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ドライブトリップ  作者: 飛鷹
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何ですか、この展開…

「え?マスター?誰がっ!?」

『いいから私の名前を喚びなさい!喚んだら貴方の助けになれる!』

「なんか良く判らないけど…名前を喚ぶの?あなたの名前を?」


…ってか、誰だ、あんた。

ごめんなさい、思い当たる人がいないんですが…。



スマホの待ち受け画面に映るその人物を見つめる。

若い男性の絵姿。

肩までの黒い髪に灰色の瞳。

服装はなんだか煌びやかな豪華なローブ?みたいなのを着ている。

装飾品もバリバリと何種類か身に着けている。

そして、スマホのアプリのコンシェルジュの声では決してありえない、人としての感情がこめられた男性の声。

…まじで誰だ、これ。…

私は頭を抱えた。

が、そんな悠長な思考に浸っている暇は実際はなかった。


スマホから聞こえたその声は、そばにいた騎士団長さんにも届いていたのだ。

団長さんは、驚愕の表情を表していた。

ですよねー、魔力がない筈の人間が魔道具と思われるものを動かして、その魔道具から声が聞こえるんですから。


「『喚ぶ』?…となると、その声は召喚獣か!?この部屋は魔法遮断の布陣も敷いてある。声さえも届かぬはずなのになぜ!?」

騎士団長さんは、私の手に取ったスマホを召喚獣とやらを呼び出す魔道具だと思ったのだろうか。

スマホを奪おうと、机の上に身を乗り出すようにして手を伸ばしてきた。


「違う!違う!これ魔道具なんかじゃない!私に魔力がないって言ったのは団長さんでしょう!?」

一歩後ろに飛びのきながら、私はスマホを死守した。



そもそも、私の携帯の待ち受けに表示されていたのは、実家の猫だった。

猫がなぜ若い男性の絵姿などに変わって、しかも話しかけてくる?


そんな私の心の焦りをスマホの中の人物は察したようだった。


『マスター、貴方…まさか私の名前を忘れているんじゃないでしょうね?』


え?忘れている?知ってる人なわけ?

いや、西洋人顔の知り合いは私には一人もいないよー。

…ウン、イナイヨネー?ウン、イナイ…ハズ…

そう自問自答したものの…


あははは、やばいよ、やばいよ。

おそらく私が知っている人だわ、これは。

スマホの中の人の殺気が物凄い。

そして、自分の中に沸いてくる焦りが半端ない。



さっさと思い出さないと、この世界で殺されるよりも恐ろしい事態が待ち受けていると本能で感じた。



男性なのに『私』と自分を言う事は、いいところの出身の人間…

そして、頭もよさそう…

灰色という変わった瞳の色が印象的な男性。


ああーーーーっ!


瞳が灰色、頭が良さそうの下りで、この絵姿の男性が一人だけ思い当たった!

確か私が少し前に遊ぶのをやめたカードシミュレーションゲームのキャラクター!

だ、だけど、あれは2D画面のゲームであって、こんな現実的にいそうな3Dの絵姿の男性像はしてなかった。


『マスター、遊んでいる暇はありません。早く私の名前を!』


スマホの画面に映された人物が私に向かって叫んでいた。

そして、眼前では騎士団長さんが剣を抜き、部屋の外では、数人の騎士がこの部屋に入ってこようと扉を開け放していた。


ひえーーーー。怖い、怖いけど、今の私は剣を持った騎士さんたちより、このスマホの中の人の名前を喚ぶ事の方が最優先事項だろう。

でないともっと悲惨な目に遭ってしまう!

ええ、確実に!!!

自分がプレイしていたゲーム2Dの姿とは若干違うものの、瞳の色が一緒なのでこの画面の人の名前は『これ』に違いない。

祈りをこめて、私はその名前を喚んだ。



「アッシュ!あなたは、アッシュでしょう!?」


私の声を聞き届けたように、スマホが激しく輝き、室内に魔方陣が映し出された。


そして、数分後…



「まったく世話が焼ける。」

「この異世界に知識もない人間が『車をご存じないんですか?』などと、この世界の人間を断じるな」

「こういう不測の事態には、まず相手から情報をもらうのがセオリーというものです。無論、こちらも情報提供は必要ですが。情けない…」

「お前の勝手な常識が、世間一般…いやこの世界の常識だと思うな」

「マスター、これからいろいろとこの世界について学んでください。いい年過ぎているので、覚えるのはなかなか大変でしょうけど、きっちり学んで頂きますからね」

「……………」


私はその人物を始めとして五人の男達から懇々と説教されていた。

…何が起こった?

どうしてこうなった。訳判らん…


騎士団長さん達はといえば、私を囲む五人の男性陣に威圧され、近づく事も出来ない状態となっていた。

えーと、私は、名前を喚んだのは一人だったのに、なぜ五人もの男性が現れたんだろう?

そして、突如現れた五人の男性陣は一応私を守っているのだろうか?

貶してるようだけど…



そう、私の周りにはざっと五人の男達がいた。

…実は、五人とも見たことがあった。

ただ2Dゲームの世界の住人としての姿だけど。

そう、彼らは全員いろんなゲームで私がプレイしてきたキャラクターたちだった。

何でこいつらが、今この異世界に、私のプレイキャラクターとしてじゃなく、別個の存在として存在している!?

それになぜに3Dになってしまっている?

しかも、私をマスターと呼びながら説教たれる!?

貶めている!?

何が起こった。何でこうなってる!?



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