肉体欠損虚像虚弱病
広い野原の中、たった一人ポツンと取り残されていた。新しい人達にすらも。
「下らない、ホントに下らねえ世界だな」
呟いてみても何も変わらないんだ。他の人より身体的に劣っている。それだけならまだしも、視力が極端に悪くなかなか前に進めないんだ。そんなこんなしているうちにどんどん現れていく新しい奴等にどんどん抜かされていく。
「立ちすくんでどうしたん?」
俺を越えて行こうとしていた奴の一人が声をかけてきた。
「こんなどうしようもねえ世界で何を急いてるんだよ。世界が下らねえならそこに住む奴等も俺も下らねえ」
「どうしてこんなに綺麗な世界を下らないなんて言えるんだい?」
何だよコイツ、自分の価値観を人に押し付けやがって、俺は俺なりの考えをもってんだよ。馬鹿にするな
「生憎だが、眼が悪いんだよ」
「そうなんだ。あーあー、可愛そうに。こんな綺麗な世界が見れないなんてさ、同情しちゃうよ。見せてあげたいなぁ」
この野郎、お前は人を馬鹿にできる身分かよ。そんなに見せてえなら
「テメェの眼を貰うぜ」
奴の眼を引き抜く、ブチブチと気持ち悪い音と意味のわからない喚き声が聞こえるが気にしねえ。俺の眼も引きちぎり、新しい眼をはめ込む。
綺麗かどうかは知らねえが、確かによく見えるこれはいい。地面に落ちている何かを無視して走り出すが、上手く走れない
「次は脚だ」
脚の速い奴を見付けて入れ換える。速く走れるようになるが続かない。次にスタミナのある奴から心臓を入れ換える、肺活量のある奴から肺を入れ換える、力のある奴から腕、聴力ある奴から耳、腎臓に肝臓に口に鼻に免疫から血液までも
「いったいどこからどこまでが君なんだい」
「知らねえな、始めっからみんな手ぶらなんだよ。個とか言ったって結局は組み合わせ、周りからの提供、強奪じゃねえか」
「それなら心は」
「それこそ付属品だ」
限界が見えちまった。どんなに脚を取り替えても本当に速い奴のようにいかない、どんなに腕を取り替えても本当に力のある奴のようにはいかない。つまり、俺の限界なんだろうな。元々大した能力も無くて欠点ばかりの奴がどんなに足掻いてもこれが限界なんだろう。全く下らねえな俺は
地面に転がる何かを見る。本来なら才能に満ち溢れた奴ら。
「俺が限界なら、入れ換えよう」
奪った腕で奪った刃物で、頭を切り開く。そして
脳を切り取った