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月刊宇宙人  作者: 牛方巴
8/9

滝本信彦 2

「お前が書いた小説が評価されたってよ。で、ちんけな仕事やってないで小説書いてみないかって、兄貴が言ってたぜ。どうだ、やってみないか」


 銀髪オールバックを撫でつけながら、編集長がそういったのは、あと一か月で年が変わるって時だった。

 編集長のお兄さんは、某出版社に所属している。そのお兄さんが俺の小説を読んで、声をかけたらしい。


「で、でも、俺、まだここで仕事したいし、それに、小説なんて……」

「あのよ、お前(おめえ)よ、小説家目指してたんだってな。いいじゃねえか。やってみろよ。お前ならできるはずだぜ」


 図星だった。

 俺は幼いころから文学少年だった。将来の夢は小説家で、新人賞に応募して最終候補まで行ったこともある。

 それでも夢破れてで、スペコポにいる。

  

「まあ、すぐになれとは言わねえけどよ。年越しまでにお前の返事を聞きてえな」

 そう言うと、編集長は扉を指差した。俺は軽く頭を下げて家路についた。


 ふかふかのソファに寝そべっている間も、俺の頭はこんがらがっていた。

 小説家への道が見えたのはうれしかった。でも、やはりここで仕事をしていたい願望もあった。

 もし、ここで小説家をあきらめたらどうなるだろう。

 六十過ぎまで月刊宇宙人で仕事して、まあまあの給料もらって、田舎で老後を過ごす。

 悪くないけれど、俺の名前が後世に残るわけではない。


 結局、十二月も後半になるまで、答えは出なかった。


 

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