弟
弟は運動が、苦手だ。他の人より ワンテンポ遅れる。
「ねぇ、時太郎。白鳥の湖 踊れる?」
突然弟が言った。
「出来る訳ねえじゃん、バッカじゃねぇの?」
皆で突っ込みを入れる。
「お前、こんな風に爪先立ちせんといかんとよ?」
俺がイスに座ったまま、爪先立ちの真似をする。
「こんな?」
弟が立ったまま、爪先立ちをする。全く出来て無い。
「違うって! もっとこう」
と、足先をもっと伸ばした時だった。
「あっ!」
「……痛たたた」
足の裏がつった……
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!足がつったぁぁぁぁぁぁぁぁ」
アハハハハ。
アイツが めちゃくちゃ笑っている。馬鹿ウケだ。
笑って無いで少しは心配しろっての。
それにしても……
「イテテテテ……」
俺は足をさする。
あ~はははは
まだ笑うかこの野郎!
あぁぁぁ、大分良く成ったぁ。
「じゃあ、これ解る?」
今度は、奇妙な踊りを始めた。
何やってんだコイツ。元はと言えば、コイツのせいで……
絶対 泣かす! いつか泣かす!
「これ、フラダンスだよ~」
へらへらしている。その顔がなおさらムカツク。
……絶対、泣かす!
なぜ弟が変な踊りを踊っているのかと言うと、もうすぐ運動会があるからだ。
白鳥の湖、フラダンス、阿波おどり、何の脈絡も無い。
「これ全部踊るの」
……訳が解らん。
弟は、いつも説明不足だ。突然、訳解らん話しを始める。
だから
「ちょっと待て。それは、リアルか?ポケ〇ン?それともゲーム?もしかして、夢の話し?」
そこから聞かなければならないのだ。
この前は突然
「もしもお母さんが死んだらさ~」
と、言い出した。
は?
「お前、うちを勝手に殺すな!」
「だから~。もしもお母さんが殺されたらさ~」
「だから、何でうちが殺されるとや!」
「まぁ良いから。そしたら俺、どこに逃げれば良いんだろうね~」
「だから。うちは、死ぬ前提かぁぁっ!」
拳骨が落ちた。
ふふっ。ざま~みろ。
運動会が有りました。
徒走では、ニコニコしながら横を見て…
ハァ~~やっぱり計太郎は…。と言う感じ。
でも、毎年成長して居る。多くは望むまい…。と思う今日このごろ。




