朝
俺がまだ中学生の頃の話だ。
◇
今朝もアイツは機嫌が良い。
「おはよ~~」
「ねぇ、ねぇ、朝だよ!朝!」
「……………」
小さくて、ぽちゃぽちゃっとした手が伸びて来る。
来たなこの野郎。毎日俺の腹を狙いやがって、させる物か!
俺は布団をぐっと腕で押さえ、進入して来る手を阻止する。
「う~~っ。ぷよぷよお腹が、触れ無い~~っ」
ははっ、悔しいか。ざまあ見ろ!
さてと、俺はもう一眠り……
暫くして、又 足音が近付いて来る。
来た来た。
アイツはパイプベッドのはしごを、ミシミシと登って来る。
「朝だ 朝だ~よ♪ あ・さ・が・き・た~♪」
そして、大音量で歌いながら、俺を起こしに掛かった。
「…………」
あぁぁぁぁぁ、うるせぇ。
何で朝っぱらからあんなに元気なんだよ。まだ、六時半だぞ!
はぁぁぁぁ、めげて来る。
「起きた? 起きた?」
歌い終わったアイツはニコニコしながら聞いて来た。
俺が返事をしないものだから、又、布団の中に手を入れて来る。
くそっ。この野郎。させるか!
布団の中の攻防。
……よし。勝った!
暫しの攻防の末、俺が勝利した。
そんなのどっちでも良いって? いやいやいや、これから一日のモチベーションが違ってくるだろ!
「起きた?」
ハイハイ、起きた、起きた。
「………」
あ゛ぁぁぁぁぁ、声が出ない。
「ねぇってば!」
起きたって!!
あ゛ぁぁぁぁ、声が出ねぇぇぇぇ。
「……お・ぎ・だ……」
俺がやっと絞り出した声に、アイツは「よし!」と満足気に降りて行った。
朝っぱらから、勘弁して欲しいょ。でも、一人で起きられ無いので仕方無い。
「……我慢するか……」
「えっ、何て?」
聞こえたんかい!
「……何も……」
と言う訳で中学時代の俺の朝は、こんな風に始まっていた。
今は、任せろ!
俺様を誰だと思っている。
ちゃんと携帯のアラーム機能で起きているぞ!
アイツの歌も聞かなくて済むのだ。毎日快適だ!
ちなみに今は五時四十分に起きている。
俺様、偉い!!
【母の呟き】
目覚ましで起きて来ない時太郎の扉をノックしてやってるのは誰かな?