第9話 魔王は食糧問題を解決したい
森の大樹とドリアード『リア』に起きた問題を解決して、村に戻ったところエルフの娘たちが来訪しているとの話を聞き、リブラと二人で彼女たちがいるという村の広い場所に向かった。
そこには先日助けた娘と見たこと無いエルフ娘二人が一緒に来ていた。
とりあえず俺は何が目的か話してみることにした。
「村に来たエルフの娘たちというのはお主たちか?」
「貴方は…?」
「我は魔王バルテオスだ、その姿は先日助けたエルフか」
「え?どうみても農家のおじさんなんですけど…」
「少しイメージチェンジしてな、農家の格好をしているが我が魔王だ」
「イメチェン…ああ、魔王の姿をカモフラージュするためですか…以前助けてもらった時に聞いた声と同一人物だとわかります」
「わかってくれて嬉しいよ、ところで何しに来たんだ?」
「実は、あの後に久しぶりに私たちがいた故郷に戻ったのですが…村は何者かによって壊滅させられて誰も残っていなかったんです、私たちは合流した二人も含めて藁をも掴む気持ちでこの村にやってきました」
「つまり行く当てがないと…しかし、この村もかなり困窮している状態で他の人達を受け入れるほど余裕は無いかもしれない、一応村長に相談するが…」
そんな中、村長がやってきてエルフたちの件について話してきた。
「受け入れても問題ないと思います、魔王様」
「いいのか?村は食料も困窮しているんだろう」
「確かに厳しい状況ではありますが、困っている人達を放って置くわけにもいきません、それに人手が不足しているので村の助けになってもらえれば」
村長は俺と同じく困ってる人達を見逃せない性格のようだ。
村に滞在する許諾を得たのでエルフたちをこの村に受けいれることにした。
「じゃあ、自己紹介がてら名前を教えてもらえるか?」
「はい、私は『ルナリー』といいます、そしてこちらの桃色髪の子が『リルム』、銀髪の子が『エレーナ』です」
「よろしくおねがいします!!」
「私は魔王バルテオスだ、好きに呼ぶがよい。そしてこちらにいるのが私の最も信頼している側近で許婚でもあるリブラだ」
「リブラです、よろしくおねがいします」
「魔王様に許婚がいたんですね、では魔王様とリブラ様と呼ばせていただきます」
「私のことは呼称はいりませんよ、リブラと呼んでください」
「じゃあリブラさんでもいいですか?」
「ええ、好きにお呼びください」
全員の挨拶が済んだところで、本日はお開きとなった。
エルフたちは空いてる家に住まわせて明日から農作業をやってもらうことにした。
森の復興と農作物の作成、やることは山積みだが村を元に戻すべく頑張る事に決めた。
──翌日
朝起きてからまずはリブラに大樹から畑にマナの力を送るように魔法陣の連携をしてもらう事にした。
魔法陣を使った連携を『マナロード』と名付け、畑まで接続を行い栄養を渡らせる。
リブラ曰く植物を育てる力がどんどん流れているとのことだった。
ついでに畑の様子を見てどんな作物を育てているのかリブラに確認して貰い食糧問題の解決にならないか検討してみることにした。
「バル様、ここで育てている作物は『ポポトゥ』と『ビーナ』が主な作物でそれ以外は育てていないようです」
リブラに教えられて作物の形を見てみると、じゃがいもとサツマイモの中間みたいな芋と大豆に似た豆類だった。
「この植物は人にとって栄養はあるのかな?」
「いえ、主食として食べるには少し弱いです、痩せた土地でも育つ作物として選択肢がなかったのだと思います」
「そうか、あとでリアに作物の種とか作れるのか相談してみようか」
「はい、ドリアードは植物に精通している精霊なので、生み出せる可能性はあると思います」
畑の様子を確認した俺とリブラは森の復興作業を行うためリアの元へと向かった。
「魔王様、おはようございます」
「ああ、おはよう、ちょっと待たせたかな」
「いえ、大丈夫です」
「じゃあリブラ、復興についてちょっと打ち合わせしようか」
「はい、バル様」
リアを交えて三人で森の復興についてどのように進めるか検討してみた。
話し合いの結果大樹周辺から魔法陣を広げてつなげていき、網目のように広げていく「クモの巣作戦」でやるのが効率いいだろうという事で作業を始めることをした。
