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第6話 商人グスタフと戦士ネルソン

 ラモーネへ向かう途中で商人の馬車が通りがかり一緒に乗せて行ってもらえることになった。この道は交易道となっているが盗賊などが出ることもある。冒険者であることを伝えて冒険者カードも見せると、Cランクであることにかなり驚いていた。大人から見ればまだまだ幼さが残る少年二人にしか見えなかったのだろう。護衛目的で馬車に乗せてくれるのかと思ったが、すでに護衛は雇っていたようだ。

「俺はネルソン、ジョブは戦士でDランク冒険者だ。よろしくな」

「ロイです、ジョブはマルチジョブでメインがモンクと召喚士です。こっちは機工士のゲーデル」

「よ、よろしくです」

 ゲーデルがおどおどしながらお辞儀をする。

「モンクと召喚士に機工士とは随分珍しいジョブの組み合わせだなあ。お前さんたち、こんなところまで何しに来てたんだ?」

「この辺りの氷山に現れるブリザードウルフ討伐のためにやってきました」

 一応コボルト族のことは伏せておこうと思った。

「へー、集団で襲ってきて結構厄介な相手なのに、大したもんだな。で、戦果はどうだったんだ?」

 ずけずけと質問をしてくる人だなと思ったので戦果を少なく見せることにした。

「はっはっは、やっぱり大変だったみたいだなあ。まあでも、これだけでも結構な金にはなりそうだな」

「ええ、そうだといいですね」

「まあ、地道にやってりゃ、いつか俺みたいな立派な冒険者になれる日がくるさ」

 商人の護衛もりっぱな冒険者の仕事の一つか、と無理やり納得した。

「ちょっと、あなたさっきから何なんですか」

 ゲーデルがネルソンにつっかかった。

「ああ?なんだ?」

「立派な冒険者って、僕はDランク冒険者、ロイはCランク冒険者ですよ。それにさっき見せたブリザードウルフの素材もほんの一部です」

 そう言ってさっき見せた三倍ほどの素材をネルソンに見せた。

「それからロイはガーディアンゴーレムの契約も済ませたところなんですよ」

「ガ、ガーディアンゴーレム……」

 ネルソンがだいぶ押され始めた。

「いやあ、調子に乗って悪かった……、久々に若い冒険者と会ったもんで、つい俺の悪い癖が出ちまった」

「いや、別にいいんですよ」とロイが言った。

 ゲーデルはまだ納得いっていないようで、黙っていたのでロイが間に入った。

「はっはっは、ネルソン。今回はやられてしまったな」

 馬車の手綱を引いている商人のグスタフが口を開く。

「お二人とも、ネルソンは悪いやつではないです。長らく私の護衛を務めてくれていて、山賊が現れたときも撃退してくれて、危ないところを何度も助けられています。そのおかげもあってか、最近は襲われることはほとんどなくなりましたがね」

 たしかに馬車に乗り合わせてから危険な目に合っていない。

「この辺りは、魔物は出ないのでしょうか?」

「でないことはありませんが、今は魔除けの香を使っているので魔物が寄ってきにくくはなっていますね」

「ところで、グスタフさんは何の商いをしているのですか?」

「大まかにいえば、ロルダで海産物やその干したものをラモーネで売り、ラモーネで装飾品などを買い付けてロルダで売る、ということをやっております。他にもこまごまとしたことをやっておりますが、大体こんなところでしょう」

 ロイの頭の中で今考えていることは、グスタフが信用できる人間なのかどうかだろう。コボルト族との交易は慎重に行いたい。今ここで決めずに、やはり一度ラモーネの冒険者ギルドでグスタフについて聞いてみた方がいいかもしれない。他にもいい商人がいるかもしれないのだから。

「もうすぐラモーネに着きますよ」

 ラモーネの街の門が見えてきた。

 今回の旅のために用意していたガーディアンゴーレムのための消耗品はコボルト族のおかげでほとんど使わなかったし、ブリザードウルフの素材にガーディアンゴーレムとの契約もできて十分な成果を上げた旅となった。


