父親目線 (7)
今日は日曜日。
朝9時に目覚めた妻は、洗濯機を作動させてからフル回転で家事をこなしていきます。
年末の餅つきから風邪をひいていた妻は、昨日も頭痛がすると言っていましたが、今日は調子が良いのか台所にこもったまま出て来ません。
妻の実家から頂いた豚軟骨を昨日から煮ていたようです。今日は大量のゆで卵に大きめに切った大根……。
もしかして、これは……? ……おでん‥ですか‥?
私と長男の好物なのです。
なのに妻と娘たちは嫌いな様で、余り作ってくれません。年に一、二度、食卓に上れば良い方で……。なぜあんなに美味しい物を嫌いなのでしょうか……。私には理解出来ません。
「あっ、二回目の洗濯物を干すのを忘れてた!!」
昼食を取っていると妻が突然叫びました。家では9キロ洗いの洗濯機を使っているのですが、冬は二回に分けて洗わなければ成りません。もしくは三回。
それは良いとして。この忘れっぽい性格です。…この、忘れっぽい性格で………っ!
……おでんを……おでんを……おでんを……っ…
焦がした事が、あったのですっ。(拳をワナワナと握りしめる)
もう3年程前に成りますか…(遠い目) 鍋に半分程残ったおでんを、次の日に食べるのを楽しみにしていた訳です。二日目のおでんは味が染みていて、それはもう美味なのです。
それを……それを……。あんなに汁があったのに! あんなに見事に真っ黒に焦がすとは…… 表はまだ面影がありました、大根や卵の……でも裏は…、炭 ですよ。炭。 まぁ、よくもあんなに成るまでほおって置いた物です。一歩間違えば火事です。
私は、普段は何も言いませんが、この時ばかりは何日も「…おでん…」と妻の顔を見ては言ってやりました。
鍋も、真っ黒。




