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桜井誠史郎

作者: 灰猫

「誠ちゃんサボリ~?」

夏生と秋生が保健室でスーツ姿の誠史郎をからかう。

「講習会ですよ。うるさいですね」


「うそー働いてるっぽい~」

秋生がおどけてみせる。

「うるさい夏生秋生。北斗先生、あとよろしくお願いしますね」



不機嫌そうに誠史郎は足早に学校を後にする。

「怒りに任せて早くできちゃったじゃないか。仕方ないどこかで時間をつぶすか」


仕方なく誠史郎は近くの喫茶店を探す。


「おーい桜井?」


振り返ると懐かしい顔に呼び止められていた。



「海藤・・・?」

誠史郎より小柄だが筋肉質の男性が声を掛ける。

「懐かしいなあ。何してるんだ?時間あるなら飯でもどうだ?」

「あ、ああ」


そして2人は近くに見つけた喫茶店に入った。


「お前も講習か?」

「海藤もか?」

「まあ専攻内容が違うから別ホールだろうけどな」


「それよりそっちは相変わらずスクールカウンセラーかい?巡回型じゃないなんてかなり特殊だな」

「んー。そっちは研究畑か?」

「んーまあな」

しばらく雑談をしたのち、

カツカレーを食べる手を止めて海藤が話し始める。



「桜井、お前は忘れないか?あの日を」


「ん?あの日?」



・・・・・・



あの年のあの日研修医の2人は精神科担当に回されていた。その日は夜勤だった。

救急車の音が鳴り止まない。



「筋注!筋注して!!」


「ちょっと早くホース突っ込んで水全開出して、口入れて!!」


「こっち痙攣とバイタル低下。誰かフォロー入って!」




「桜井先生!!」



「俺ムリッ!今5番で縫ってる!」




「新患です!海藤先生!」




「海藤!おまえ新患行けコメディカルと押さえて最悪セルシン!!」





・・・・・・・・・・・・・・・・





「くはーっ!一服がしみるねー」

白くなってきた東の空を誠史郎と海藤は見上げていた。



「桜井、すまん。俺何の力にもなれなくて・・・」



「ん、気にすんなよ。そんなの。ここでは日常茶飯事だろ?」



「人が変わってしまうことにこんなに自分自身に抵抗感があるなんて・・・」



「いーんじゃないの?進路しぼれただろ?」

笑いながら誠史郎が海藤の背中を叩く。



「桜井は精神行くのか?」


「精神ねぇ・・・資格がいるからなあ」



煙をくもらせて誠史郎は黙り込む。



・・・・・・



その君を心配しているってそのウソっぱちな顔が大嫌いなのよ!


そんなに嘘をつくのが好きなら精神科医になればいいわ!

表情変えずにその薄っぺらい笑顔で患者の相手をすればいいのよ。


あたしのことなんてなんとも思っていないくせに!


・・・・・・


「俺さあ顔の筋肉軽いみたい。

だから~重いところいけそうにも無かったんだよね~。脳外とか」


「なんで脳外だよ。十分重いよ。外科だって切るだろう?」


「俺だって少しは傷ついちゃったりもしたりするわけ」


「だからなんで医局に残らなかったんだ?」

カレーを口にしながら海藤が問う。



「医局もいいけどさあ、笑顔で送り出せるところがいいなって思ったんだ」


「ふーん。医局も回復すれば笑顔だけどな」


「でもさコレ給料安いの!もうねビックリよ?」


「夢ねーな。お前。そこ変わってねえ」


「結局ガキに囲まれてキャーキャーされる位かねえ?」


「お前キャラ変わったな。続けるのか?スクールカウンセラー。外来できるくせに」

海藤の顔は少しもったいないな。と見えていた。



「さあ、どうかねえ?お前は」

今度は誠史郎が質問する。


「おれ精神病理行くんだ」

海藤は静かに口を開く。



「へー。すげえな、おまえは裏方のエキスパートだな」

誠史郎が関心していると、


「おまえは表で人と携わっていくんだな。人が好きなんだな」

海藤がうらやましそうにつぶやいた。



誠史郎は軽く苦笑いをして、どーだかね?と答えていた。







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