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ドラゴンツイン2 勇者覚醒 龍騎士堕天

作者: 村崎 峻希
掲載日:2026/10/29

前章からの3年後の話です。

 

 あれから3年が過ぎた。俺とフィンのレベルはそう上がることもなく、レベル100を超えたぐらいで止まっている。

 それだけで普通はS級冒険者になれるんだが、俺たちはなる気が無かったのであえて伏せている。

 そうそう、シリウスへのお礼参りだが、あははは、殴ることはできたが俺の腕が粉々になった。なんで?単純に体の頑丈さが足りないとだめ!ってメルさんに怒られた。俺、ルインにも負けるの?あの時のレベル6の女の子に?って思うんだが、まあ、あの時すでにあのスライムを吹き飛ばした実力からすれば仕方ないかとも思った。

 ああ、ちなみに元の姿もあの村で見たよ。まさか10歳だったとは。そして村を出る時、仕事には成功した。したと思っていたんだよ。

 後でフィンに杖でぶん殴られ、フィンが村に返しに行ったんだ。そしたら俺たちへの報酬で何の問題もなかっただとぉ!


 そうして泥・・・・仕事をあきらめた俺は真面目に冒険者として働いていたんだが。。。



 辺り一面火の海と化した村でシリウスが肩で息をしながら、なにかと対峙していた。

今日は父、先代龍騎士テニウスの1000歳の誕生日だったはずなのに。

 後ろではメルが龍術で抱きかかえたルインを回復していた。周りにはシヨとクヨンがいる。


 「メル!ルインを彼の元に!」

 メルが頷くと、ルインと2頭の子龍が転移陣に囲まれ消え去った。


 「さあ父上!邪竜に取り込まれたあなたをここで止める!」





 「ぐぇ!」

 寝ていた俺の腹の上にドサドサドサと3連続で何かが落ちてきた。最後が一番重かったぞ?フィンのやつ、また何買い込んできたんだ?


 「おいフィン!こんどは・・・・な?・・・・へ??」


 俺の腹の上に白と黒の子龍と金髪の女の子がいた。


 ドタドタドタバン!とフィンが飛び込んでくる。


 「勇者様!今度は!・・・・ルインちゃん?シヨちゃんクヨンちゃん?なんでいるんですか?」


 フィンが俺を見る。俺も両手を上げて


 「さあなんで?」


 と言うしかできない。


 「というか、こいつらどけてくれ。動けん」


 胸の上から足の先までこいつらに乗っかられていてはさすがに動けない。


 「ハイハイ、勇者様は触っちゃだめですよ女の子は特に」


 「こいつらなんでピクリともしないんだ?」


 「ちゃんと息はしていますよね?なんでですかね。あ、シヨちゃんあごの骨が砕けてる。えい!」


 フィンが龍術でシヨを回復する。そう、あの特訓以来フィンは龍術を使えるようになったのだ。これも俺たちが昇格しない理由の一つとなった。無詠唱で魔法を使えること自体が論外なのだ。

