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第12話 都市オルデンへ

 それから〈チャクラ〉習得への実践が始まる。朝に一回〈チャクラ〉のための魔力の流れをつくる。それはランスがロイの胸に手を当てて強制的に行うものだ。魔力の流れを感じて体が温かくなってくる。〈チャクラ〉を極めるには自然界にある魔力をうまく使うことが重要になってくるのだという。そのために午前中は瞑想、午後からはひたすら拳を振って鍛錬を行っていく、ということを毎日続けた。


 三日目の朝、魔力の流れをつくるためランスに胸に手を当てられた時に〈チャクラ〉のスキルを習得することができた。全身に魔力が流れていき、力がみなぎってくる感覚がわかる。

「やったな、ロイ」

 ランスは頬を緩ませながら褒めてくれた。

「うん、父さん、ありがとう」

「大事な息子のためだ、当然だろ」

 この後も〈チャクラ〉の鍛錬を継続していき〈チャクラ三〉までなんとか習得することができた。このことで自分でも以前より格段に強くなった実感があるのだが、課題も出てきたと思うようになった。とっさの攻撃に対してガーディアンゴーレムなどの全体召喚をしていたら間に合わないので、ゴーレムの腕を部分召喚して対応してきたのだが、ガーディアンゴーレムの盾の部分召喚はまだできていない。それから〈チャクラ〉とゴーレムの腕の連携だ。ロイ自身の体は強化されていても、ゴーレムの腕にそれが伝わっていないこと。これらのことができるようになればさらに強くなることができるだろう。


 鍛錬をしていて日付の感覚が少し曖昧になっていたのか、結構な日数が経っていたようだった。ゲーデルが銃の改良を終えてバハムの町まで訪ねてきてくれた。

「やあ、おまたせ」

 新調した防具に身をまとい、腰に小型の銃と背中に大型の銃を背負って、ゲーデルがやってきた。

「ちょうどよかったよ、そろそろそっちに向かおうと思っていたとこさ」

「それはよかった」

 両親も顔を出し、お互いに挨拶をする。顔を合わせるのは今回が初めてだ。

「初めましてだね、ゲーデルくん。ロイの父のランスだ。こっちは母のマーサ。君のことはロイから聞いているよ。いつもロイを支えてくれてありがとう」

「そんなことないですよ、お世話になってるのは僕のほうです」

 ゲーデルは手を振って否定した。

「ロイ、いいお友達見つけたわね」

 母さんが微笑んで言った。

「今日一日くらい泊っていくのか?」

「いや、揃い次第出発するつもりでいたから、準備したらもう行くよ」

「そうか……、何度も言うがグランリーフは危険なところだ、気をつけろよ」

 ランスは残念そうにしていた。久しぶりに帰ってきた息子と、その友達と会えて、ゆっくりと話をしてみたかったのかもしれない。

「じゃあ、行ってくるよ」

 クレア姉さんは結局落ち込んだままのようで出てこなかったが、両親二人は手を振ってロイたちを見送ってくれた。


 都市オルデンへ向かうにあたって、日数のかかる旅になるので、まずはラモーネで必要な物資の調達をする。それからレトに旅中のシャイロンの預り所についてのことなどを聞いておこうと思っている。レトに毎回頼んでラモーネから行き来してもらうには、いささか遠い旅路になってきたからだ。

 レトが言うには「オルデンにも同じように預り所があるので心配はいりませんよ」とのことだった。

 必要な物資をそろえ、パーが待っているコボルト族の洞窟に向かう。


 コボルト族の洞窟に到着したが、パーはちょうど狩りに出かけている最中だと別のコボルトが教えてくれた。特にやることもないので、しばらく洞窟の中で待つことにした。グスタフとの交易は順調のようで、ミルクとチーズ以外にも人が作った調味料なども手に入れることができていると、パーの行き先を知っていたコボルトが教えてくれた。

 ほどなくして、パーが狩りを終えて洞窟に帰ってきた。

「ロイさん、ゲーデルさん、来てくれてたんすか!」

 パーがいつにもまして元気な声で話しかけてきた。パーは捕ってきた獲物を手早く洞窟の中へ持っていき、すぐにロイたちの元へ戻ってきた。

「約束通り迎えに来たよ」

 ゲーデルも手を振って応えていた。

「うれしいっす、すぐ準備します!」

 そしてまた洞窟の中へ入っていった。

「おーい、そんなに慌てなくてもいいよ」

 次に戻ってくると仲間を一緒に連れてきていた。パーの家族だろうか、中年のコボルト二人と、まだ幼いそうなコボルトが一人。中年のコボルトは両親だろう。少し心配そうな顔をしている。幼いコボルトにいたっては、パーに抱き着いて泣き出している。パーはその子の頭の後ろに自分の手を添えて優しくなでていた。

 パーが意を決したように両親と思われる二人に向かって何かを言って、こちらに歩きだしてくる。

「いいのかい? すぐには戻って来れないよ」

 ロイが念を押して言う。

「はい、大丈夫っす」

 パーは真っ直ぐな目でこちらを見てくる。決意は固いようだ。

「よし、じゃあ出発しよう!」

 ロイたちが進みだすころには多くのコボルト族が洞窟の外へ出てきて、パーに向かって手を振って見送ってくれていた。パーが信頼されていた証だろう。

 ロイたちは後ろ髪を引かれながら洞窟を後にした。


 オルデンへは氷山を迂回して、やや勾配のある道が続いている。シャイロンのボボなら何ら問題はない。が「大丈夫っす、大丈夫っす」と言って一緒に乗ることを拒んだパーが明らかに息を切らして走っている。コボルトは普段は二足歩行だが、急いで走るときは四足歩行になって、人間が走るよりも速い。しかしシャイロンの速さには敵わなかったようだ。それに胴体に装備も付けていて、どこで手に入れたかもわからない槍も担いでいる。よくそれでここまで走って来れたものだと思った。ロイは一旦ボボの走りを止める。

「パー、無理して倒れられると困る。後ろに乗ってくれ」

「そうだよ、無理は良くないよ」

 ゲーデルもパーを気遣う。

「わ、わかったっす」と返事をするが、はあはあ、と息を切らしている。少し呼吸が落ち着くのを待ってからゲーデルの後ろに乗ってもらうことにした。シャイロンは体が大きいのでパーが乗ってもあと一人くらいならまだ乗れそうだった。

 オルデンに着くまでにはそれなりの距離があったので野営をしたり、ウルフやベアなどの魔物と戦闘になったりする事もあった。ロイの新スキル〈チャクラ〉とゲーデルの改良した銃の力が発揮されて難なく倒すことができた。パーの槍術での戦闘も十分役に立っていた。

 少しずつ人と行き交うことがでてきた。都市オルデンが近い証拠だろう。見た目からして商人や冒険者だと思われる人たちが、ロイたちと同じ方向に向かって進んでいる。この国で一番の大都市だ。オークなどの異種族もいると聞いた。どんなところなのかわくわくしながらロイたちは進んだ。

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