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落とし物 その一

 学校から十五分歩いて電車を乗り継いで、自転車での帰り道。

「あ……」

 俺は財布を拾ってしまった。

 札を伸ばして入れられてファスナーで開閉するタイプの物だ。

 どうしよう。

 取りあえず、アイツに電話してみる。

 出ない。

 又かける。出ない。もう一度トライする。お留守番電話サービスに繋がった。

「……」

 たぶんアイツは風呂に入っているんだろう。

 今度は自宅にかけてみる。誰か出るだろう。

 五回コールで出ない。九回コールで出ない。

「このっ!!」

 思わず俺は、スマホを投げつけようとして踏み留まった。いやいや、投げつけるならこの財布だろ。

 こんなもん拾わなきゃよかった。くそっ!

 そうだ中身を見てみよう。

 ファスナーをジジィッと開けてこそっと中を見る。札は一枚も入って無い。コインは、ひーふーみー……三十二円しか入ってねぇよ!!

 でも、カードが数枚と、通帳とプリクラ。

 それと……デュエルカード……

 一パック買ったのか、金無いのにそんなに欲しかったのかデュエル……


 俺はもう一度自宅に電話してみた。五回、七回、又出ねぇのかよ!!

 そう思った所にアイツのぽやんとした声が聞こえてきた。

「もしもしぃ~?」

「俺。財布拾った。どうすればいい? もうそこらへんに棄てて帰ろうか」

 イライラが頂点に達していた俺。

「はぁ? なん言っとると、交番に届けなさい!! そこら辺に無いの?」

 投げやりな俺の声にアイツが慌てる。

「知らんし」

「調べてみれば?」

「はぁ? 調べるぐらいなら棄てて帰る」

 俺のイライラはもう最高潮だ。

「待ちなさい!! 持って帰ってこーい!!」

 アイツは焦ってそう言った。


 家の近くの交番に持って行くつもりだろう。

 自転車を漕いで漕いで漕いで漕いで、登りをやっと越え、下りで「はぁぁぁーーーー」と力を抜く。まだ家の近くにけっこうな登りがある。めんどい。


「ただいま」と俺は拾った財布を見せた。

「あれ? 帰りに持って行かんかったと?」

「うん」

 面倒くせぇのに、誰が一人で持って行くか!!

「はぁ。ショウでも呼んで一緒に行くかな……」

 俺の呟きにアイツが食いついた。

「はぁ? 呼んでたら時間が掛かるじゃん! うちも一緒に行ってやるから!」

 ほら行くよ。と言われて、俺は渋々ついて行った。


「どこ行くの?」

 と弟が無邪気に聞いて来たけど、俺はシカトして、アイツが交番と答えた。

「俺も行くぅ」

 と言う事で、俺達は近くの交番に向かった。


 つづく。



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