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別れても

「別れよう」

彼は言った。面白い位真面目な声で。そんな声に、制服なんて似合わない。

「わかった」

 同じく制服の私は頷いた。なんだか、こんな会話、ひどく大人に見えてしまう。まだ、高校に入ったばかりだと言うのに。

私の言葉に、彼の頬が緩んでいく。

「明日から友だちに戻ろう」

 そう言って差し出してきた手に私は触れなかった。

彼が首を傾げる。

「それは嫌」

「え?」

 間抜けな顔。ごめんなさい。そんなに都合のいい女じゃないの。

「聞こえなかった?それはい・や」

 分かりやすく区切って言う。彼は少し動揺した。左手が前髪を触る。彼の癖。本当に焦っているのだと分かる。

「ど、どうして?」

 どうして?なんて、彼の口から出ていい言葉じゃない。

中学の時から、2年も一緒にいた。それなのに、高校に入ってすぐ、「好きな人ができた」の一言で終わらせようとしている。そんな彼の口から出ていい言葉じゃない。

 お揃いの指輪もネックレスも、2人で映る写真もきっとすぐに捨てられてしまうのだろう。この2年が何事もなかったかのように、彼は彼女を愛するのだ。

確かに可愛い人。長い髪も可愛い声も細い身体も。全部、全部彼の理想通り。

理想の人と両想いになれたのなら、それは別れを告げるよね。マンネリになっていた彼女との関係なんて。

私限定だった、優しい手もキスもあの子のものになる。

そして、2人でいる所に私は出くわし、気まずい雰囲気が流れるのだろう。

そうならないための防護策?それとも、私への同情かしら?

 でもね、ごめん。頷けないよ。

「好き」って気持ちは、一度切れてしまっては、もう結び直せない。私はそう思っている。

だからこそ、貴方の言葉に頷いた。

 だけどね。

「…私のことをもう好きじゃないんだよね?」

「えっ…」

「いいよ。頷くか、首振るか、してくれれば」

 そう言うと彼は静かに頷いた。

「そう」

「…ごめん」

「私はね。好きって気持ちが終わったら、もう戻らないと思ってる。だから、私を好きじゃないなら、もう「付き合ってる」っていうことで縛りつけておくことなんてしないつもり」

「…ありがとう」

「でもね。でも、私はまだ貴方が好きだよ。大好きだよ。だから、『友だち』だなんて思えない」

「…」

「別れても、まだ好きだよ」

「…」

「面倒くさくてごめんね。ただ、好きでいることは許してほしい」

「それは…」

「だから、『友だち』だって簡単に声をかけてきたりしないでね」

「…」

「嫌ってくれていい。面倒だって思ってくれていい。…忘れてもいいよ」

「そんな…」

 目を大きくした彼に首を振る。中途半端な優しさなんてつらいだけだ。

本当に優しくするつもりなら、別れなんて言わないでほしい。

でも、それが無理だったんでしょう?それくらい、貴方の優しさを失くすくらい彼女を好きになったんでしょう?

なら、いいよ。

思い出を捨てて、全部彼女に向けていいよ。同情すらいらない。

「忘れていいから、『友だち』なんて思ったりしないで。私は、まだ大好きだから」

 それだけ言って私は彼に背を向けた。

涙は出ない。

だって、ずっと前から知っていた。彼の心が自分にないこと。

でも、どうしても…。

「あ~あ。ここで泣ければ可愛いのかもしれないのにな」

 空を見上げた。これから、きっと彼は彼女に会うのだろう。そして笑い合うのだ。

きっと、これからは何度も泣くだろう。2人の姿を見て。

でも、いつか泣かなくなる日は来る。

今みたいに、瞳がカラカラ乾いて、空がクリアに見えるのだ。

それまでは好きでいる。

それを許してくれる彼はやっぱり優しくて、ずるいのだ。


読んでいただき、ありがとうございました!!!

なんて言うかこういう形式はどうでしょう?

自分としては短く、とても楽しく書けたのでこんな感じのものが増えていくと思います。悲恋ばかりではないですが。甘いのも書きます!!

あと、なんとなく、彼女にとって「ありがとう」って言葉が一番きついんじゃ…とか思いました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これって続きがありませんでしたか? [一言] これって続きが有りませんでした?
[一言] 普段とは少し違った文章というか内容(?)ですね+ こういうのも結構いいし、実際いいな。と思います。 話は暗いのに、読み終わったあと、心には優しい何かが残っています。 (文章変ですいません(…
[一言] ありがとうが一番つらいってまさにそうだ!と思いうおおおとなってついカタカタ打ちこんでしまいました。 自分の言いたいことがこんなにもクリアにことばにできる女の子、好きです。短く突発的な感想失礼…
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