四角い箱
数年ぶりに文章書いてみます。
何千番煎じか判らない異世界トリップですが、書きたくなったので書いてみます。
趣旨に合わなかったら、批判なしにそっとこの窓を閉じてください。
「…あの四角い箱は一体なんなのだ!? 答えろ!?」
「…車ですよ」
「車? それは一体なんだ!?」
「私の国の乗り物です」
「乗り物だと!? 我が国アルイザードを始めとして、この世界にはあんな乗り物を使っている国はないぞ!」
「はあそうなんですか…」
私は無気力に答えてあげた。
先ほどから唾を飛ばしそうな勢いで私を詰問する人に、まじめに答えるという気力など当の昔に失われていた。
とにかく声が大きくて煩いのだ。うっとおしいったらありゃしない。
でも、まあ気持ちは判るんだけどね。
うん、私と車、この国にしたら物凄い異端者というか、気味悪い造物と思われるだろうねえ。
そんなことを考えながら、私がなんと答えればこの人は納得するのかなとその人の瞳を見つめ返した。
そして、出てきた言葉は私が折れるのではなく、相手を折れさせるような言葉だった。
「なんと言われましょうと乗り物は乗り物なんですよ。現に私があの四角い箱に乗っていたのは見ていたのでしょう?」
私=車、目の前にいるこのお方を始めとする数十人の方々=馬に乗ってた。
私自身は、何かお祭りで馬に乗ってるのかしらと、目の前に現れた馬の集団を前にして、暢気にもそう思っていた。
乗っていらっしゃる方々の容姿や髪の色やその身を包む衣装でさえも、コスプレかしらと華麗にスルーして…。
けど、心の中では、結構冷静に否定したい考えはうっすらと浮かんでた。
その否定したい考えは、先ほどよりも確実に大きくなって心の中に浮かんでいたけど…まだ明言はしないし、認めたくはなかった。
と、ここまで考えて、目の前のお方に視線を戻す。
そのお方は、言葉に一瞬詰まったものの、それでも強気の詰問の姿勢を崩していなかった。
悪い意味で頑固、良い意味で言えば気丈?…どっちでもいいし、この人に当てはまった言葉なのかどうかを吟味する気力も今の私には正直言って…ない。
「 うっ…。た、確かに貴様は乗っていた…。だが、あのような乗り物など見た事がない。貴様は一体どこの国からやってきたのだ、言え!」
なんとなく、この国には車という乗り物はないんだろうなという気はしてた。うん。
そして、ここは自分がいた世界じゃないんだろうということも。
あ、しまった、認めたくない思考だったのに、明確に心の中で確立させてしまった。…
まあ、仕方ない。だって乗ってた車は、世界のTOY○TA製なんだもの。
微妙に伏字になってないって?いや、そこはスルーして。
TOY○TAは「日本」が誇る自動車メイカーじゃない!
そのTOY○TAが判らなければ、日本も判らないだろうと簡単に推測は出来るもの。
だがしかし!断る!一応言ってみる。
「…聞かれたからにはお答えしますが、日本ですよ」
「ニホン? そんな国など聞いたことはないぞ!」
あー、やはり、そうですか、そうですね。お約束ですね。もう、結構です。
「うん、そうでしょうねえ。私も今いるこの国、アルイザード王国なんて私の世界では聞いた事ないです。…この世界に私が居た国を知っている方がいらっしゃったとしたら逆に驚きです」
「…馬鹿にしているのか、貴様は!?」
偉そうに私を詰問する銀髪の美丈夫は、その表情を怒りに染めて、私を睨みつけた。
…うん、若いんだね、この人。そんなに感情を表面に出すなんて。
でも、もし上に立つ人だったりしたら、そんなに感情的になるのはいただけませんよ?
なんて事を口にしたら、ますますこの人は苛立ちを顕わにするだろうなと思い、私は肩を僅かに竦めるだけに留めた。
でも決定打は、この人の口から聞かずに、自分から言うべきでしょう。
判ってしまったからなあ。…
「信じたくないかもしれないですけど、多分私、この世界とは違う世界から来たみたいですよ」
「はっ?」
銀髪の美丈夫さん、目が点になった。口も半分開けたままで硬直してる。
「車見たことないんですよね? あれ、私のいた世界では普通にあるものなんです。だから…違う世界から私は来ちゃったということなんでしょう」
そこは、アルイザード王国の辺境にある北部の砦から少し離れたとある建物の地下にある牢獄の一室。
私は、住み慣れた日本からどれほど離れているのか全く判らない異世界・アルイザード王国に何故か居た。