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第13話 訳ありの魔法使い

 都市オルデンの城門は、遠目から見てもわかるほど大きな門だった。さすがこの国最大の都市といったところだろう。門に近づくと、ロイたち三人は重装備の門番に厳しい目で見られた。シャイロンはともかく、原因はおそらくコボルト族のパーを連れているからだろう。

「お前たち止まれ、見たところ冒険者のようだが、冒険者カードとほかに何か身元を保証するものはもっているか?」

「はい、これでいいでしょうか」

 二人の冒険者カードとグスタフにもらったバッジを門番に見せた。

 門番はそれらを少し見てから「照合するから少し待て」と言った。

 他の人族の冒険者らしき人達はすんなりと通れているようだ。

「確認が取れた。よしいいぞ、通れ」

 門を通ることができたロイたちは早速ボボを預けて冒険者ギルドに向かう。

 大都市オルデンは、これまで訪れたどの街よりも人の流れが多く、冒険者らしき装備の者も数えきれないほど行き交っている。商売も盛んで辺りを見回しながら冒険者ギルドに到着した。

 石造りの巨大な建物の中は、依頼掲示板の前に人だかりができ、酒場のような喧騒が広がっている。

「パーはまだ開放の儀を受けてないから、受けられる施設を紹介してもらおう」

「開放の儀、ってなんすか?」

 パーがよくわからないといった風に聞いてくる。

「ああ、パーはジョブ適正がある気がする。だからジョブ鑑定してもらうんだ。ジョブ持ちで開放の儀を受ければスキルが習得できて、今よりも強くなれるよ」

「ほ、本当っすか、やります!」

「なるほど、パーがスキルを習得できればまたパーティーの戦力があがるね」

 ゲーデルがパーの肩に手を乗せてうなずく。

 ロイが受付に声をかけると、職員は慣れた様子で頷いた。

「ジョブ鑑定でしたら、この奥の部屋で受けられますよ。案内を──」

 その時だった。

「誰か、私をパーティーに入れてください!」

 甲高い声がギルド内に響き渡った。 振り返ると、大きめの三角帽子に薄紫色の髪を背中の辺りで一つに結んだ少女が、冒険者たちに次々と声をかけている。

「お願いしますパーティーに入れてください、絶対役に立ちますから!」

「……悪いな、他を当たってくれ」

「おいおい、またあの子か」

 冒険者たちは苦笑しながら彼女を避けていく。

「なんだろうね、あの子」

 ゲーデルが首をかしげる。

 少女はそれでもめげずに声を張り上げていた。そして、その少女がロイたちのところにもやってきた。

「あの~、よかったら私とパーティーを組んでくれませんか?」

 上目遣いのうるうるした目で訴えかけてくる。ちょっとかわいいと思ってしまった自分がいる。

「うーん、いきなりそんなこといわれてもなあ」

「まずは何ができるのか聞いてみたらいいんじゃないかな」

 ロイが困っているとゲーデルが助け舟を出してくれた。

「それで君は……」

「マリンよ、魔法使いのジョブを持っているわ」

「そうなんだ、どんな魔法が使えるんだい?」

「強力なバリアが張れるわ」

 マリンは自信満々に答える。だが、こちらの会話を聞いている周りの冒険者たちがクスクスと笑っているのが聞こえる。

「何がおかしいんですか?」

 笑っている冒険者に尋ねる。

「お前さんたち、その子が魔法を使えないの知ってるのかい?」

 その冒険者はニヤニヤしながらそう言った。

「でも、魔法使いのジョブを持ってるみたいですけど」

「そう、そうなんだよ。なのに魔法が使えないんだよ。まあ強力なバリアは張れるみたいだけど、ほとんど自分ひとりしか入れないバリアを張られてもねえ……」

 どうやら訳ありの人材のようだ。

「そ、それはそうだけど……。でもパーティー入れないし、お金ないし、お腹すいたよ~、え~ん」

 本当のことを言われて、マリンはたまっていた感情が爆発して泣き出してしまった。

 どんな人にも何かできることはある。ロイはそう思い、ためしにマリンのステータスを確認してみることにした。すると、たしかにジョブは魔法使いで〈バリア〉のスキルを持っている……以上だった。しかしよく見ると〈バリアレベル二百五十〉それに魔力量が通常のジョブを持っている人より桁が二つほど多い。何かの間違いかと思い、何度も目をこすって見直してみたが、やはり結果は同じだった。

 何だ、これは……。ステータスの振り分け方が偏り過ぎている。いや、偏っているってレベルじゃないぞ。ポテンシャルはとんでもないのにほとんど役に立たない。これではパーティーを断られるのも無理はない。

 ロイが黙って考えていると、この場も静まり返ったままだった。

「まあ、何もできないってことはないだろうから。そういえば魔力があるなら魔石に魔力を込めることってできないかな?」

「ひっく、……うん、できるよ。でも魔力の再補充された魔石の使い道なんてほとんどないから……」

 たしかに再補充された魔石の使い道はほとんどない。天然の魔石と比べて魔力の伝導率が悪すぎるからだ。爆弾として使用できなくもないだろうが、扱いが難しくて危険を伴う上に威力も同程度の魔力を消費した魔法の方がはるかに強い。だがゲーデルの銃は違う。

「え、できるの? ならいいじゃないか。パーティーに入ってもらおうよ」

「お二人がいいなら、自分もオッケーです」

 能天気な二人がとがり過ぎた人材をパーティーに引き入れようとしている……。

「まあ、二人がそう言うなら、俺もいいかなって思うけど」

 ロイは腹をくくった。

「やったー、ありがとー!」

 マリンの目が輝いた。

「あたし、全力で頑張るね!」

 こうして人間二人とコボルト一人の中に、バリアの魔法しか使えない魔法使いのマリンがロイたちのパーティーに加わることになったのである。


 パーのジョブ鑑定がまだだったが、お腹を空かせたマリンに何か食べてもらった方がいいと、みんなの意見が一致したので近くの食堂で食事を済ませてからジョブ鑑定を受けることにした。

 ジョブ鑑定の結果はやはり槍術士だった。ステータス通りだ。

 次に開放の儀を受ければ固有のスキルを習得することができるだろう。

「パーはスキル〈スラスト〉と〈パリィ〉を習得しました」

 パーが習得したスキルは、槍の突き攻撃に魔力が込められた強力な一撃を放つ〈スラスト〉と基礎的な動体視力が上がり、相手の攻撃を受け流すことができるパッシブスキルの〈パリィ〉の二つを習得することができたようだ。必殺技を手に入れることができたというわけではないが、確実に戦力が上がったことに違いはなかった。

「やったね、パー」

 スキルを習得したパーに賞賛を送るゲーデル。

「パー、スキルを習得できたみたいだけど、ここで実践したらだめだよ」

「え、わ、わかってるっすよ」

 パーは動揺して、すぐに槍を収めた。

 槍の矛先を前に出して構えていたパーは今にも〈スラスト〉を打ちそうにしていたのであらかじめ注意をしておいて正解だっただろう。ギルドの施設を破壊されてはたまったものではない。

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