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第27話 とある召喚士の死

 耐熱の魔導着を着て洞窟の中に入っていく。実際の熱さはわからないが空気が揺らいでいるのが見えるので、この魔導着なしではたちまち皮膚が焼けただれてしまいそうなことは容易に想像できた。

「ロイ、大丈夫か?」

 魔導着の隙間から鋭い目でこちらを見るグラムが言った。彼女は熱さには強いようだ。

「はい、まだ大丈夫です」

「ここをもう少し行ったところじゃ」

 モルトの年齢は聞いていないが見た目はしっかりおじいちゃんだが、足取りはしっかりしている。錬金術のための素材採取が活きているのだろうか。

 さらに歩いて行くと広めの空間に突き当たった。奥にはゆっくりと流れる溶岩流が見える。全体の黒の中に赤、その内側に黄色に光る部分があり、蒸気も出ている。これまでよりも熱さが増している。

 黄色く光っている溶岩流の表面に赤黒い鱗が浮き上がってくるのが見える。竜よりやや横幅が広い顔で、全身に薄い炎をまとっている。四つの足で溶岩流を這い出てこちらの黒い地面に歩いてくる。サラマンダーだ。見知った顔がいるせいか「クルルル」と警戒心を感じさせない声を上げる。

「ランダ、ロイを連れてきたぞ」ランダというのはこのサラマンダーの名前だろう。

 初めて見るロイの存在を確認し、じっと見ている。

『初めまして、君がロイ君だね。私は君が来るのを待っていた』

「わ! しゃべった!」

 しかし、おかしい。声が聞こえるのに口が動いていない。

「おお、心話か。召喚士が使えるという。何と言っとるんじゃ?」

「君を待っていたと」

「そうか……、さ、話を続けとくれ」

「おいおい、長話は勘弁だぞ」グラムがけだるそうに言った。しかしこの熱さではそう思ってもしかたないだろう。

『相変わらずせっかちな女だねえ』そう言いながらグラムのほうを向いていた。

 それに気づいたグラムはそれ以降、何も言わずに我慢していた。

『そうはいっても無駄に長く話すつもりもないよ。単刀直入に契約してくれ、と言いたいところだが少しだけ身の上話をさせてもらってもいいかい?』

『はい、聞きたいです』

『ありがとう。このロードガルド大陸にはかつて火山地帯がたくさんあった。そしてそこに生息している私たちサラマンダーも数多くいた。私たちはその環境に満足していた。だがそんな中で一匹のサラマンダーが、一人の召喚士と契約を結ぶという出来事が起こった。正直、私には理解できなかった。自分の体を捨ててまでして何が手に入るというのか――あの時はわからなかった。そして時は流れ、ここ十数年の間で急速に火山活動がなくなっていってしまった。それが何故なのかは私にはわからない。我々は活動力を失い、弱っていき、そして多くの同胞が死んでいった。残っているのは私だけさ。今ならわかる肉体を失い魂だけが残ることの意味が。私の背中にはこれまで亡くなっていった無数のサラマンダーの魂が宿っている。これは絶滅に瀕した種族だけが理解することができる感情だ。私はその思いを引き継ぎたい、どうか私と契約してはくれまいだろうか』

 言い終わるとランダは少し喉を鳴らして辺りを見回していた。

「長い……」グラムがうなだれて言った。

 試したことはないがロイは全員の魔導着の表面にスライムを覆ってみた。

「おお、これはいいな」

 どうやら効果はあったようだ。

『断る理由はありません。契約、お受けいたします。ですが一つ質問があります。サラマンダーを契約した召喚士は、その後どうなったのでしょうか?』

 ランダはこちらを向いて少し間があった後に、

『その召喚士は亡くなっている。しかし契約によるものではなく、魔獣との戦闘が原因だったと聞いている。確か名前はラミナといったはずだ』

『わかりました。ありがとうございます。それじゃあ、早速契約を始めてもいいでしょうか?』

『よろしく頼む』

 ロイがランダに近づくと、ランダは頭を下げた。ロイは手を伸ばし、ランダの額辺りに手を近づけた。するとランダの体が赤く光っていき、ロイの体に吸い込まれていく。

 モルトとグラムはその様子を、固唾を飲んで見守っていた。

「無事、契約できました」

「おお、そうか。それはよかった」モルトは安心した様子でそう言った。

「終わったならさっさと帰るぞ。熱くてしょうがねえ。まあ、このスライムのおかげで大分楽だったがな。ありがとよ、ロイ」

「いえ、役に立ててよかったです」

 ふと魔導着についているスライムを見ると色が赤くなっていることに気が付いた。熱で色が変わってしまったのかと思ったが、後に別の理由であることがわかった。

『スライムが〈変化〉を習得し、レッドスライムに〈変化〉することが可能となりました』

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