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第14話 城壁上の夕日

 もともとオルデンにはグランリーフへ行くための通過点というつもりで来ていたのだが、この国最大の都市ということもあって「もう少し街を見るために滞在しよう」とみんなの意見で決まった。オルデンはラモーネの街よりも賑やかで、聞いていたオーク族も数はかなり少ないが見かけたりするなど、少し違う国の文化に触れているような感覚を覚えた。

 街道を歩いていると、食べ物を売っている屋台がいくつもあり、パーは鼻をヒクヒクさせ、マリンはよだれを垂れしていた。

「ここらで何か買って食べて行こうか」

「賛成!」みんなお腹が空いていたようだ。

 何を食べるか決めるにしても、どれもおいしそうに見えて迷ってしまう。するとパーが、

「なんかいい匂いがしてきたっす」匂いのする方向を指さす。

「ああ、あれは魚の燻製だよ。あそこの箱の中に細かい気が入っていて、食材をいぶして作るんだ。食べてみるかい?」

「食べてみたいっす!」

 魚の燻製を四人分買って、近くの休める場所で食べることにした。

「これめちゃくちゃおいしいっす」とパーが目を輝かせながら魚をほおばっている。

 ゲーデルとマリンも「おいしいね」と言って食べていた。

「こんなおいしいもんがあったなんて、外の世界に出て来た甲斐があったってもんす。家族のみんなにも食べされてやりたかったなあ」

 パーが少し遠くを見ながらそう言った。

「それならグルタフさんに相談してみようか。作り方を覚えればそんなに難しいものじゃないからギルドを通して手紙を出せば、まあ何かしてくれるでしょ」

「え、いいんすか? 何から何までお世話になっちゃって。申し訳ないっす」

「いいよ、別にそんな特別なことじゃないし、それにパーは十分役に立ってくれてるよ。それなのにこの前の道中で手に入った素材と魔石の報酬はいらないっていうから、これくらいはさせてくれよ」

「そうよ、遠慮はよくないわよ。私なんて隣で売ってた肉の串焼きまで食べてるんだから。むしゃむしゃ」

「マリンはまだ何も仕事してないけどね……」

「あははは」と隣にいたゲーデルが笑った。

「ところでマリン、ちょっと思ったんだけど、バリアを張るときはいつも全体に張るようにしてるのかい?」

「そんなの当り前じゃない。全体に張らないと全方位から攻撃がきた時に防げないからよ」

「全方位からって、そんなことまずないでしょ……」

「あるわよ。私の村じゃあいさつ代わりに攻撃魔法がそこら中から飛んでくるんだから。部分的にバリアを張ってたんじゃ怪我しちゃうわ」

 マリンの村のとんでもない情報がわかった。

「ええ……、すごい村で育ったんだね……」

「ああ、そういえば言ってなかったわね。私、霞ノ杜の里っていうところで暮らしている霞族なの。そこの人たちは全員すごい魔法使いで、魔法使いのエリート集団って言われているわ」

「へえ、そうなんだ。でもマリンはなんでオルデンに出てきたんだい?」

 マリンは「ぐぬぬ」というような顔をして、

「私はそこで落ちこぼれだったから、村から追い出されたの!」

 うっかり爆弾を着火させてしまったようだ。

「ごめん、ごめん。悪く言うつもりはなかったんだ。話を戻すけど、俺たちが今まで冒険してきて全方位から攻撃がくることがなかったから、バリアを張る範囲を部分的にして大きくしたらパーティーメンバーも一緒に守れるんじゃないかと思ったんだ」

「部分的に張ることくらい簡単よ、こうでしょ」

 そんなこと造作もないと言わんばかりにマリンはすぐさまバリアを展開した。そのバリアの範囲は人が五人ほどいても十分に攻撃を防いでくれそうなものだった。

「おお、すごいじゃないか」

「だから簡単だって言ったでしょ」

 これならパーティーで戦闘をすることになっても十分役に立ってくれるだろう。

「じゃあ、これからは敵の攻撃に対して部分バリアをメインに張るようにしてくれるかな」

「わかったわ。でもバリアなんて誰でも張れるんじゃないの?」

 またマリンがとんでもないことを言い出す。

「そんなわけないだろ……。バリアは魔法使いのジョブを持っていないと使えないんだよ。そもそもジョブ持ち自体がほとんどいないわけで――」

「あらそうなの、知らなかったわ。どうりでバリアを張れない人たちばかりだったのね」

 なんだかいろいろと謎が解けた。そして、その勘違いのおかげで強固なバリアを張れるメンバーが加入してくれることになったのだと思った。

 ここからの戦闘ではマリンはロイが言ったとおりにバリアを張ってくれるようになった。


 数日間の滞在で街をいろいろと見て回り、パーとマリンの装備品で補強できそうなところがあるか検討していたのだが、現在の装備とこちらの懐具合を考えて現状のままでいこうということになった。もともと持っている二人の装備が、いいものだったというのもある。

 謎の投影機で見た映像の謎を追って、今では三人の人族と一人のコボルト族と一緒に旅をすることになるとは思ってもみなかったことだ。

 オルデンを発つ前日に、最後に城壁の上から一緒に夕日を見ようということになった。オルデンの城壁は分厚く、複数人が上にのって余裕をもって歩くことができるほどだ。ゲーデルが遺跡にあった設計図から作った謎の投影機の映像の真実を追ってロイとゲーデルはここまで来た。その映像を見た場所、コボルトの洞窟でパーと出会い、仲間になった。そしてオルデンの冒険者ギルドで大騒ぎしているマリンと出会った。それぞれ別の場所で生まれ育った人たちが一緒にパーティーになっている。そのことが不思議で何とも言えない気持ちになった。城壁の上へ向かう階段を歩きながらそんなことを思っていた。

「わあ、綺麗ねー」

「ほんとっすねー」

「ああ」

「うん」

 ちょうど正面の遠くにある山の少し上辺りに日の黄赤色が見え始めていたところだ。上に雲がかかり、黄赤色から白への綺麗なグラデーションを生み出していた。この情景は、種族の壁を超えて感動を与えてくれる。またこの景色を、このメンバーで、この場所で、見たいと強く思った。


 オルデンからグランリーフへ向かってすぐの山間にある関所で、また冒険者カードとグスタフに渡されたバッジを見ると、すんなりと通ることができた。ちなみにパーとマリンの冒険者ランクはEとDで、コボルト族でも冒険者になることができるとわかった。

 それから今後のことも考えて荷車を一台買って、ボボにひかせて移動することにした。いくらシャイロンが丈夫だといってもいずれは厳しくなってくるからだ。

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