 そりゃそうだ、掛け声一発で別々の魔法(魔法じゃないけど)を使えるなんてことがばれたら、フィンは即王都に閉じ込められて研究対象にされるだろう。

 あの時ルインが術名を言っていたのは、発動イメージを補助するためなのだそうだ。

 一度フィンがフュージョンフレイムとかいう術を使った時なんて2本指で相手を指さしただけで発動させていたなあ。ははは・・・・こえぇ。


 「みんな目を覚ましませんねえ」


 フィンの部屋にルインと子龍たちを移動させても起きる気配がなかった。


 次の日になってようやくシヨとクヨンが目覚めたが、ルインはいまだに目が覚めなかった。


 シヨが言うには村で爺さん、テニウスのお誕生会が行われていたところまでは覚えているそうだが、そのあとの記憶はないらしい。クヨンも同じだ。

 なにやら不穏な空気を感じたが、ルインが目覚めたら、村へ送り届けたほうがいいだろうと俺たちは結論付けた。


さらに2日後、ようやくルインが目を覚ました。


 「・・・・・・」


 「ルイン何があった?龍のシヨの骨が砕けるなんてよっぽどだぞ?」コンコン


 「おじさん・・・・(コンコン)おとうさんたちは?(コココン)」


 「いきなりお前たちだけが落ちてきたんだ」ガンガン


 「うっせえわ!さっきからコンコンガンガン!と」


音のする窓を見る。冷汗がだらだらと流れ始める。窓の外にいたのは魔王だった。


 「どっこらせっと、久しいなロイよ。ルインちゃんも息災だったか?」


 そう魔王はあの一件以来ルインにデレデレ。フィンには求婚する始末。


 あんな石頭のどこがいいんだか・・・


 「で?なんの用でここに?俺たちゃこれからルインを村に送り届けるつもりなんだが?」


 「おう、そうであった。ルインちゃんを我が魔王国に連れて行ってほしいとシリウスに頼まれて」


 その言葉にルインの肩がビクッと震える。そっと魔王がルインの頭を撫でた。


 「大丈夫、シリウスたちもそこにおる。たまたま儂がいかねばどうなっておったか」

 

 「何かあったのか?シリウスが村から離れてるなんて何があった?」


 再びルインの肩が震える。おいおい俺が手も足も出ないような子が何でここまで怯えてんだ?


 「ふむ、我が愛しのフィンよ、しばしルインを外に連れて行ってくれぬか」


 「いいですけど、いい加減愛しのってつけるのやめてもらえません?迷惑です」


 「相も変わらず愛い奴だのお。たかだか800歳差ぐらいどうということはなかろう」


 「私たち100歳も生きられませんけど!?それに私は勇者様のほうがいいんです!ルインちゃん行きましょう」


 そういってフィンがルインを連れて部屋から出ていく。


 「実はの、シリウスが負けた。わしが村を訪れたときすでに村は壊滅状態。幸い死者はおらなんだ。シリウスが言うには先代が邪竜に食われたと」


 「爺さんが龍に食われた?なんで?腰が曲がってるとはいえ龍騎士だろう?おかしいじゃないか」


 「先代の契約龍は邪竜だ」


 「は?なんで契約した龍に食われんだ?」


 「そこまではわからん。わしも粋がっておった時、先代にぼこぼこにされたが、その時聞かされたのが、先代は勇者時代に邪龍討伐を命じられ、その時に龍騎士になったと言っておった。その契約の力関係に何かあったのかもしれん。詳しくはシリウスに聞いた方がいい」


 はぁ、また面倒事か。


 「関わるかどうかは話を聞いてからだ。面倒事は前の一件だけでこりごりだ」


 そんなこんなで俺たちは魔王城にルインを送り届け、ベッドに横たわるシリウスを見て呆然となっていた。窓の外にはシリウスの契約龍が心配そうに覗いている。メルも隣のベッドに寝かされていた。


 「わしが見つけたときにはこうなっておった。かろうじてメルが途切れそうな意識の中で先代を弾き飛ばしたらしい。それ以外は儂もわからぬ。「えい!」はぁ、愛しの」


バキ!フィンが魔王のあごを殴る。


 「フィンよ、痛いではないか。人がしゃべっておるときに少しは待たぬか。しかしお主も上位者を殴れるようになっておったのだのう、感心感心」


 そうなのだ、この世界、なぜかレベルの上下差が激しいと、敵対行動がとれなくなるのだ。そしてそれを回避する方法がただ一つ、意識外での事故で殴るという方法があるのだ。まあ反射行動で今のは殴ったともいえるな。


 「目の前でケガをしている人を放ってはおけません。ってあれ?ちょっとしか回復しませんね?」


 「当然である。攻撃であろうが回復であろうがお主のレベルでは、シリウスたちに影響を与えられるわけがなかろう。その心根は美しいが」


 そう、以前俺たちが魔王城に来た時、ルインにぼこぼこにされた魔王をフィンが回復して以来ずっとこの調子なのだ、この魔王様は。

 基本、回復系統の術はレベル差に関係なく作用する。ただ効果はレベルに左右される。それが魔法であっても龍術であってもだ。


 「えい!」そういって今度はメルに回復の術を掛ける。そこでメルが、身じろぎとうめき声を一つ。少し効果があったのか、それともシリウスほどのダメージがなかったのか、うっすらと目を開いた。


