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第8話 ミスリルモール討伐

 いつものように午前中に魔法講習を受けて〈ヘイスト〉を習得することができた。〈ポイズンキュア〉よりは難しく無かったように思う。

 午後になり、シャイロンを借りるために待ち合わせ場所に向かうと、すでに店の従業員とシャイロンのボボが待っていた。

「こんにちは、乗り物店のレトといいます。今日はよろしくお願いします」

 緊張していそうだが、礼儀正しく挨拶してくれて好青年そうな印象を受けた。そして隣にいるのが昨日見たボボだ。ちょこんと行儀よく座っている状態でも、ロイの背よりも大きい。ボボは「ぷるる」と鳴いてこちらに挨拶をしてくれた。

「こちらこそよろしくお願いします」

「本日はミスリルモールの討伐へ向かう、ということでよろしいでしょうか?」

「はい、そうです。ここから東の少し前までミスリル鉱石の採掘が行われていた洞窟へ向かいます。もともとミスリルはなかなか見つかるものではないらしくて、採算が合わなくなって採掘するのを止めたそうです。それからミスリルモールは強い魔物なので、洞窟の外で待っていてください」

 レトは頷いて「わかりました」と言ってくれた。

「さあ、それでは行きましょうか」

 騎乗はレトが前で、ロイが後ろに乗る。目的地の場所を地図で確認してからの出発だ。ラモーネの門を出てからボボに騎乗して、洞窟のある東へ向かう。ボボの走りはとても早く、何もない平地を駆け抜けた時に感じる騎乗の風が心地いい。久しぶりに外を走っているのかボボも「ぷるる」と鳴いて楽しそうにしている。

 洞窟まではまだ結構な距離があるので、覚えたてだが〈ヘイスト〉を使ってみることにした。

「ちょっと〈ヘイスト〉を使いますね」

「え……?」

 〈ヘイスト〉の効果で、さっきまでの速さの一・五倍ほどになった。走りが早くなったことを実感したのか、ボボも軽快に飛ばしている。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ~」

「どうしました?」

「速い、速いですって!」

「そうですか?」

「いいから、止めてください!」

「……わかりました」

 魔法の練習と目的地までの時間短縮兼ねてやっていたのだが仕方ない。渋々〈ヘイスト〉を解除することにした。

「はあ~、どうなる事かと思いましたよ」

 レトの様子を見ると本当につらそうに見えたので、普段魔物との戦闘をしない人は速さに対する耐性がなくてついてこれないのかもしれないと思った。

「これぐらいなら大丈夫ですか?」

「はい、これぐらいでお願いします……」

 〈ヘイスト〉をかけた状態より遅いとはいっても人が歩くことを思えば比較にならないほど速いので何の問題もないのだ。

 そろそろ目的地の洞窟が近づいてきた。

 約束通りレトとボボには洞窟の入り口のところで待っていてもらうことにした。

「もし数時間経っても戻らなかったら、そのままラモーネに帰ってください」

「そんな縁起でもないこと言わないでくださいよ」

 レトが不安そうな顔をして言った。

「そうならないよう最善を尽くします」

 洞窟の中は入り組んでいて道に迷ってしまいそうだった。冒険者ギルドも洞窟の場所の位置の地図を渡してくれはしたが、洞窟の中の地図まではわからないようだった。ロイはサーチアイを要所に配置して迷子にならないようにした。さらにサーチアイのレベルが上がって、ある程度の距離なら飛んで行って、先の様子を見てくることもできるようになっていた。さらに実用性が増したといっていいだろう。

 しばらく進んで奥まで行くと、人では通れないほど小さな穴の通り道がちらほらと見られるようになってきた。おそらくミスリルモールの通り道だろう。この辺りから作戦の準備をしよう。ゴーレムとガーディアンゴーレム、そしてスライムを召喚する。

 ゴーレムに近くの壁や少し離れた壁を殴らせて様子を見る。

「ガーディアンゴーレム、穴からミスリルモールが現れたら足を掴んで捕まえるんだ。襲い掛かってきたら盾で守れ」

 ガーディアンゴーレムもスライムも配置についている。

 その後、ゴーレムで壁を殴っては待ち、殴っては待ちを繰り返し何度目かの待機中にその時はやってきた。何かの動く音がするので、できるだけ穴のから見える範囲の死角になる位置にサーチアイを配置するとミスリルモールはいた。じっくり待っているとのそのそと穴からミスリルモールが出てきていた。刺激したせいか気が立っているように見えなくもない。見た目は爪、歯などがミスリルのような色をしていて、光の加減によっても変わるが青や紫、そして黒や透明に見える部分もある。また、こげ茶色をした下の皮膚の上に、甲羅のように硬いミスリル色をした部分が皮膚の大分部を占めていた。

「ガーディアンゴーレム、ミスリルモールを捕まえろ!」

 それに気づいたミスリルモールがガーディアンゴーレムに襲い掛かるが攻撃を盾で防ぐことに成功し、もう一方の手でミスリルモールの両足を同時に掴む。

「スライム、今だ、ミスリルモールの顔に張り付け!」

 ミスリルモールは手をバタバタさせて苦しそうにしている。両足を持たれていてはどうすることもできないだろう。しばらくするとぐったりとして動かなくなる。討伐成功だ。

 この方法で数時間粘って三頭のミスリルモールを捕獲することができた。それ以外でも道中にミスリルモールの糞があちこちに落ちていてその中にミスリルがあると表示されるので中を確かめてみると、本当にミスリルが入っていたのでいくつか持って帰ることができた。

 そろそろ待たせている時間の上限が近づいているので外へ戻ろう。


 入り口まで戻ると、レトさんとボボはまだ帰らずに待っていてくれた。

「お待たせしました。結構てこずってしまって、こんな時間になってしまいました」

「いえいえ、待つことには慣れていますので大丈夫ですよ。って、ええーっ。ミスリルモールを討伐できたんですか?」

 レトが大声で驚いたせいか、ボボが何事かというような顔でこちらを向いた。

「討伐……、そうですね。三頭ほど手に入りました。あと、糞からもミスリルが少し」

「三頭! 一頭でもかなりの額になるのに……、てっきり見つからなかったか、逃げ回っていたかのどちらかだと思っていたのですが。いやはやとんでもないものを見せられてしまいました」

「実はシャイロンを買う資金が足りなくて一日借りる相談をさせてもらっていたんですけど、これで足りそうですかね?」

「もちろんですよ!」

 レトが即答した。この雰囲気なら全部売ってしまわなくても資金は足りそうな気がしてきた。

 ミスリルモールの素材を使った装備を考えてもいいかもしれない。ビルとゲーデルにも相談してみよう。少しだがミスリルも手に入ったことだし。

 帰り道は〈ヘイスト〉を使わずに通常の速さで帰ることにした。またレトさんに騒がれることを避けるためだ。ミスリルモール三頭を乗せて走っているにもかかわらず、ボボは軽快に飛ばしている。馬よりも丈夫な生き物で、今回は出番がなかったが戦闘もお手の物らしい。

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