最弱のドラゴンは自立する(強制)
…親に捨てられた。つまりそれはこれからは1人で生きなければいけないことを意味する。
そう、最弱の俺がだ。瀕死のイノシシに負けるような最弱の俺が。これから、俺は1人で狩りをしなければならないようだ。それも中型とかは無理だろう。ウサギみたいな小型の動物を狩って……。ドラゴンがウサギかぁ、なんかシュールだな。
そして人間に見つかったら当然アウトだ。絶対全勢力を挙げて狩りに来るだろう。
つまり、これから人間に見つからないように小動物を探して東奔西走しなければ行けないのだが…。って、あ。
蕎麦生成、神スキルやん!
蕎麦食って洞穴に引きこもってればいい。うん、それだけで生きてられるな。よし、〈蕎麦生成〉!…
ーーー数時間後ーーー
……暇だ。親の住処ならともかくこんな洞穴でやることってなんだよ。すっげぇ暇なんだけど。
ちょっとこの洞穴狭いかな。ちょっと広げてみようか。もうちょっと横幅欲しいな。あと体広げて寝るスペースも。
ガリガリガリガリガリガリ…。うん、自分が住んでた部屋の4倍ぐらいの面積はあるな。
ここも掘って物置にするか。置く物はないけど。ガリガリガリガリガリガリ。はい完成。次は人が来たときに隠れるようなスペースでも掘るか。ガリガリガリガリガリガリ…。あ、やべ爪欠けてきた。ガリガリガリ…。んでちょっとした動く土壁も作って。ガリガリガリ。完成。下の方に覗き穴を開けといた。
…暇だ。思ったより爪強かったな。うん。それだけ。暇だ。よし、彫刻でもやろう。ガリガリガリ…。
はい完成。中学の教科書に載ってたマーライオンの像。あともう一つ女神像も作ってみた、ローマ風に裸体に布1枚だ。一応俺は美術の成績は5だ。多少荒削りだが彫刻も出来る。他に何を作ろうか…。
~その頃近場の街で~
「なあ、なんか山の方から奇妙な音がするらしいぞ」
「何かあったのかい?」
「いや、音以外は何もないんだ。山奥の生き物が森の浅いところに出てくるみたいな話は特に聞いていない」
「ふぅん、それはいいけど。少し気になるねぇ」
「お前そろそろ別の街に行くんだろ? 折角だから調査してくれないか? 安いけど報酬は用意する。どうだ?」
「折角だし受けさせて貰うよ」
「おう、んじゃ冒険者ギルドまで行くぞ」
~俺サイド~
……うわぁぁぁぁ!!! 彫刻以外にやることないのおおおおお!!!?
よし、セキュリティだ。洞窟に誰か入ったときに分かるように何か工夫しよう。日本だと、庭に石をジャラジャラ撒いて踏んだら音が出るようにだとか。
適度な岩を砕いて入り口に撒くか。岩と岩をぶつけて、こうじゃ! よし、これを撒いて、よし、ジャラジャラ音はするな。
~依頼された冒険者サイド~
さて、ここが変な音のする山だったかな? 一応、警戒は怠らずにいくとしよう。
……早速ドゴドゴと音がしてるね。こっちの方角かな? あ、音が止んだ。
少し歩くと見つかったのは洞穴の入り口だった。少し不自然に石がばらまかれているね。何か住んでるのかな? ちょっと入ってみようか。
ー俺サイドー
次に隠れる訓練だ。来るのが分かっても咄嗟に隠れられなければ意味はない。
隠れ方はこうだ。あらかじめ作ったスペースに、カモフラージュ用の動く壁がある。
スペースに逃げ込んで、壁で道を塞ぐ。それだけだ。それでは実践だ。
まず音がする、そして全力で隠れスペースへ駆け込む。そしてカモフラージュ用の壁を移動させて……って重! この壁重いぃ!
ハァ、ハァ、やっと閉められた。これは改良の余地があるな。
俺は早速隠れスペースから出て、改良しようと思ったその時だった。入り口の方からジャリジャリと石の音がしたのだ。
……丁度隠れててよかった。俺は安堵の息を吐いた。
さて、来た侵入者は誰かな。俺は覗き穴から向こう側をじっと眺めることにした。
~冒険者サイド~
…なるほど、これが不自然に岩がばらまかれていた理由か。これを庭にびっしり撒いておけば、音が人の存在を知らせてくれる。どこの誰のアイデアかは知らないが、次に護衛依頼があったときに真似させて頂こう。
こんな物を使うとなるとかなり人のような高度な知性を持ち合わせていることになる。もしかしたら人が住んでるのかな?
少しだけ長い洞窟を進むと、僕は突き当たりに到着した。とても生活感溢れる突き当たりに。
「…え?」
そう声が漏れるのも仕方ない。こんな洞窟でこんな生活するような生き物。いや、これはもう人間の生活風景と言っていいだろう。こんなとこにわざわざ棲む人…ねぇ。
少しだけ失礼して、調査を続行させて貰うとしよう。ここは誰の土地でもないのだから。
なんだこの石像は……。これは頭がキングレオで、体は、魚、えーと、これは…デプルフィッシュの胴体か。なるほど、中々面白い発想だ。
それでこっちの石像は……裸体の女? いや、この石像はどことなく神秘的な雰囲気だ。恐らくどこかの女神でもモチーフにしたのだろう。神様と言えば祈りのポーズや降臨なさるようなポーズの石像が主体だ。これは裸体に布1枚なのだが、今の私は、かの女神に包まれているかのような気分を感じている。
……素晴らしい作品達だ。だが惜しいことに少しばかり荒々しい彫刻だ。あぁ、今丁度いい岩があるなら私が綺麗な彫刻を作るのに!
あった。