 「ここは!?くっ!」


 まだ完全に傷の癒えていない部分が痛んだようで、脇腹を押さえて再び倒れる。無理するでないと、魔王がやさしく声をかけ、再び毛布を掛けてやる。


 「ロイさん!フィンさん!?あなたたち、ルインは!?」


 バン!と扉が開き、ルインが飛び込んできて、メルに飛びつこうとするのを、首根っこをひっ捕まえて止める。


 「お母さん!放して!」


 まあ龍騎士に変身してなければルインをそうして止められるんだが。


 「今飛びついたらお母さんの怪我がまた悪くなるぞ?フィン、少しメルさんに事情を聴くから、ルインをちょっと見ててくれ。ルインもうちょっとだけ待っててくれないか?そうしたらお母さんと一緒にいていいから」


 「おかあさんといっしょに居たい!」


 「おじいさんのことだぞ?」


 ビク!とルインの肩が揺れる。やはり何があったのか、思い出すのを体が嫌がっているように見える。わかったとフィンと一緒に部屋を出て行った。


 「寝たままでいいから教えてくれ。何があった?爺さんはどこに行った?」


 「ルインが何か言っていましたか?」


 「いやあの子たちは何も覚えていなかった。というか、頭が思い出したくないのか、認めたくないのかはわからんが」


 「魔王にも話したと、はっきりは覚えていませんが、お義父様は邪龍に食われて亡くなりました。あの日はお義父様の1000歳の誕生日でした。私たちがお祝いの準備をしていると、突然お義父様がお倒れに。

そこで近づいたルインに殴りかかり、シヨが代わりに殴られ、クヨンとルイン諸共壁に。その時お義父様の頭に角が。そのあとご迷惑かと思いましたが、ルインたちをあなたの元へ送り、シリウスとともにお義父様を止めようとしましたが力及ばず、何とかその場は結界で弾き飛ばしましたが、そのあと二人で力尽きてしまいまして」


 「そしてそこへ我が到着して、連れ帰ってここで手当てをしている最中に、メル殿がここへルインを連れてきてほしいと。そういうわけだ。もうしばし休んでおれ、メル殿」


 そういわれて再びメルは眠りについた。


 「これじゃ何にもわからないな。シリウスが目を覚ますまで待つか、それとももうルインを連れてきたし俺たちは帰るか。いやフィンがほっとかねえか」


 そう言って俺はため息をつきつつ、あきらめた。


 さらにさらに数日後、ようやくメルが全快、そのあとシリウスに回復を掛けたことでようやく事の全貌がわかった。


 「つまり何か!?爺さんは1000年前に龍騎士になるとき本当は邪龍に食われて死にかけて、偶然龍騎士の儀式を発現させたってか?で1000歳の誕生日に邪龍に体を乗っ取られたってか!?」


 「そうだ」と言ってシリウスが頷く。


 「それでそばにいたルインをぶん殴ろうとしてシヨンがかばって骨が砕けてた。で、自分たちではどうにもならんから?俺たちとルインで倒してくれ?冗談じゃない!あんたらに敵わんものが、どうやったら俺たちで倒せるんだよ!」


 声を張り上げて精一杯拒否の姿勢を取る。どうも無理やりというわけではないらしい。だがしかし敵わないというのも事実である。ルインはともかく、俺たちはただの冒険者だ。職業スキルが特殊というだけのな。

龍騎士である、しかもレベル500越えのシリウスたちが敵わないのに俺たちなんぞ指先一つで消し飛ばされる。聞けば爺さんのレベルは全盛期当時で800越え、おそらく邪龍に食われた今、再度レベルアップしていることだろう。


 それにあんな幼い子に自分の爺さんを殺せとか鬼畜の所業をやらせられるか。


 「今回ばかりは大聖女にも同じことを言われたよ。子供にそんな業を背負わせるなと叱られた。しかし、邪竜はおそらくルインを狙っている。なぜなら、ルインが光と闇の龍騎士だからだ。あの子は世界のカギを握っている。倒せないまでもせめて邪竜に殺されない力だけは持たせたい。私が倒すにしてもまだ回復までに時間がかかる。ルインであればレベル700に到達さえすれば、邪竜に負けることはない。頼む、力を貸してほしい」


