドルフ作の女神をなるべく傷つけないように、慎重に慎重に移動させていったーー

 ハァ、これ結構神経使うな。手の先はかぎ爪だし。俺はチラリと台に飾った彫刻を見る。いつ見ても見事だ。

 …折角だし台座に作者名刻むか。英語でルドルフ=エリソンっと。うん、美術館らしいね。


 これってさ…俺が地球の名作を彫って放置しておけば、ルドルフが勝手に彫ってくれるんじゃね? 明日も来るって言ってたし。


 今度の作品は日本ので行きたいな。日本と言えば神社、神社と言えば、千手観音が思い浮かんだ。

 ガリガリガリガリガリガリ…。これって何も知らない人が見たら「なんだこのモンスター!!?」とか言われそうだな。


そう考えてると、不意にあくびが出た。もう寝る時間なのだろう。今日はここまでにして、お休みなさい。



 おはよう、それじゃ彫刻彫りますか。ルドルフは今日も来るって言ってたから、早めに仕上げないとね。これももし作ってくれたなら倉庫増築して飾ろうか。昨日彼が来た昼過ぎまでまだまだ時間はある、丁寧に作るぞ。

ガリガリガリガリガリガリ…。ほい、完成。結構いい出来なんじゃないか?

 これで後は隠れて待つだけだ。早く来ないかなぁ。


~ルドルフサイド~


 ……洞窟の中から方からガリガリガリと音がしていた。そして鳴り止んだ瞬間、僕は丁度洞窟の入り口に着いた。出て行く人は見ていない。つまり、つい先程まで作業していた人が、まだ中にいるということだ。

 よって、あの彫刻を考えた人に会えるということだ。侵入してるのがバレて警戒しているだろうから、武器はいつでも出せるように…と。


「ごめんくださーい」と、声をかけてからゆっくり入った。しかし返事はないし、襲いかかってくる気配もない。

 この洞窟の中にいるのは確実なんだけどな、隠れてるのかな?

「怪しい人ではございません、昨日あの彫刻に見惚れたので貴方にぜひ、お目にかかりたいと思っている次第です」

 

 …誰も出てこないな。あ、そういえば昨日置いていった彫刻はどうなったのだろうか。壊されてないといいけど。


 そうして辺りを見回すと見つけたのは、台座に飾られた僕の作品達、そして、彫刻があった場所には前回とは違う、新しい彫刻が置かれていた。


 そして近くに丁度いい岩も置かれていた。なに、僕にこれを作れと? 作らさせて頂きます。


 これは…人型だけど、多数の腕が全方向に伸びている。それらから作り出される円形は、太陽のようにも思えた。これは太陽をモチーフにした神の作品なのだろうか。


 これだけ腕があれば、武器を持っても強そうに思えるだろう。この人の作品らは神をモチーフにしたものが多そうだ。武器を沢山持たせて武装神として作ろう。腕の本数を減らして小型化すれば旅のお守りに丁度いいかもしれない。

 さて、どっちを作ろうか。これを仕上げたものか、武装神……やし決めた。武装神を作ろう。


 コンコンコンコンコンコン…


 …結構な時間が掛かってしまったな。これでも速さと精密さには自信があったのだが。もう体感的に外が暗くなる時間だろう。


 今日も作者には会えなかったな。もしかして自分が彫っている間ずっと隠れているのだろうか。そうだとしたら、結構な人見知りと言うことになる。


 探し出して会いたいところだが、今日はこの作品を彫れて満足したから帰ろう。もしかしたら、明日もまた新しい作品がここに置かれているのだろうか、楽しみだな。それでは失礼しました。僕は部屋にお辞儀をして、帰路についた。


~俺サイド~


 …これは千手観音というより腕の多いカーリー、と言った方が合っているかもしれん。それでも腕1本1本に込められた情熱が伝わってくる。

 俺は、このカーリー像を、インド神用の展示場を作って、飾っておくことにした。さて、次は何を作らせようかな。


 そんな日々が、後5日ほど続いた。

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