落し物 その三
「君は高校何年生?」
警官がにこにこそながら聞いて来る。
何でこの警官は、こんなに機嫌がいいんだ?
「三年です」
俺の返事を聞いて、警官は更ににこやかに笑った。
何だ? なんか嫌な予感がする。
「そうね! 警察官にならんね? 今、募集中なんだよ。あ……もしかして、進学?」
嫌な予感が的中してしまった。
「いえ、就職しようと考えています」
俺は爽やかに答える。
「なら、考えてみらんね」
と、パンフレットを渡された。
俺は外面がいいので、大抵の人に気に入られる。
電車の乗りかたを聞かれたり、道を聞かれたり。雨に濡れていたら傘をさしかけてもらったり。
……全部、おばぁさまではあるが……
「人の役に立つ仕事! 良いよー。どうね」
警官なんて嫌だ! 恐がりの俺には無理だ!
と言う事はおくびにも出さず、俺は平静を装い笑ってごまかした。
「では、住所と名前を教えてください」と言われアイツが答える。「~三丁目ー四ーニです。そこの公務員官舎です」
とアイツが言った途端に、警官が顔を曇らせた。
ん? どうしたんだ? 俺が、そう思っていると
「そうですか、公務員さんの息子さんですか……あぁ、公務員さんに警察官を薦めてしまった……」
さっきまで「明るく元気」だったのに、なんでそんなに落ち込むんだ? 必ずしも医者の子どもが医者になる訳じゃないし、大工の子どもが大工になる訳じゃないだろ! 変わった人だな。
でも、まあ、俺はイッサさんと同じ職業を目指してはいるがな! イッサさんは警察以外の公務員なのだ。
警官は気を取り直し、財布の中身を一緒に確認してくださいと、白い手袋を装着した。
おぉ~ぅ、警察って感じ!!
ちょっと感動を覚えながら、一緒に中身をかくにんする。もう何が入っているかは知っているがな。警官の言葉にアイツはいちいち頷いている。
「それで、財布が持ち主に帰った場合のお例がいりますか? 通帳、カード以外の現金のみになりますが」
三十二円しか入ってないのに、いらんわ!
「いい」と俺が言うとアイツも「いらんよねぇ」と続けた。
「ではお例の電話を掛けたいと言われたら、この電話番号を教えても良いですか?」
と言う警官にアイツは「はぁ」と気の抜けた返事をした。
「お例の電話がいらなければ――――」
「いりません」
警官が言い終わらないうちにアイツは返事を返した。
早いなおい。
警官が書類を作成し、必要な所にサインをし、やっと俺たちは解放された。
家に帰って、俺は早速アイツにめしの最速をした。
「隣の部屋に居た奴ら、万引きだろうね」
と俺が言うと「まじで? 気付かんかった!」とアイツが驚いた。
気付いていない方が驚きだ。
「一人?」と訊くアイツに「いや、四人」と言うと又「まじで!?」と帰ってきた。
本当に気付いていなかったのか……
「その中の一人がワーワー騒いでて、怒られおったじゃん」
「まじで?」
「友達のお兄ちゃんが居た」
の弟の言葉にアイツがまた
「マ・ジ・で・!!???」
また言ってる。
それ以外に言う事はないのか!!
オチも面白みもなくて済みません!




