プロローグ 「優しい顔」
こんにちは、太姫です。此度は、超人を狩る者〜スキルハンター〜にアクセスいただき、誠にありがとうございます。小説初心者なので、文面やストーリー構成に何らかのマイナスはあるかとは思いますが、どうかこの小説の連載にお付き合い頂けたら幸いです。では、どうぞ。
雨が降りしきっている。その雨音は、決して優しい音ではなく、ただただ、うるさかった。
とある街外れの街道。道行く人々が雨に鬱を感じながら傘をさして歩いている。そんな中を、傘もささずに、豪雨に濡らされながらさまよい歩く、赤いボサボサの髪の小さな少年がいた。
「ねえねえ、おかあさん。」
「なあに?」
「あの男の子、かわいそう。」
その言葉に反応し、赤髪の少年はすれ違った母子をギロリと睨んだ。あまりに形相の悪いその目を前に、母親は少し戸惑った。
「こ、こら!失礼なこと言わないの!ご、ごめんなさいねっ!ホラ、行くよ!」
母親が慌てふためいて、子の手を引っ張りその場を足早にさっていった。
「・・・・・。」
振り返って母子の後姿をじぃっと見つめ、また前へ歩き出した。
「かわいそう、か・・・・・。・・・っ!」
大きな石につまづき、少年はずぶ濡れのアスファルトの上にうつ伏せに倒れた。
「・・・。」
少年は動こうとしない。いや、はたから見れば、もう動けないのではないかと思うほど、その姿は惨めだった。
「おや。ボウズ、大丈夫かぃ。」
そこに1人の老人が通りかかり、少年に話しかけた。
「・・・れ。」
「ん?何じゃ。」
「黙れ!!!同情なんかしないでよ!!!どうせなんにもしてくれないくせに!!どうせ助けてなんかくれないくせに!!!どうせアンタも僕のことをかわいそうだとか言うんだろ!!!どうせアンタも僕をあんな目でっ・・・・え?」
少年が顔を上げた途端、少年は罵声をあげるのをやめた。
「なんで・・・?」
「何じゃ。」
「なんで、そんな優しい顔するの・・・?」
まるで、孫を愛でるような老人の優しい笑顔が、そこにあった。
「しゃっしゃっしゃ!面白い質問するのぅボウズ。」
老人はケラケラと笑い散らした。
「目の前に倒れてる小さい子を見捨てられるほど、わしゃ非情ではない、ただそれだけじゃよ。」
老人は、ホレ、と、少年に手をかざした。少年は唖然としながらも、老人の手を握り、立ち上がった。しわくちゃで、カサカサな手、でも、どこか懐かしい、温かい手だった。
「お家はどこじゃ?」
「・・・ない。帰る場所なんか・・・僕には・・・。」
老人はその言葉に戸惑いを見せた。直後に、何かを決心したようだ。
「よーしボウズ、わしのところに住むか?」
えっ?と、少年は老人の顔を見上げたまま固まってしまった。
「何じゃ?帰る場所がないんじゃろ?」
「・・・いいの?」
「もちろんじゃ!わしの家は無駄にデッカイからのう!ボウズ1人くらい大差ないわい!!しゃっしゃっしゃっ!」
また独特の笑い声が雨音にまざって響く。
「・・・。」
少年は急に黙り込んでしまった。
「何じゃ?嬉しくて泣いてるのか?しゃっしゃっしゃっ。」
「“力”、あるよ?」
ボソっとつぶやくが、雨音のせいで老人の耳では聞き取れない。
「なんじゃって?」
「僕、“力”があるんだ・・・!」
申し訳なさそうに呟く。
「だから何じゃ?」
「えっ?」
「ボウズが能力者だったら、何がいけないんじゃ?」
「えっ・・・だって、今まで、僕が能力者だとわかった途端、みんな僕を恐れて・・・。」
「ボウズは人を殺すんか?その力とやらで。わざと人にその力を使ったことがあるんか?」
老人は淡々と問い詰める。
「い、いや、殺したりなんかしないよ。この力は人を殺すためにあるんじゃないから。」
「じゃあ、何のためじゃ?何のためにボウズは力を使う?」
「そ、それは・・・。」
「何じゃ?」
「・・・・・・・。」
少年は悩みに悩んでいる。
「何のためと聞いとるんじゃ!」
いきなり声を荒げた老人に、少年はビクッとした。
「ま、護りたい・・・。」
恥ずかしそうに呟く。
「何をじゃ?ボウズは何を護りたい?」
「僕の、大切な・・・モノ。」
「・・・・・・。」
「・・・わ、悪い?」
「しゃーっしゃっしゃっ!」
今度はいきなり笑い出した。少年は再度ビクッとした。
「な、なに?」
「この御時世に、珍しい能力者もいたもんじゃ!よく言った!ボウズ!わしのところに住め!今日からわしの家がボウズの家じゃ!しゃっしゃっしゃっ!」
あまりに爽快に笑う老人に、思わず少年もつられて笑みがこぼれた。
「ボウズもできるじゃあないか。」
「なにが?」
「ボウズの言う、“優しい顔”ってやつじゃ!」
「・・・へへっ。」
照れ臭そうに鼻の頭をかく。
「ボウズは格好が汚いだけじゃ。目つきが悪いだけじゃ。わしには見えるぞ、誰よりもキレイな、ボウズの心が。わしにはわかるぞ、誰よりも優しい、ボウズの気持ちが。それでいいんじゃ。いいかボウズ、ボウズはこれから、誰よりも優しくありなさい。誰よりも心を磨きなさい。ボウズの心のキレイさに惚れる味方がきっと現れる!わしのようにな!しゃっしゃっしゃっ!」
少年は黙って老人の話を聞いていた。その目には、涙が溢れていた。
「ゔんっ・・・ありがどゔっ・・・!」
そういうと少年は老人に抱きつき、泣きじゃくった。
「しゃっしゃっしゃっ!今まで我慢してたんじゃのう。まだ小さいのにエラいもんじゃ。」
老人は“優しい顔”をしながら、少年の頭をクシャクシャと撫でた。
「じゃ、ボウズ。」
「ひっぐ・・・ひっぐ・・・なに?」
「帰ろうかのう、お家に。」
「・・・うんっ!」
老人と少年は手を繋ぎながら、雨の中えと消えていった。