 シリウスが頭を下げた。その頭を知らん!と言って剣の鞘でひっぱたいた後、俺は部屋を出た。途中でフィンを拾い、魔王の部屋へと進む。


 「ロイよ、何かあったか。えらく気が立っておる」


 「まあ少しな。シリウスのやつ、ルインに肉親殺しをさせると言いやがった。俺はここで抜ける。そんでじいさんをどうにかする手段を俺が見つける。ルインにそんなことさせてたまるか」


 「なら私も」


 「いやフィンはここでルインのレベルアップを手伝ってやれ。魔王様よ、その手段あんたなら持ってるんだろ?」


 「目標値にはよるがの。いくつほどだ」


 「シリウスの話では700。だが爺さんのレベルが上がってないとも限らない。せめて800は欲しいところだ。いけるか?」


 「任せておけ。900までは何とかなる。魔王軍最強の侵攻用最強生物兵器を出してやる。フィン、フィンよ落ち着け。先々代の遺産だ!わしが作った(ガン!)・・・本気で殴るでないわ」


 「二人とも900台まで上がれば対抗することは可能・・・・・・か?フィン、やれるか?」


 「勇者様はどうされるんです?それ次第です。何か策はあるんですか?」


 憐れ殴られたことをスルーされる魔王。さすさすと頭を撫でながら、 「もしや勇者の村か?」とたずねてくる。俺は静かに頷いた。


 「確かにあそこには、勇者の力の根源と言われるものが眠っておるが、先代勇者が処刑された後、全てが葬られたと言われておるぞ?」


 「確かにそうなんだがな、一度だけあのクズが何か隠しダンジョンのようなものに入っていくところを見たことがある。俺も入るには入れたが、その先へは資格がないのかいつの間にか外に放り出されてた。だが今、あそこへ行けと何かがささやいてくるんだよ」


 魔王がフムとあごに手を当てつぶやいた。


 「先々代の手記に書いてあったあれか。あれなら可能性としてあり得るのか?」


 だがしかしとかなんとか魔王は考え込んでしまった。


 「とにかく俺は明日にはここを出る。ここから村までは約半月。戻って来るまでに、多くとも2か月だ。その間に何とか対抗できるように頼むわ」


 「勇者様。大丈夫なんですよね?おじじ様助けられるんですよね?」


 フィンの心配そうな目がこちらを見つめるが、冷酷な事実のみを俺は告げる。


 「爺さんはシリウスたちの目の前で邪竜に食われた。それが事実だ」


 フィンが村で修業を受けている間、爺さんにはそこそこかわいがってもらっていたようで、やはり現実に爺さんが死んだと聞くことはつらいようだ。


 そして次の朝、魔王城正門にシリウスとメルその龍達が待ち構えていた。じっとこちらを見据える。こちらは睨み返す。


 「勇者の村だろう?メルと一緒に行ってもらいたい。龍とともに飛べば1日で着く。ルインのために勇者となってくるのだろう?わが父はその試練に勝つことができなかった。呼ばれていないと言っていたからね。幾日かかるかはわからんから一緒に行った方がいい。伝承では真の勇者の力は我らすら及ばないと聞いている。あやつは何度も挑んでいたようだが、私に倒されたところを見ると勝てなかったんだろう。父の事、頼んだ」


 二人と二頭の龍が頭を下げる。そして水色の龍が伏せ、メルが手招きをする。


 「あそこにあるものが何かは知らんが、期待せずに待っててくれ。どうせ、あのクズがそこまでして手に入らなかったもんだ。俺みたいな半端ものも手に入れられない可能性が高い。じゃ頼む」


 そう言って水龍に乗った。乗ったと思ってました。乗った先が霧の中って誰が想像すんねん!だけど遠くで風の音がする。

 

 メルが手招きして手を差し出した先に椅子が出現する。ドカッと不機嫌な顔をして座ってやった。まあ実際不機嫌にもなる。今更の忌まわしい場所に戻るのだ。あの先代クズ勇者が大きい顔をしてのさばっていたあの村に。




 所変わって魔王城に戻る。


 そこにはルインとフィンが呆然と立っていた。


 魔王軍究極生物兵器と対峙していたのだ。しかも超絶かわいい。ナンダコレ?そして究極生物と銘打ちながら、ルインの目にはレベル8と認識され、フィンの目にはレベル115と認識されている。レベルが二つ同時に?しかもお互いのレベルと同じ?