 ラモーネに着いてグスタフとライナスと別れてから、冒険者ギルドでブリザードウルフの素材を買い取ってもらうことにした。結構いい値段で買い取ってくれて、資金的にはだいぶ余裕が出来てきた。それから今回のブリザードウルフ討伐の功績でゲーデルの冒険者ランクもCランクに上げてもらえることになった。それからコボルト族との交易を任せる商人について相談すると、グスタフは商人としての評判は冒険者ギルドの中でもかなりいいものだった。ロルダの街に店を持っているが、今は息子に任せて腐れ縁のネルソンと交易をしているらしい。もともといろんな街を渡り歩いて商売することが好きだったようで、一つの場所で数字とにらめっこすることが苦手だったのだ。

 交易依頼に関して他にも何人か商人の紹介をされたが、結局グスタフに頼むことに決めた。

 一仕事終えたグスタフとネルソンを見つけ、交易の交渉をゲーデルと一緒にした。

 ゲーデルが開発した翻訳機の説明やコボルト族と出会った経緯や、交易の依頼に慎重だったことなどいろいろと説明するとグスタフは快く承諾してくれた。気になっていた異種族との交易という点だが、多くはないが特別珍しいことでもないので問題ないそうだ。ネルソンも「まあ、いいんじゃねえの」と言って協力的だった。最初にあった時のこちらを馬鹿にしてくる様子はもうなかった。翻訳機の説明をしている時など「すげえな、お前ら」と一人でぶつぶつ言いながら感心している様子だったのでもう大丈夫だろう。

 交渉についてひと段落してゲーデルと今後について少し話すことにした。

「今回の報酬で資金にかなり余裕ができた、俺の装備もだがゲーデルの銃の改良に多めに資金を入れてもいいと思ってる」

「いいのかい?」

「ああ、強い魔物と戦う時はお前の銃の威力が頼りだからな。しばらくの間、俺一人で依頼を受けるからじっくり時間を使っていいぞ」

 ほめたことに対してなのか、ゆっくり銃の改良に取り掛かれることに対してなのかはわからなかったが、ゲーデルは頬を緩ませてうれしそうな顔をしていた。

「うん、がんばるよ。ありがとう」

 じっくりと銃の開発をしたいからと、必要な材料や部品を調達したらリベンダー村の自分の小屋で作業に取り掛かるそうだ。

 ゲーデルに報酬の取り分と銃に必要な資金を渡して、ロイは一人で道具屋に向かうことにした。何故道具屋なのかというと、それはスライム袋を買うためだ。スライムを倒すことは簡単で、スライムの体の中心にあるコアを破壊すればいいだけなのだが、契約となるとそうはいかない。コアを破壊してしまっては契約できないからだ。そこで活躍してくれるのがスライム袋というわけだ。スライム袋にスライムを入れて待つとスライムは気絶するので、それで契約が出来るようになる。普通の袋でもできなくはないらしいがスライムの体液で袋が溶けてしまうので、溶けない丈夫な袋を使う必要がある。

「すいません、スライム袋を何枚かください」

 道具屋の少し年上そうなお姉さんに話しかけた。

「はーい、スライム袋ね。──って珍しいわね。滅多に出ないわよ」

「まあ、そうですよね。スライムの契約で使おうかと思って」

 お店のお姉さんは驚いた表情をした。

「へー、召喚士ってこと?ジョブ持ちなんてすごいわね。えっと、これでいいわよね」

 そう言ってスライム袋を棚から取り出してくれた。

 その後、スライム袋の簡単な使い方を教えてもらった。袋を両手で持ってスライムを中に入れるだけなので簡単なものだ。

「ありがとうございます」

「ほかにも必要なものがあったらまた来てね」

 道具屋を後にして、宿屋へ向かう途中にある装備品の店で念願のガントレットを手に入れることができた。ビルおじさんの見立てで魔力の通りが良くなるものを選んでもらえたのは良かったと思う。こういったことは、やはりプロに任せるのが一番だ。

「ビルおじさん、ありがとう」

「おう、大事に使えよ」

 早速装備してゴーレムの腕を出してみると、手になじんで威力が増しているような気がする。次の魔物との戦闘での威力の違いが期待できそうだ。

 明日スライムとの契約に向かうのだが、午前中は旅に出ていてできていなかった魔法講習を久々に受けるので、午後から行くことになりそうだ。講習は午前中の早い時間帯なので、宿屋に帰って早めに寝ることにした。

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