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ドライブトリップ  作者: 飛鷹
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マスター=ご隠居

「うちのマスター、いや隠居がご迷惑をかけました」


アッシュと名付けたゲームキャラクターに似た青年が騎士団長に謝罪の言葉を伝えていた。

ちょっと待て。隠居って何だ、隠居って?

あの水戸黄門の黄門様の「ご隠居」を英語では「マスター」って言い換えてるけど、なぜそれが私にも当てはまるんだ?

いろいろと突っ込んでやりたいけど、自分の情報収集の為に、ここはじっと我慢でアッシュと騎士団長の話に耳を傾ける。

というか、話に突っ込めないのよねえ。

私の前に四人の壁が立ちはだかってるから…。

みんな背高い…ガタイ良し…。


「…召喚獣ではなく、転移陣設置の魔道具だったか。だが、そのようなものをこの部屋に断りもなく設置しようとするなど言語道断。貴様のマスターとか言ったな、なぜあの女はそのような非常識な事をする?そして、このような事をしてそれだけの謝罪ですむと思っているのか?ある意味、宣戦布告とも取れるぞ。」

騎士団長さんは先ほど抜いた剣を収め、怒気を含んだ声でアッシュに対応していた。

恐らくアッシュが質素な服を着ていたら、きっと騎士団長さんは剣を収めなかったんだろうな。

アッシュは、スマホの画面で見たときと同じ煌びやかなローブを着て、装飾品もたくさんつけている。

装飾品を多数つけると、人によっては逆に品位がないように見えるけど、アッシュの場合はどこをどう見ても高貴な身分に見えた。

だから、騎士団長さんは、相手の身分を推し量り、剣を収めて言葉で問い質そうとしているのだろう。

…私に接していた時と随分対応違うんじゃん。

私にはなんかいろいろ感情的になってたわよね?

アッシュには冷静に対応するとか、やれば出来るのね~とか思ったけど、もしかしたら、私にはわざとあのような対応をして、私の反応を見ていたのかもしれない。

だって、『団長』職でしょうから、そんなに感情のままに動いちゃだめよねえと思ったし。

そんな中、アッシュは、自分が相手にどう見えるかを十分に把握しているようで、笑みを浮かべて騎士団長に相対していた。


「非常時だった為にどうかご容赦ください。それから、今回の件については、事前に貴国の国王に了解は取っておりますので、なんら問題はないです。上層部から圧力が加わる事はないですよ。むしろ、私達にその剣を構えただけで、振り下ろさなかった事を逆に褒めて下されるでしょう。」

「なに?」


なんだか、アッシュさんがさらりと凄い事を言ってる。

そして、なんかさらに突っ込んで聞いてみたい事を言ってる。

アッシュに相対している騎士団長さんは、続く言葉が出ないようで口をパクパクさせてる。

うん、まあ、まさか国王の名前まで出るとは思ってなかったんでしょうねえ。

ここ辺境地区でしょう?国王様とかも縁遠いだろうし。


しかし、事前に了解取ってるってことは、私がここに異世界トリップしてくる事って予測されたことなのかなあ。

そんでもって『逆に褒められる』ってどういうこと?

ああ、なんか、聞きたい事が一杯増えて、後から聞きたい時に覚えていられるかしら。

忘れてなけりゃいいけど、



「事前に許可を取るということはどういう事だ。………その肩に付いているエンブレムは…浮遊大陸の魔皇国アーネィゴウのもの!?…アーネィゴウの者ならばその許可も下りるか!だがしかし、非常時とは……いや、待て、そうすると、そこの身元不明の女は!?」


騎士団長さんが再起動した。

そして、いろいろ推理を働かせたのか、私を見てなんかぎょっとした表情に変わった。

え?私は、何もすごい背景ないよ!何、何?なんかあるの?

この五人の人たちが魔皇国アーネィゴウの人達ってのも今初めて聞いて、その魔皇国アーネィゴウがなんかも判ってないし!

アーネィゴウ…アーネィゴウ…なんかちょっと聞き覚えはあるけど、立派に思い出せん!ははは


「彼女については詮索無用ですよ。…これからも騎士団長として生きていたいでしょう?」


な…なんか…物凄い脅迫をアッシュが行ったーーーー!

騎士団長さんは、無言で首を激しく縦に振っている。

後ろに控えていた数人の騎士さんたちも騎士団長と同じ動作をしている。

…私って、超危険人物扱い?


「彼女をこの部屋に連れてきたけど、危険はなかった。そして、ここで無罪放免で宜しいですね。」

「わ、判った。」

「そして、この部屋での会話は他言無用でお願いします。このことを…報告しても良いのは、貴国の国王だけです。」

「わ…判りました!」


騎士団長さんは、何かに怯えるように即答で了承していた。

…なんか私が陰のVIPみたいに感じて凄くいやなんだけど…

なんだろう。

ともかく、こうして私は、あっさりと地下牢獄から放免された。

なんか、釈然としないまま、連れ出されたんだけどね。

アッシュ以外の四人の男達は、最初に私を罵倒しただけで、その後一言も喋らない。

アッシュに余計な口を開くなと命令されているのか、はたまた、自国(魔皇国)とは違う国で迂闊な事は喋れないからと警戒しているのか…。


「というわけで、マスター、魔皇国へお連れします。いろいろと私達に聞きたい事はあるでしょうが、それはまた後ほどゆっくりとお答えします。私達も貴方にいろいろとお尋ねしたい事がありますからね。」

アッシュは、私に向き直るとそれはそれは魅力的な笑顔を浮かべてこうのたまってくれた。

「………うっ…は、はい……」

なぜだろう。

その笑顔に物凄く黒いものを感じて、私は冷や汗がじっとり浮かんできた。

拒否の言葉を言う事など一切許さないという雰囲気に飲まれて、私は了承の返事を返していた。


しかし。


「あ、いくのはいいけど、私の車も回収して!」

私は、愛車の事を忘れていなかった。

あの車をあのままあそこに置いてく事は出来ない。

やっとローンが終わったばかりなのよ!


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