 『魔王軍究極生物兵器 ノーマスライム』


 以前クヨンをさらったスライムとは別個体ではあるが、明らかに奇妙な個体ではある。

 

 先々代魔王がテイマーに命じて開発させた対勇者究極兵器である。攻撃手段はその体に取り込んで溶解するといった単純極まりないもの。


 だがしかしレベル制限を取っ払うその特異な個性によって対勇者に特化した個体とも言える。まあレベル制限を取っ払うというその個性は誰にでも適用され、先代魔王の片腕を食い散らかそうとした前歴を持つ個体でもある。


 魔王がその個体を前にふんぞり返っている。


 「さて何も倒せというわけではない。取り込もうとする攻撃をバンバン切り倒せ、叩き潰せ。それだけで経験玉をこいつは落とす。このようにな(パン!パシ)とこういうわけだ」

 魔王を食らおうと伸ばした体を殴って消し飛ばす。そこに経験玉が出現した。

 

 「ある程度レベルが上がれば次の相手を出してくるから、それまでこいつで鍛えるように。では我は次の仕事に向かう。昼には迎えに来るので、まあがんばれ」

 

 そういって魔王はスタスタと歩いて行ってしまった。


 「これほんとに大丈夫?(ぱん!)ルインちゃん?(ぱぱん)ほい!えい!よっ!」


 二人で競い合うように魔法合戦を始めた。しばらくして魔王城の反対側からとてつもない衝撃音が聞こえ始めた。



出発してから半日、故郷の村についた。だがしかしそこはすでに廃墟と化している。しばらく盗賊が巣食っていたようなあとはあるが、拠点を移したのかすでに姿はない。


 「メルさん。ここまで送ってくれてありがとう。ここからは俺一人だからもうかえ「ここでお待ちしますね」」


 「・・・」


 「おまちしますね」


 「はい・・・・・」


 押し切られた・・・・・気を取り直して隠し神殿へと向かう。


 以前は隠されていた入り口は誰かに荒らされたのか破壊されて開放されていた。中の様子を隠れて窺うが、何かがいる様子もない。中に入ろうとすると、いきなり足元が消え、世界が暗転する。落ちる様子もないのでかまわずに歩を進める。


 『資格を得し者よ。汝、欲する意を示せ』


 どこかから声がする。辺りを見回すが変わった様子もなく暗闇に覆われている。


 「誰だ。なんのことかまるで分らん!」


 『え?勇者の子孫じゃないの?カッコつけて損しちゃったじゃないか』


 ズッコケた。


 『君、先代のあのしつこく来てたやつの息子だよね?何度来ても勇者の資格しかないから渡さなかったけど。君には資格は充分にあるようだ』


 「だからその資格って何の資格だよ!」


 『君、ちょっとご先祖様に対して失礼じゃないかい?まあいいけど。教えてあげよう。勇者には二段階の資格があって、まずは勇者となる資格。これは血筋とジョブだね。そして二つ目、勇者として世界の理を超える資格だよ。実は君が小さいときに入ってきたときにはすでに与えることが決定していたんだよ。まだ器が出来ていなかったからそのまま返したけどね。という訳で、一応確認。力を欲する訳を』


 「龍騎士の一族の問題に首ツッコむためだよ。子供に家族殺しなんて業を背負わせるようなことは絶対にさせない!俺はあんなクズと同じになりたくない!」


 『うんうん、よく言った!人のために力を欲する。合格だよ。君がこれから得る力はレベルキャンセラー。世界の理を超える力だよ。それでもベースとなるものはレベルと同じ。経験と成長だ。うん龍騎士と戦うんだね。今のレベルでは心もとない。僕のレベルも少し渡そう。300もあればいいかな?』


