カレー
あいつはよく、台所で奇声を上げる。
ガッシャ~ン! と言う音の後に「ギャッ」と、猫が踏まれたような奇声が聞こえた。
俺は、パソコンの画面から顔を上げ、台所に目をやる。
アイツは、何事も無かったように料理作りを再開していた。
どうやら、鍋を落としたらしい。全く、そそっかしい奴だ。
暫く経ち、俺の好きな香りが漂って来た。
……今日は、カレーか……
もう、そろそろ夕食の時間。と言う時に「あっ!!」と、一際大きな声がした。
「ん? どうした?」
「………何でも……」
俺の問いにアイツはそう応えた。
そして、食事の時間。「頂きま~す」の後に
「……あのね、肉 入れるの忘れた!」
アイツがテヘッと舌を出して笑った。笑い事じゃねぇよ。何が「テヘッ」だ!それ一番大事だろ! 成長期に必要なタンパク質を忘れるとは……
中々やるな! 強者め!
あの時の「あっ!!」は、肉を入れ忘れた事に、気付いた声だったのだな。
相変わらずの、大ボケぶりだ。
前回のカレーの時には、じゃがいもを入れ忘れていた。
人参は忘れても、じゃがいもは忘れちゃ駄目だろ!
俺の大好物は、カレー。
だったが、有る時期 カレーばっかり食べまくっていたので、そこまで好きでは無く成った。
それなのに、あいつはまだ俺の大好物はカレーだと思って、良く作る。
早くその事に、気付いて欲しいものだ。
ちなみに「俺の大好物は、カレーじゃ無い!」と、宣言しても カレーの出る頻度は変わらない。
――――――――・------・------・------・------
【母の呟き】
いくらカレーは好物じゃないと言われても、作る頻度が変わる訳無いじゃないですか。
だって簡単だも~ん!!