初仕事の開始ですが。
遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
拙い文ですがお願いします。
凄いのか?
「どうやったの?」
千が不思議そうに聞いてきた。
「炎終抹はA2ランクに指定されている高難度魔術だよ。炎操作が得意な魔術師なら簡単だけど、にしても、違う世界から来て2日で発動できる物じゃない。」驚きながら飛華流はそう言った。
にしても飛華流って結構驚くんだな。
冷静沈着でポーカーフェイスだと思ってた。
「それより、由良、左眼は大丈夫なの?
さっき左眼から凄い勢いで光のようなものが飛び出てたわ。」
「………左眼は…見えていない。が、別に痛みはないし大丈夫だ。」
「………そぅ…」
左眼の失明なんて、死ぬよりかはマシだ。
それより…
「あれ?皆さん防衛は?終わったんですか?」
「あはは…」
「タハハハハ」
「笑笑」
そう言った瞬間みんなが笑い出した。
え?なんなの?気持ち悪っ。
「実はこれらは御主の力を測る為の演技だったのだ、騙してすまんな。だがお陰で吾輩は凄いもんが見れた。」
相変わらず厳ついな雷起さん。
「そうだったんですか!あの炎の龍は誰がやったんです?」
「それは私の従者よ。明日の朝見せると言ったでしょう?おいで、サティー。あとパールもヴァティーも。」
そう言うと炎の龍が飛んで来た方向から1人、そして後ろから同一人物かと思うほどよく似た2人が姿を現した。
「彼女たちが私の従者で、炎龍演舞、さっきの炎の龍の技を出したのはサティーで、この双子がパールとヴァティーよ。私が言えたことじゃないけど、みんな私たちと同じ年だからあまり遠慮しなくてもいいわよ。」
なるほど、サティーというのか。
命を狙ってきやがって!
サティーは赤髪を肩の下まで伸ばしていて、その赤髪にパーマをかけている。頬にあるそばかすが幼さを感じさせる。
パールとヴァティーは見分けがつかない。それほど似ている。が、どっちか分からないけど片方の目元に本当に小さい涙ボクロがあるからそれでもしかしたら見分けられるんだろう。どっちだろ。
「宜しく!ゆらりん!さっきはごめんね、仕方なかったんだ…許して?」
そんな…上目遣い…ズルいっ。
まあ、ゆ、許してあげよーじゃないかー。
とまあ、それについては別に良いけどさ。
なに、その「ゆらりん」って。
勝手に呼び名決めるな、本人に確認が大切だろ?
ほら、まだ知り合って日が浅い女子クラスメイトAにその子と仲良い人たちが普段呼んでるニックネームとかで調子に乗って呼ぶと辛いじゃん。
「なに、こいつ…ニックネームとかお前それで呼べるほど仲良くねぇだろ…キモっ」とか目で伝えてくるじゃん。
注)彼の中学二年生の頃の実話です。
まあ、いいか。
注)彼は「ゆらりん」と呼ばれてちょっと嬉しかった。否、だいぶ嬉しかった。
「「私たちは双子で、」」
「私はパール」「私はヴァティー」
「「宜しくお願い致します」」
す、すげえ…
練習したのかな?したんかな?
にしてもぴったしだったな。
で、さっきの2人の挨拶で分かったのは涙ボクロがある方がパールだということ。よし、これで見分けられるな。多分。
「よ、宜しく。」
それで…さっきの続きだけど…
「じゃあセイヤが倒れたのも演技だったんですね?」
「いや、それなんだがな…どうやらセイヤは話を聞いていなかったらしく全力でやろうとしてたから飛華流が気絶させたんだ。」
苦笑いを浮かべてリンドウが答える。
そして飛華流が礼をした。
じゃあつまり…
「セイヤ寝坊してきたし。」
なんだ、あいつも寝坊したんだ笑
「そろそろ起きますよ。」
と言って丁度セイヤの体が動いた。
「う、どーなって?」
「セイには小生が説明しておく。」
そう言い困惑するセイヤを頭を掻きながら帝姫が奥に連れて行った。
「宜しくお願いします。」
綺麗な顔で怖いことするな…飛華流。
説明は済んだので部屋に戻ることにした。
部屋に戻ってからすぐにベッドに沈んだ。
相変わらず見えないな。
今までより狭くなった視界に少し虚しさを覚えながら、左眼を摩った。
痛みはない。
仕方ないな…
この世界で守護者として生き抜くには魔術に関する知識の方が大切だ。
なら、左眼は生贄となっても問題ない。
それよりも。
「あの声は一体何だったんだろうな…」
「あの声ってなにー?」
「うわぁぁっ!」
耳元で急に湧いて出た声に身体が飛び跳ねるほど驚いた。
「なんだ、居たのか、みんな。」
入った時には気付かなかったから思考に老けている最中に来たんだろう。
「今日は疲れたから寝させてくれ。シャワー浴びてもう寝る。あと眼帯を買ってきてくれるか?」
「分かりました。」
「「「おやすみなさい…」」」
残念そうに聞こえたのは俺の耳が悪いんだな。
「じゃあおやすみ。」
シャワー浴びて寝室に戻って時間を確認する。
まだ16時ごろだけど、やっぱり早寝早起きだいじだよね!