 ドクン!!一気に何かが流れ込んでくる。体が異常に熱い。倒れこみのたうち回る。


 『ごめんごめん。一気に行き過ぎたかな。でも急がないと間に合わないよ。君が神殿に入って外の世界ではすでに4日が過ぎた。もう少しだ。頑張れ』


 声だけのご先祖様が勝手を言っているが熱と痛みに構っていられない。


 意識を集中するとレベルキャンセラーの使い方が浮かんでくる。全てのレベルをステータスに変換する?しかもレベル1につきすべてのステータスがプラスされる?まず自分のレベルをキャンセルする。すると熱を帯びた体が一気に冷え始める。さらに流れ込んでくるレベルも同時にキャンセルに加えていく。


 『お?いいね。じゃあ残りも一気に行くよ』


 残り200ほどのレベルが一気に流れ込み始める。体が完全にスキルに適合し、立ち上がり確認する。


 「なんだこれ?見た目はなんも変わってないな。これで本当に。そのレベルキャンセラー?ってのが使えてるのか?」


 『少し違うかな。存在そのものがレベルをキャンセルしているんだ。つまり10レベル制限も制限外だよ。そして今の君のステータスなら僕の半分ぐらいの強さだね。外にいる龍術師ぐらいならデコピン一発でやれちゃうね』


 「しねえわ!レベル800ぐらいの相手なら?」


 『そうだねえ。パイル〇ライバー一発くらいかな』


 「なんだそれ。よくわからんが楽勝ってことでいいのか」


 『一つ忠告だけど、力に溺れないようにね。これは意思の上に成り立つ力だから、少しでも力に溺れて君の父親のようになると・・・・・?大丈夫だね。ならないようになってるわ。それじゃあこれでお別れだ。神の加護と君の神の呪いに感謝を』


 「え?神の呪い?」


 暗転していた世界が元に戻る。これで元の世界に戻ってきたのか?俺はメルさんのところに戻り、帰りは龍に乗らずに帰ることを提案すると静かにうなずき了承してくれた。てか神の呪いって何いいいい!



 フィンたちの前に巨大な人が立っている。魔王城が砂の城ほどにしか見えない巨大な人だ。魔王軍決戦魔法兵器デイダラだ。すでにデイダラと訓練を初めて4日。二人のレベルもついに700を超えた。ノーマスライムでの訓練も9日で終えた。


 デイダラとの訓練は実に過酷だ。魔法ならともかく龍術すら跳ね返してくる。つまり、隙をついた龍術攻撃と物理攻撃しか通らない。いやでも戦闘技術が鍛え上げられる。フィンの杖も贈られたときからついていた石突や車輪刀もすでにボロボロだ。ルインは毎回新生されるから綺麗なままだけど。フィンもフィンで杖に光刃をまとわせ体には龍術で光る鎧を形成している。


 デイダラの巨大な拳が眼前に迫る。ルインがその拳を腕ではじき、蹴り飛ばす。フィンがその蹴り飛ばされた腕をデイダラから斬り飛ばしていく。


 「シリウスよ・・・・・フィンは確か龍術師で大聖女ではなかったか?」


 「私の記憶でも確かそうだったはずだが?」


 魔王城の城壁の上で魔王とシリウスがフィンの戦いぶりを見て二人して首をかしげている。


 ピシ!


 何かがデイダラに向かって飛んでいく。突然デイダラの上半身が消し飛んだ。


 「「なんだ!!」」


 二人の声が重なった瞬間魔王城が半壊した。崩壊するガレキに二人は飲み込まれて行った。


 突然目の前でデイダラが消し飛び、倒れ、困惑する二人。そして倒れた先に現れたナニカを見た瞬間、ルインがガタガタと震えだし、へたりこんだ。


 「ルインちゃん?」


 そして融合も解かれ、元の姿に戻る。2頭の子龍も翼に隠れ丸まっている。


 「くっ!まさかもう!」


 フィンはその近寄って来る何かを見据える。前に一度だけ見たその姿。

 テニウスが龍騎士となったその姿が禍々しくなった形をしたモノ。


 ズン!!


