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週末☆トリップ  作者: 秋野真珠
第一部
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序章

幼い頃の寝物語を聞かせてくれたのは曾祖母だった。

今思うとそれは独特な物語で、桃太郎でもカチカチ山でもなく、一寸法師やかぐや姫でもない。

王子様とお姫様が出てきて、笑ったり、怒ったり、泣いたり、そしてまた笑う――絵本を読んでいるわけでもないのに、曾祖母はいつも楽しい話を聞かせてくれた。

それはまるで、思い出を懐かしむような、記憶を蘇らせているような物語だった。

「おばあちゃま。それで? かおる姫はどうなったの?」

曾祖母は添い寝をするような人ではなかった。

幼い私を布団に寝かせて、その布団の隣に正座して背中をぴんと伸ばしていた。

いつも淡い色の着物を着て、幼子を見下ろす視線は優しいものばかりだったのを覚えている。

曾祖母の話す物語の主人公は、いつも「かおる姫」だ。

大きくなってから知ったことだが、それは若い頃、神隠しにあったという曾祖母の妹の名前だった。

かおる姫はとても可愛くて、優しくて、誰もがかおる姫を好きになる。

そんなお姫様だった。

幼い私が布団から曾祖母を見上げると、薄い手のひらが子供の身体の分膨らんだ布団を優しく叩いた。

「かおる姫は、王子様と、お友達に囲まれて、幸せに幸せに暮らしました」

曾祖母の顔は、何より本人が一番幸せそうだった。

だからかおる姫は本当に幸せだったのだと、幼い私は疑うことなどなかった。

そして物語の最後は、曾祖母の口癖で締められる。


「左の真ん中に桃色を、真ん中の上に空色を、右の下に草色を入れて、続きは夢の中に」


不思議な呪文のようだった。

唄うように口にするときの曾祖母の顔は忘れられない。

それは本当に、夢の中にいるような幸せそうな顔だった――


いつも違うジャンルを書いているんですが、こういうのも大好きです。心の思うままに書きます。

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