長旅の疲れは睡眠で癒しましょう。
こんにちは。
2作目を作成してて遅れてしまいました。
すみません。
それは俺がトイレに起きた時だった。
相変わらず隣には女子達が居たがある一人だけ見当たらなかった。どこだ?自分の部屋に戻ったのか?そう思いとりあえず用を済ませて探してみる。リビングから向こうの部屋へと繋ぐ扉をノックし、
「居るのか?入るぞ。」
この部屋に入るのは初めてこの世界で目を覚ました時以来だ。リビングを見渡してみたが彼女は居ない。
「おい、どこだ?千、大丈夫か?」
少し探してみるか。居なかったら仕方ない、従者のみんなも起こして手伝ってもらうしかない。
「おーい。」
かつて俺が目を覚ましたベッドのあった寝室に入る。今は何があるのか…
「お…い……。」
開けた途端俺は目を疑った。
かつてベッドのあったその場所には棺のようなものが置いてあり、そのベッドをお札や蝋燭で囲ってあった。なんだ、これは…
俺の脳内の辞書にアクセスする。
これは…蘇生儀式!?
一体誰を蘇生させようとしているのか。
開けようと棺に手をかけた瞬間入り口側から殺気が放たれた。
「!?」
「何のつもり?勝手に私の寝室に入って。」
いや、別にいいだろ、お前も入ってるじゃん。俺の寝室。つーか寝てるじゃん。
「お前の姿が見えなかったからな、探しに来たんだが。それより、これはどういうことだ?」
「由良に答える必要性が感じられないわ。だいたい、儀式の邪魔をしようとするなんて、あり得ないわ。」
「確かに答える必要があるかないかで言えばないのかも知れない。だが、蘇生儀式はSランク魔術。失敗すれば命の危険も!パートナーなんだ、説明があってもいいだろう!!」
「分かってるわ!でも、私はこの命を削ってでも、この人を助けたいの!」
「この人は……誰なんだ…?」
そう聞くと腕を差し出してきた。
「言うのは辛い…そういうことか。」
事の重大さに一瞬躊躇いを覚えたが、何故だろう。知らなくてはいけない、そんな気がする。
「じゃあ、観るぞ。」
「いいわ。」
「記憶再生」
そう言って不明ランク魔術を発動するため、千の腕に触れる。
どこからだ…ここか。
凄まじい糧の彼女の記憶の中から必要な記憶だけを選んでいく。
ここは………?あ、そうか、彼女は俺みたいに他の世界から連れてこられた人じゃないのか。そこから見える景色には巨大な城が見えた。
「あそこのえーゆーさまになるのが、わたしのゆめなんだ!!」
千が周りの子供達に高々と宣言していた。
次の記憶は…
もう少し大きくなった千だな。
「ねぇ、唯威、私は貴方と英雄になってこの街を護る。だから、私と………。
やっぱなんでもない、ごめんね。」
そこには苦い笑いを浮かべる幼い千と同じ歳くらいの少年がいた。
「千、一緒に、英雄になろう。だから、強くなるんだ!」
これは数年前くらいか?
「唯威、この程度かしら?」
「まだまだ、油断は大敵だよ!千!」
夕暮れの中二人野原で特訓をしている。
この頃から千は片鱗を見せていた。素早い動きに複雑な魔術構成。才能か。
しかし唯威とかいう少年もあの素早い動きについてきている。中々やるな。
「今日はそろそろ終わりにしましょう。そろそろご飯が出来るわ。」
「そうだね、やっぱ強いなー、千は。クラスじゃ僕も敵無しなんだけどなー。」
「なに言ってんのよ。唯威、まだまだよ。」
夕陽が沈みかかる中、二人は賑やかに道を歩いて行った。
これは2年前だな。
「やったね、唯威、私たち、アービレイト地区の代表になれたわ!」
「喜ぶのはまだ早いよ、千。ここからだ。」
「そうね、トーナメントで勝ち残らなきゃ。」
そうか、守護者を決めるのにトーナメントを行っているのか。
「やったわ!次は決勝よ!私たち、あと1勝でやっと!夢が叶う!」
「あぁ、次の戦い、負けられないな。小さい頃からの夢を叶える!」
順調に勝ち進んでいる様だ。まあ、それもそうか。
「ハアッッ!」
ジャキンッッと剣と剣がぶつかりあう度に金属音が鳴る。
「ぐっ、唯威!」
「無理だ、こっちも手がいっぱい。そうだ!千、アレで倒すぞ!」
「分かったわ、ハァァァアア‼︎」
相手の剣士と剣で攻防をしていたが唯威の出した合図で距離をとる。
「暗黒の檻」
唯威の放った魔術が炸裂し敵は身動きが取れなくなった。
なるほど…彼は…
「今だ!千!」
「任せて!灼熱の息吹‼︎‼︎」
最後に千の放った魔術によって勝負はついた。
「「わぁぁぁぁーーー」」
会場を観客の声が覆い包む。
勝者、唯威、千!!