 一回りも二回りも大きくなったそれがその大きさからはありえないような足音をさせルインへと迫る。


 フィンはルインとテニウスの間に立ちはだかり杖を構える。車輪刀に光をまとわせ、自身にも光の鎧を纏いなおす。がしかし、その目に映る圧倒的なテニウスの魔力に圧倒され後ずさる。


 「%@M&」


 テニウスが何かを言い、腕を横に振る。魔力が伸び、フィンを弾き飛ばす。瓦礫にたたきつけられ倒れるフィン。杖を着き、立ち上がろうとするが突っ伏してしまった。次の瞬間、瓦礫が吹き飛び、二つの影が飛び出し、テニウスを押し返す。


 「ルイン!立て!立ち上がって母さんのところに行け!」



 


 ところ変わって、ロイが魔王城の方を向き「まずいな」とつぶやいた。


 「メルさん、爺さんが魔王城に着いたみたいだ。急ぐがどうする?一緒に行くなら連れてくが?」


 メルは頷き、融合を解こうとする。


 「あ~、そのままでいいから。ちょっと失礼して」


 メルを抱き上げお姫様抱っこするロイ。そして身構え、ブンという音とともに姿が消えた。クレーターと化した足形を残して。


 戻って魔王城。シリウスと魔王が殴られボロボロになりながらも耐えている。だがしかし、ルインが動く気配は一向に見られない。子龍たちもうずくまり丸まったままだ。


 邪竜が突然攻撃をやめ、ピクリと一点を見る。子龍たちもピクリと翼を震わせた。そしていきなり邪竜が吹き飛ばされる。いつの間にかルインの前にメルが立っている。目をぱちくりとさせながら。


 シリウスと魔王の肩を叩くロイ。


 「待たせたな。あとは任せな」


 ロイがテニウス特製の剣を抜く。


 「ロイ、お主レベルがなくなっておる。無謀じゃやめよ!」


 魔王がロイの変化に真っ先に気づいた。シリウスが魔王の肩を叩き首を横に振る。


 「あれが真の勇者だよ。ああなれば、この世のすべてはおそらく勝てん。あとは任せるしかない」


 テニウスが埋まっていた瓦礫が吹き飛びロイに向かって歩を進める。


 ロイは剣を振りかぶる。振り下ろそうとした瞬間、影が間に割り込んだ。


 「だめ!おじいちゃんをころさないで!」


 ルインだった。ルインが龍騎士の姿となりロイの剣を受け止める。


 「だめ、お願い」

 

 泣きながらロイを見つめるルイン。テニウスがルインを挟みロイと相対する。優しい笑みを浮かべながら。


 ルインの頭をなでる。ロイを見据えたまま。ルインはテニウスを見上げる。


 「おじいちゃん」


 ルインの言葉にテニウスは反応せず、ロイを見据え


 「すまん、手間をかけるのぉ」


 その瞬間ギン!とテニウスの目つきが変わる。ルインをなでていた手に力が加わり、握りつぶそうと持ち上げ始める。もう片方の手で爪を突き立てようと襲い掛かる。


 が、一瞬早くロイがその両手を切り飛ばした。そしてシリウスに向かってルインを蹴り飛ばす。


 「やめて!おじさんお願い!」


 がしかし、その言葉はロイには届かない。肩から胸にかけてテニウスを切り倒した。ずるりと落ちる。が、その下の体が動き出す。そして切り落とされた部分を補うようにして龍の首と翼が生え、その身をどす黒く染め上げる。そしてロイを殴るが微動だにしない。まるで本能のままに叩き潰そうと殴るが、それでもどこ吹く風。ロイには一切効いていない。周囲には突風、衝撃破がまき散らされているにもかかわらずだ。


 そして邪竜はさすがに敵わないと思ったのか翼を広げ飛び立とうとする。開いた翼が剣閃にぼとりと落ちる。そして後ずさると、袈裟懸けに振りかぶったロイの剣が振り下ろされ、両断され、ずり落ちた。


 「いやあああああああ!」



 しばらくして、魔王城周辺に避難していたシリウスの村の住人によってテニウスの葬儀が行われた。その軽く小さな棺をもって。


 ルインは今だロイを許していない。が、最後、人として頭をなでてくれたテニウスの笑みにもう戻れないことは納得していた。


 


 で、俺はというと?


 今だ納得していない。神のノロいって何いいいいいい!




                             終

次で最終章ですが、完成はいつになるかわかりません。気長にお待ちいただくか忘れてください。

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