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第10話 新たな仲間

 ラモーネに着いて、冒険者ギルドでグスタフの居場所を聞いて話をしに行くと、商売の関係で明日までラモーネに滞在することがわかった。

 その日の夜に食事をしながら明日の流れを話すことになった。何故だかネルソンも一緒に食事することになった――

 グスタフに大まかなコボルト族との交易の流れを説明した。

「それでゲーデルが作ったこの翻訳機でコボルト族と会話をしてほしいんです」

 実際の物と使い方を教えた。使い方自体はそれほど難しくはないので大丈夫だろう。

「なるほどわかりました。しかし、こんなものを作ってしまうとはゲーデルさんはすごい発明家なんですねえ」

「いや、そんなことはないですよ。それにこれには理由がありまして……」

 ゲーデルは謙遜しながらグスタフに古代遺跡のことを話した。そこにあった知識を使って銃や翻訳機などの発明をしてきたこと、未完成の通信機などのことを。そして、この発明は知識だけがあっても作れるものではなく、ゲーデルの機工士をいうジョブがあって初めて作れるものだ。

「そうでしたか、そんなものがあのあたりにあったなんて知りませんでした。発明をやるのであれば魔導竜ハーディスが統治しているヴェンという街に行ってみるのがいいでしょう。そこでは戦闘でのことはもちろん、生活に関することにも魔導技術が使われ、街の人々の暮らしを便利なものにしてくれています。これは一度現地に行ってみなくてはわかりません」

 そんな街があるとは知らなかった。それに知らないことがいくつも出てきている。

「その街はグランリーフにあるのでしょうか? それから魔導竜ハーディスというのはどういった存在なのでしょうか?」

「ヴェンはグランリーフにあります。それからハーディスはグランリーフにいる四竜の内の一人です。騎士竜ファーディン、破壊竜ヘルレイム、不死竜ロレイン、そして魔導竜ハーディスです。一人と数えているのは、その四竜は竜のオーブを身に宿していて、通常の竜と違い人に近い大きさになっていることからそう呼ばれているそうです。しかし通常の竜よりもはるかに強い力を持っていると言われています」

 ハーディスの元へ行ってみろというくらいだから、ハーディスは敵ではないのだろうが他の竜はどうなのだろうか。

「その四竜というのはそれぞれ敵対しているわけではないのでしょうか?」

「いえ、敵対はしていません。それぞれが独立した場所を統治しています」

 それを聞いて安心した。ただでさえ手に負え無さそうな竜よりさらに強い存在が敵対しているとしたら、魔王がいるより危険なことだろう。

「僕らはロルダの港から船でグランリーフに向かおうと思っているのですが、どうやって行けばいいのでしょうか?」

 実際に向かうのはビルに頼んである装備品を受け取ってからになるが。

「え、あー、今は船ではグランリーフには行けないんですよ。数年前からグランリーフへ向かう途中に、濃い霧と海の魔物が出るようになってしまって行けなくなってしまったんです」

 そんなことになっていたとは知らなかった。どうやらコボルト族の長老から聞いた話は少し古い話のようで、今とは状況が違っているのかもしれない。

「ほかに行く方法はないんですか?」

 オルデンから竜の往来があると聞いたが、その線は難しそうだ。

「今でしたら都市オルデンからグランリーフへの道が開通していますので、底から行くことができます。ただ、誰でも通れるというわけではありません。冒険者ランクC以上で信用のある者、となっています」

 簡単に通れるというわけではなさそうだ。

「信用のある者。とはどういうことでしょうか?」

 冒険者ランクだけでは足りない理由はなんだろうかと気になったので聞いてみた。

「Cランク以上の冒険者といっても素行の悪い者はいます。そういった輩をできるだけ排除しようという狙いがあるのでしょう。しかしご安心ください。私があなたたちを保証します」

 グスタフは鞄からバッジのようなものを取り出して、ロイに手渡した。

「商人信用バッジです、私の印が押されています。商人が信用した人に渡すものです。それを通行の際に冒険者カードと一緒に守衛に見せれば問題なく通ることができるでしょう」

「ありがとうございます」

 グスタフのことは最初の方は信用していなかったが、今ではすっかり世話になってしまっている。

「そういえばお前さん、ミスリルモールを討伐したんだって? 結構な噂になってたぜ。さぞかしガッポリ儲けたんだろうなあ」

 グスタフとの話し合いが終わったことを見計らってネルソンが話しかけてきた。

「そんなことないですよ。換金した分がある程度は残りましたが、シャイロンという騎乗用生物を買ったのと、残りは装備用とゲーデルが素材として使う分で全部なくなっちゃいましたよ」