アナウンスの後で結果を改めて理解したのか、二人は手を取り合い喜び合った。
「そんな、なんで!!なんでよ!!」
「いいよ、千。もう。良いんだ。」
二人は手紙を読んで、それぞれが驚愕と絶望、落胆の混じった悲嘆な声を上げていた。
どれ……
その手紙には、勝者である千だけを城を護る守護者とすること、唯威は海の向こうへ追放すること。この2つのことが書かれていた。
なるほど、臭いものには蓋ということか。
注)唯威は常にシトラス系の良い匂いがしてます。
説明すると、彼の決勝で使った魔術は、闇属性のA2クラス魔術。別に闇属性がダメとか言うことはない。が、この魔術は術者を選ぶ「選考」という性質があり、この魔術が選ぶのは危険性の高い魔術師。つまり、この魔術を使ったことから「彼、唯威は危険な人物である。」と決め付けられてしまったのだ。危ない芽は早めに摘み取っておくということだろう。
「そんな、唯威は何も悪いことしてないじゃない!私、唯威とじゃなきゃ守護者をやる意味がないの!!」
「良いんだ、千の小さい頃の夢なんだろ。」
そう言って唯威は去って行った。
次の記憶はつい最近か。
「珍しく敵が来たぞ。」
「「敵!?」」
「おもしろそーだな!」
「落ち着け、セイヤ、敵なんて珍しいから仕方ないが。」
「何人ですか?リンドウさん。」
「ふっ、1人じゃ。」
「1人とか舐めてるんですかね…」
「城まで入れてみませんか?静さん」
「おいおい、もし危険なことになったら責任取れるのか?零。」
「任せて下さい。もしそうなったら空間転移しますから。」
「おいおい、怖いこと言うな、まあ責任を取れるなら許可してもいい。」
「ありがとうございます。」
「早く来ないかなー!!」
「落ち着きたまえ、セイヤよ。」
「だってー!リンドウさんは楽しみじゃないんですか?」
「戦いを楽しみだなんて思ったことは無い。」
「へぇー。」
「いま扉の前だ。」
その時、、
ゴォォォン!!
凄まじい音と衝撃が走った。
「来たか!」
「行きますよ、セイヤさん。あ、千さんも行きますか?」
「じゃあ、行くわ。」
「気をつけてな。」
そして、零、セイヤ、千の3人が零によって城の入り口に向かって瞬間移動した。
「アレのようですね。」
零の指を指す方には、ボロボロになった城の門とその前に砂煙が隠されて立つ人影があった。
「久し振り、千。」
「!?」
声の主である人影は砂煙に覆われて誰かわからなかった。が、次第に晴れていくその人影の正体に千は誰よりも早く察していた。
「どうして、唯威?なんでこんなことするの?」
「これは、復讐だよ、千。だから、邪魔しないでくれ。」
「おい、千!何してる、お前の役割を遂げろ!」
「ぐっ…そんな……私に…唯威を殺すことなんて…!」
「強制部分転移」
「!?ぐあぁぁぁあっ!」
零の魔術により彼の右腹部が一瞬にして消え、そこから凄まじい量の血が噴き出す。
「零…!待って!彼はそんな人じゃない!だから、殺すのは!」
「関係ありません、侵入した時点で、死刑は確定です。これは、仕事なんですよ、千さん。」
「そんな……!」
「さあ、千さん。殺すんです。」
「私には出来ない!」
「千、やってくれ。頼む。」
「なんで……!こんなことに___!」
大粒の涙を垂らしながら悲惨な叫びが飛ぶ。
「早く。楽にしてくれ、千。」
「あぁぁぁぁぁぁ、破戒。」
千の絶叫と共に放たれた魔術によって唯威の身体は倒れた。
「ありがとう。」
という言葉を残して。
用が済んだので千の記憶から抜け出す。
「なるほど、こういうことか。つまりこの棺には唯威が入っているんだな?お前の手で倒れた。」
「えぇ、そうよ。唯威を。あんなところで死ぬはずじゃなかった。どうして、あの唯威が反逆なんてしたのか。私には知る権利があるのよ!」
「だからと言ってお前の命を削る理由にはならないぞ。止めるんだ、千。」
「邪魔をするならあなたを殺す。」
やれやれ……
ここで千と戦うのは頭が悪いな。
「分かった。そこまで言うなら邪魔はしない。落ち着け。今日はもう寝よう?」
「私は…もう少ししたらまたベッドに行くわ。」
「無理はせずに…な?」
「分かったわ。」
これが最善の策だろうか。
とりあえず、その時は寝ることにして、この一夜の事件はひとまず終わりを迎えた。
まだ、何も解決はしてないないが。
いつも通り朝食をとって準備を済ませ、部屋を出て仕事部屋と言う名の雑談部屋に向かう。そして、何事もなかったかのように、先に着いていた千の隣に腰を下ろし、今日も仕事を始める。
今回は千の過去編ですね。
どうか、今後ともよろしくお願いします。