目覚めると辺りはすでに明るくなっていた。
朝か……
今日から守護者として城を守り始める。
つまり今日から初仕事日だ。
現在時刻は7:45。良く寝たなー…
いや、集合は大広間に8:00。
やばい。寝坊した。
すぐに用意しないと。
寝室からリビングに行くと良い匂いがした。
良い匂いの元ではスレイプ、ニールの2人が食事を作っている。
「フレキは?」
「はいはーい、由良様洗面所にお越しください!」
フレキは俺の髪のセットと洗顔をしてくれた。
「ありがとう。」
そこで丁度料理が出来たようだ。
「出来ましたわ、由良様。」
食卓に運ばれたのは小麦の良い匂いのするよく焼かれた二枚のトーストと白身と黄身のコントラストが、食欲をそそる目玉焼き。そしてその下に溢れんばかりの油を蓄えた、香ばしく燻された匂いのするベーコン。
ジャムはイチゴだろうか。白い小皿に盛られたごろっとした果肉に甘そうな赤い液体が絡み付いている。コップに注がれたのはアールグレイの紅茶だろう。注がれて動き回る茶色の液体に匂いが遅れてついてくる。
とても美味しそうだ。
しかし、ゆっくりと味わう時間はあいにくない。
「いただきます。」
先ずはこのジャムをトーストに塗りたくる。
トーストにはみみが無かった。
一口齧り付く。
サクッという音と共にイチゴと小麦の香りが口の中に一気に広がる。そしてイチゴの果肉感とトーストの弾力性が魅力的なハーモニーを奏でている。美味い。
「その食パンは私とニールが小麦から作ったもので、ジャムもイチゴを煮詰めて作りました。お口に合ったら宜しいのですが…」
「ああ、美味いよ。料理が上手いな。」
そう言うとスレイプとニールは目に見えるように照れていた。
よく見るとこの2人、目元あたりが似ている気がする。
「そう言えばスレイプとニールって姉妹か?」
「ええ、言いませんでしたっけ。私とニールは姉妹ですわ。」
やはりそうか……
「むむー。」
唸る声のした方を見るとフレキが口を窄めていた。なんだ、拗ねてるのか?
「なあ、フレキ。支度を手伝ってくれるか?」
「うん!!!」
いつもの弾けんばかりの笑顔がさっきの沈んだ表情とのギャップでいつもよりキラキラしてる様に見える。
食べ終わると同時に元気な声で
「服用意できたよ!!」
早いな笑笑
「あ、ありがとう。いま何時だ?」
「いーえ!7:55だよ!」
あと5分か。
素早く且つ念入りに歯を磨いた後で用意された服に着替える。
「じゃあ、行ってくる。」
「「いってらっしゃいませ。」」
「いってらー!」
丁寧な仲良し姉妹の挨拶と元気な挨拶に送り出された初仕事日の俺の足は軽やかだった。
「おはようございます、皆さん。」
大広間と呼ばれる部屋に入ってそう言うと俺以外の守護者は全員揃ってた。つーか大広間デカ。
「おはよう。集合には間に合ってるからセーフだな。」
よかった。間に合ったか。静さんはニコニコして言ったけど、なんか、失礼だけど、ニコニコやめて欲しい。怖い。
「由良くん、今日から本格的に守護者ですね。この世界に連れてきた私としては嬉しいです。」
連れてこられた身としては何とも言えません。
「そうですねー…そう言えば守護者って城を守るって言ってましたけど具体的に何するんですか?」
「守護者は敵が出てこない限り何もしませんよ。作戦会議とか。城の外に出るのは任務の時ぐらいです。あなたをこの世界に連れてくるのも任務だったのですよ。」
「なるほど。」
案外楽そうだな。
「今日も引っかからなそうだが。そうだな、では由良くんが魔術を知ったところで我らの役割と能力でも紹介していくか?」
「いいね、リンドウさん。誰からします?」
「ちょっと待ってください、リンドウさん、セイヤ。引っかかるって何ですか?」
「それを含めて紹介するが、我から説明していいかな?」
「はい。」
「我の能力は邪気感受で、
城の半径20キロメートルの円に敵意を持った者が入ったらすぐにわかる力だ。
このセンサー内に引っかかったら防衛戦が始まる。だから役割は監視。常時その円は張っておる。次は静でいいか?」
「分かりました。では、役割と能力について説明しよう。能力は全知全能で守護者の半数以上が知りたいと思った事を知ることができる。この能力で君の存在を知ったのだ。役割は主に作戦会議の司会進行と指揮だ。」
「あれ?ああ、そうですか。じゃあ次は僕がします。僕の能力は創造者と同調。
この能力は想像した人間以外の生き物を幾らでも実現することができて、同調はその生き物たちと五感を共有できる。役割は監視。作った生き物達を城の前の森に張り巡らせてる。」
「では、次は私が…」
「いや、俺がするっす!」
「吾輩がしよう。」
「いや、私がするわよ!」
ワイワイガヤガヤ
はあ、騒がしい人たちだ。
にしても初仕事って………
特にイベント無いな。
長めになりましたが次回は説明の続きから入る予定です。