「へえー、そうかい。でもシャイロンなんてなかなか買えねえぜ。なあ」

 同意を求められたグスタフは苦笑いした。

「まあ、私たち商人は馬でも十分ですが、上位の冒険者となってくればいずれ必要になってくるので良い買い物かと思いますね」

 ネルソンは上位のという言葉に引っかかっていた。

 その後の話し合いも済んで、食事をしながら少しの間雑談をしてから店を出て二人と別れた。ロイとゲーデルは以前行ったことのある宿屋で泊まることにした。


 いつも受けている魔法講習は休むことにした。シャイロンと馬で移動するといっても時間の余裕は見ておいた方がいいと思ったからだ。

 ボボを連れてラモーネの北門まで行くとグスタフがすでに待っていた。

「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 挨拶をして雑談をしていると、ネルソンが遅れてやってきた。

「わりい、昨日遅くまで飲んじまって……」

 ネルソンがそのままのキャラでなぜか安心している自分がいる。がゲーデルは違っていた。

「全くもう、しっかりしてくださいよ、ネルソンさん」と呆れていた。

 やはり氷山を通らない道は快適で進む速度も速い。魔除けの香の効果もあり魔物が出ることはなかった。仮に魔物が出たとしてもよほど強い相手が来ない限り倒すことができるだろう。

 そうこうするうちにコボルト族の洞窟が見えてきた。

 以前来た時と同じように小山の岩間に見張りをしているコボルトがいる、パーだろうか。

「おーい」

 そのコボルトは声をかけるのと同時くらいにこっちに気づいた。わかりにくかったが翻訳機を使用した声質からしておそらくパーだろう。

「おお、ついに来てくれたか。すぐにペー様を呼んでくるので待っていてくれ」

「すげえ、ほんとにコボルト族と会話できるんだな」

 ネルソンが素直に驚いていた。


 少し経ってから長老のペーと他のコボルトも一緒に出てきてくれた。こちらからグスタフが持ってきた、ミルクとチーズを馬車から取り出して見せると、とても喜んでいた。持って来た甲斐があるというものだ。

 それに応じてコボルト族の方からも鉄鉱石と木の実や薬草などを持ってきていて、ミルクとチーズの相場を超えた分はレミオン国の通貨と交換することになった。

 翻訳機の使い方をグスタフと一応ネルソンにも教えて、次来たときは自分たちがいなくても取引できるようにはしておいた。だが気になる事もある。

「コボルト族が街に入って買い物などをすることはできるのでしょうか?」

 ロイが疑問に思ったことを言う。

「ラモーネやロルダの街では難しいです。ですが、都市オルデンならできるかとおもいます。オルデンでは身元の保証は必要ですが、一部のオークなどの異種族が人と一緒に暮らしているので大丈夫でしょう」

 一応は大丈夫のようだが、やはりどこでも自由にというわけにはいかないようだ。

「おい、パー。お前はロイさんたちに言うことがあるだろう」

 長老がパーを呼びつけて言った。呼ばれたパーはもじもじとしていたが、

「お、俺、外の世界を見てみたい。ロイさん、ゲーデルさん、俺を一緒に連れて行ってくれ!」

「ええーー」

 ロイは驚きすぎて、それ以外の言葉が出ない。しかし、突然こんなことを言われてもゲーデルは笑っていた。

「いいよ、一緒に行こうよ」

 ゲーデルは乗り気だった。

「おい、ゲーデル、簡単に言うなよ。危険な旅になるんだぞ」

 竜より強いやつらがいるのだ。危険でないわけがない。

「大丈夫さ、パーだって覚悟の上さ。そうじゃなかったらこの洞窟から出ようなんて思わないよ。それに仲間は多い方がいいだろ?」

「それはそうだけど……」

 ロイが困っていると、長老が話に入ってくる。

「パーはこう見えてワシらコボルト族の中で、槍を使わせて右に出るものはおりません。足手まといにはならんでしょう。きっとあなたたちの役に立ってくれると思います」

 そんなに強かったのかと思い、パーのステータスを確認してみると〈槍術レベル十五〉と表示されていて驚いた。予想していたよりかなり強い。スキルが何もなかったのは開放の儀を受けていないせいだろう。コボルトが開放の儀、できるのだろうか……。

 まだ一緒に行くと決めたわけではないのに先のことを考えてしまっている。

「はあ……、わかったよ。でもすぐには無理だよ。製作を頼んでいる装備をラモーネに受け取りに行かないといけないし、ゲーデルは銃の改良がまだ終わっていない。一緒に行くとしたらその後だ」

 それを聞いてパーはロイに飛びついてきた。

「ありがとうございます。一生懸命がんばります!」

 まわりで見ていた人たちやゲーデル、他のコボルトも喜んでいた。

 こうして二人とコボルト一人の旅が始まることになるのである。

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