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第22話 〈バリアブレイク〉

「今まで〈バリア〉を張ることに関しての修行をしてきたのだけれど、今日からは別のことをやっていこうと思うの」

「別のこと?」

 何をするのだろうと思ってマリンは聞き返した。

「そう、今度は〈バリア〉張ることではなく、壊すことに関する修行をしていくことにするわ」

 そう言われてもマリンにはピンとこなかった。

「言葉で言っても分かりにくいと思うから、まずはやってみましょうか。マリン、いつものように〈バリア〉を張ってみてくれる?」

「は、はい」

 自分の周り全体に〈バリア〉を張るマリン。

「よく見てて」

 リーリエルはマリンが張った〈バリア〉に近づいて左手のひらを当てて〈バリアブレイク〉と唱えた。

 するとリーリエルの左手のまわりから〈バリア〉が剥がれて散っていき、消えていく。全周を覆っていた〈バリア〉は瞬く間に消えて無くなってしまった。

「ええ、消えちゃいましたよ」

 マリンは何が起こったのかわからないという顔をした。

「これは〈バリアブレイク〉という魔法よ。その名の通り〈バリア〉を壊す魔法。今まで〈バリア〉というのは、その強度が特に重要視されてきたと思うのだけれど、現にこうやって破壊できることが確認されているの。あなたのように強固な〈バリア〉を張れる人にこそ、このことを知っておいてほしくて。そしてさらにこの〈バリアブレイク〉という魔法への対策を学んでもらいたいの」

 戸惑って聞いていそうなマリンに、どうかしらというような表情でリーリエルが見ていた。

「確かに私のように〈バリア〉しか取り柄がない者にとって〈バリアブレイク〉という魔法は致命的な脅威と言えますね。これまでにその魔法を使ってくる存在に出会ってこなかったのは運がよかったのかもしれませんね。すぐにでも対策を学びたいです」

「そう、その意気よ。でも対策と言っても特別なことは何もなくて、簡単に言ってしまえば力技。ということになるわね――つまり、壊されている〈バリア〉を同じように張りなおして修復する。ということなの」

「本当に力技ですね……」

「もう一回やるから、今度は修復しながらやってみて」

「はい、やってみます」

 〈バリア〉を張りなおすマリン、それに対して手を上げて構えるリーリエル。

「いくわよ〈バリアブレイク〉」

 魔法が唱えられてすぐに〈バリア〉が破壊され始める。しかし、今度は破壊の進行度が遅い。マリンの修復が成功しているからだ。部分的に破壊されたところに新たな〈バリア〉が形成され、破壊を食い止めている。しかし時間がたつにつれて破壊速度の方が上回り、〈バリア〉は崩壊してしまう。

「はあはあ、ダメでした……」

 マリンは膝に手をついて息を切らしていた。

「そんなことないわ。初めてでいきなりできたんだもの、大したものよ」

「そ、そうですかね……」

「そうよ、もっと自信を持っていいわよ。でも今日からみっちり修行していくから、覚悟しておいてね」

「はい、わかりました」

 返事をした後に少し考え込むような表情をしていたマリン。

「どうしたの?」

「あのー、ちょっと思ったんですけど。〈バリア〉って重ねて張ったらいけないんですかね?」

「いけないわけじゃないわ。ただ、強度がなくなるし張られた距離によっては重なっている〈バリア〉もろとも〈バリアブレイク〉で壊されてしまうわ。だから何を重視するかによるわ。強度がほしいなら一重で、〈バリアブレイク〉対策なら感覚を開けて複数枚と言ったところね」

「へえー〈バリア〉って奥が深いんですね」

「〈バリア〉に限らず魔法もそのほかのジョブも、突き詰めていけばなんでも奥が深いわよ」

 それから〈バリアブレイク〉へ対抗するための修行は何日も続き、応用編として遠距離から攻撃魔法を〈バリア〉で防ぐところから始めて、接近されてからは〈バリア〉の破壊と修復の攻防が始まるという流れになり、ある程度の隙間ができてしまうとそこから攻撃魔法を撃たれてしまうこともあった。

 遠距離から距離を詰めるリーリエル。それから逃げるマリン。やはり飛行魔法の習得に苦戦しているので、自分の足と滑る〈バリア〉の応用で距離をとろうとしていた。しかしリーリエルの方はというと、滑る〈バリア〉に加えて飛行魔法、風魔法、〈ヘイスト〉などあらゆる手段で接近してくるので距離をとるのは難しかった。何度も〈バリア〉を破壊されても、あきらめずに続けていくしかない。マリンの修行の日々はまだまだ続く――

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