第26話 サラマンダーの洞窟
グランリーフから北西に向かった先にニマの村があるそうだ。ニマから東に行けばパーがいるイズリットの街があるらしいが近いというわけではなく、馬ならばいけるというくらいの距離だそうだ。
移動していくと遠くのほうの地面が他とは違った様相になっていて、うねりのある黒い土の間に、赤く光るどろどろとしたものがゆっくりと流れているのが見える。
「この辺りはロードガルド大陸で残っている唯一の火山地帯だ。少し熱くなってきただろう?」
「はい、そうですね」
ミスリルの装備と体の間に汗がにじんできていた。風も吹いているので蒸し暑さはそれほど感じないが、胴装備だけは脱ぐことにした。
少ないが樹木も生えている。軸に長い葉が無数についた珍しい植物も見られる。
「見えてきたぞ、ニマの村だ」
規模的に村というだけあって、暮らしている人はかなり少ない。十人程度だろうか。見渡す限りでは人族と獣人族しかいなく、ほとんどが獣人族だ。
「ここはグラムさんの古郷なんですか?」
「まあ、そんなところだ」
村の中に入ると村民たちは歓迎してくれているようで、親しげに近寄ってきてくれた。グラムが帰ってきたからというのが大きいだろうが。
「モルトのじいさんはいるか?」グラムが村民に尋ねる。
「ええ、村長なら家の中にいると思いますよ」村民の内の一人が言った。
「わかった、ありがとう」
馬とボボを家の隣につけて、家の扉の前に立つ。
「おーい、じいさん。ロイがきたぞー」
すると中でガタガタと音がした後、勢いよく扉が開いた。
その老人は何も言わないまま、目を見開きロイを見つめていた。
「おい、じいさん。例の件もある、突っ立ってないで中に入れてくれよ」
「おお、そうじゃった。中へ入っとくれ」
中へ通されるとテーブルがある場所に座ることを促された。グラムと待っていると何か温かい飲み物を出された。
「あたしも飲むのか?」グラムが意味ありげに聞いた。
「嫌ならのまんでいい」
グラムは渋々とその飲み物を飲んだ。ロイも続いて飲む。
飲んだ後にすぐ体が温かくなり、その後ひんやりとしてくる不思議な飲み物だ。グラムが飲まなかったら警戒して飲んでいなかったかもしれない。
「ロイ、紹介してなかったがこのじいさんは錬金術師で獣医もしている、この村の村長のモルトだ」
「初めまして」ロイが挨拶をする。
「早速本題なんだが、サラマンダーの容態はどうだ?」
「よくはないな。やはりこの火山地帯が消えていきつつあるのが原因じゃろう。サラマンダーは主に火山地帯でしか生きられない生物だから、これはもう避けられんことじゃ」
「やはりそうか。そこでロイ、お前の出番というわけだ。カランから何か言われなかったか?」
「何か? 自分で決めろとしか……」
「そうか、なら行ってみるしかないか。モルト、耐熱の魔導着あるよな?」
「ああ、あるとも。今から行くのか?」
「そうだ、早い方がいいだろ」
「わかった、少し待っとれ」
モルトは奥の方に行き、魔導着なるものを取りに行ったようだった。
「ちょっと待ってください。さっきから話が勝手に進んでるんですけど、何をしに行くんですか?」
「何って、お前召喚士だろ。サラマンダーと契約しに行くんだよ。まあ、最終判断はお前とそこにいるサラマンダー次第だけどな。カランが自分で決めろ、って言ったのはそういうことだろ」
「サラマンダーと契約……」
「別に嫌なら行かなくたっていいんだぜ」
「いや、行きたいです」
契約というより純粋にどんな生物なのか気になったのかもしれない。
「持って来たぞ、体に合うか確かめてくれ」
持って来た魔導着というのは、頭も含めた全身を覆い隠せることができる服だ。モルトとグラムは以前に着用済みなので、確認が必要なのはロイだけだった。
「はい、ちょうど良さそうです」
「よし、じゃあ行くか」
向かうのはサラマンダーの洞窟で、ボボに乗って行くことはできないので、歩いて行くことになるが、洞窟の入り口はすぐ近くにあるとモルトは言った。




