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週末☆トリップ  作者: 秋野真珠
第一部
24/56

23 婚約者 ③

煌めくような光が入る姿見の間から、秋乃たちは昼食が用意してあるテラスに移動した。

「この季節は、ここが一番美しいの」

リリアがそう言って見せてくれた庭は、本当に美しかった。

大きなガラス戸を広げて出たテラスには、円を囲うように一周手すりがあるが大人なら乗り越えられるような高さだ。

その向こうには新緑豊かな芝生と、美しく咲き乱れた色彩豊かな花々が咲き乱れている。

きっと、この場所から見たときに、一番綺麗なように作られた庭なのだろう。

しかしその中には遠くには池や東屋のようなものもある。

この中をドレスを着たお姫様が散策とか――秋乃は本の中で見たお姫様の暮らしが目の前に広がっていて、さらには隣に座るのは本物の美しいお姫様で、夢のような心地で感動を噛みしめていた。

おばあちゃま、こんな世界を教えてくれないなんてひどい――そもそも、自分をファンタジー好きにしたのは曾祖母なのに、と秋乃は目を輝かせて庭の全景を記憶に叩き込む。

この王宮は広く(お城ではなく、王宮と教えられた)、上のほうの場所から地上のここまで歩く間、どんな風になっているか簡単に説明をされたが、秋乃にはきっとひとりで出歩くには時間がかかるだろうと思えた。

しかし簡単ながら理解したのは、ヴァレリーの部屋で秋乃が現れたのは仕事をするためでもある公室で、結構階級を問わず人が入り乱れる場所で、秋乃がぐっすりと眠らせてもらったのは中の宮という位の高い人用の客室だった。さらに奥に進むと、国王と王妃が住む後宮に辿り着く。

奥に進むにつれて、入られる人は限られていて、さっきまでいた姿見の間は後宮の上にあり、秋乃はそんなところにあっさり入れてもらって大丈夫なのか、と不安になってくる。

テラスに用意されていたのは3人分の食事だった。

勧められるまま秋乃はリリアの隣に座ったが、一歩離れてクリフォードの後ろに立ったままのヴァレリーに少し首を傾げた。

「アキノ、どうぞ召し上がれ。何も食べていないのだもの。お腹が空いてるでしょう?」

真っ白なお皿に乗ったのはどうしたらこんなになるの、と不思議に思うほどふっくらとしたオムレツだ。

黄色いからきっと卵なのだろうけど、言われるままフォークを差し込むととろりと中から具材と半熟さが溢れてくる。

「・・・・・!!!」

口に入れて、秋乃はその場で暴れそうになるのを必死に耐えた。

なにこのおいしいのー!!――今までの人生で、こんなにおいしいオムレツを食べたことがない、と秋乃は打ち震えた。

焼き立てのようなほかほかのパンに、ずっとそばで控えているシエラが朝と同じミルクティを淹れてくれる。

幸せ! ご飯がおいしいのは幸せ――秋乃は普段の不摂生も忘れてしばらく目の前の料理に夢中になった。

朝は食べられない、と言っていたが、こんなものが出されたら食べてしまうかもしれない――秋乃はご機嫌なままオムレツを平らげてしまった。

そしてふと視線を感じ、目を上げるとクリフォードの後ろから呆れたものを含んだヴァレリーの視線とかち合った。

そういえば、どうしてこの人は食べないの――秋乃は不思議に思って食べる姿も美しいリリアとクリフォードに聞いた。

「あの、あの人は一緒に食べないんですか?」

クリフォードは理解しているように笑った。

「ここは人の目があるからね――まぁ私はあまり気にしないのだけど、立場を弁えろとこの男は融通が利かない」

「本当にね、結構細かいところがあるのよ、ヴァレリーって」

にこやかな国王夫妻の会話も聞こえているだろうヴァレリーは、しかし始終無言でただ表情だけが不機嫌さを出している。

秋乃はそれを聞いて、少し居心地が悪くもなってくる。

それはこの二人と一緒の席につくには、やはりそれなりの立場でないと許されないということだ。

目の前の料理を平らげてしまって今更ではあるが、ひたすら恐縮してしまう。

「あー、あの、でも、私がここにいるのはやっぱり・・・」

「アキノはいいのよ。だって私のお友達でしょう?」

「そうそう、それにヴァレリーの大事な婚約者だ」

笑顔の国王夫妻だが、最初のほうは恐れ多いがありがたい、と思えても、後のほうは素直に受け入れられない。

食事も済んで落ち着いたところで、秋乃は勝手に決められている婚約者について改めて聞くことにした。

「ええと、どうして私が、婚約者なんですか?」

不機嫌な視線が突き刺さる。

その不機嫌な理由も、知りたかった。




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