作業の効率化のために運搬作業員が欲しいと思い、リブラに相談してみた。
「それでは低位のゴーレムを召喚するのはどうでしょうか?」
「ゴーレムを?それでどうするんだ」
「はい、ゴーレムは命令されたことを忠実にこなします、力もありますので木材の運搬作業に使うのはどうでしょうか」
リブラの進言によりゴーレムを召喚した俺は、リアと共に枯れた木を風魔法で切断していく作業をはじめた。
木を切って根っこを土魔法で取り出しゴーレムとともに平坦な土地を作る。
リブラは別のゴーレムたちに指示を与え、木材を村の方に運ぶ。
地道な作業だが森を取り戻すために頑張るしか無い。
ある程度作業が進んだところで休憩と称してリアと作物の件について話し合うことにした。
「リアひとつ相談があるんだが」
「なんでしょう、魔王様?」
「リアは木の苗を生み出すことが出来るようだが、他の植物も生み出せたりするか?例えば種とかでもいいが」
「はい、知っている植物の種なら生み出すことができます」
「そうか、実はな村で育ててる作物が酷いものでな、彼らの食生活を改善するため色々作物を育てたいんだ」
「今育ててるのはどのような作物でしょうか」
リブラが間に入り作物について答えてくれた。
「ポポトゥとビーナですね」
「それは確かに寂しいですね、ただ私は人間の食習慣がわからないのでどのような作物が必要かわかりません…申し訳ありません」
「いや謝らないでくれ、ではもう一つ質問だが、人の記憶にあるような作物の種も作れるか?」
「私たち精霊は人の心を覗くことが出来ます、直接私と繋がって記憶を見せて貰えれば出来るかもしれません」
「バル様、それは少し危険です」
「リブラどういう事だ?」
「バル様の肉体は闇の力に溢れています、精霊は光属性の種族なので直接繋がると悪影響が起きるかもしれません、先日見た大樹のように…」
「なるほど、たしかにリアが狂っても困るなあ、何かいい方法はないか?」
「ちょっと調べます、少々お待ちください」
リブラはそう言うと自分の本を取り出し、いい方法がないかサーチをしだした。
いつものようにページがどんどんめくれてあるページで止まる。
「わかりました、先日私が大樹のコアに魔法障壁を使って作ったクリスタルと同じ原理を使えば出来るかも知れません」
「それはどうやるんだ?」
「はい、まず大きめのクリスタルを作ります、次にリアさんとバル様二人が水晶に手を当てて魂同士を繋げます、これで闇の力を遮断した状態で二人の接続が可能です」
「スゴイな、今からそれを作ることは出来るか?」
「はい、やってみましょう、リアさんクリスタルは目立ちますので大樹の中に作ってもいいですか?」
「はい、いいですよ」
三人で揃って大樹の中入り、丁度いい土台になる木の凹みがあったのでその場所に作ることにした。
リブラがクリスタルを作るための呪文詠唱を開始した
「では、いきます!魔法障壁展開!丸い結晶となり姿を表せ!」
彼女の言葉で魔法障壁が丸い形に変形し、人の大きさの半分くらいある水晶玉が出来上がった
「では、お二人で水晶に手を当てて貰えますか?」
リブラの指示にしたがい俺とリアはクリスタルに手を乗せた。
「クリスタルよ…水晶に魂を映し出せ!」
リブラの掛け声で水晶の中に二人の姿をした人物がゆっくりと現れる。
リアはそのままの姿で映し出されたが、俺の姿はなんと前世であったサラリーマンのおっさんで中に出現した、その姿をみててしまったため思わず叫んでしまった。
「うおっ!俺だけど俺じゃあない!」
クリスタルの中に映し出された姿が魔王バルテオス本来の姿ではなく、全くの別人が映し出された事に疑問に思ったリブラが俺に聞いてきた。
「バル様、このお姿は…?」
「あとで説明するから、今はそのまま作業しよう!」
疑問符が抜けないリブラとリアを横目に見ながら、中の魂でリアと手を繋ぎ記憶の共有をはじめた。
とりあえず思いつく栄養のある野菜類を思い出し記憶をどんどんと渡していく。
数々の野菜の記憶を見てリアは驚いていた。
「今まで見たこと無いような作物ばかりです」
とりあえずある程度の記憶共有が出来たので、まずはリアに種を作ってもらうことにした。
「えーと、トマトにとうもろこしとさつまいもの種を作ってもらえるか?」
「わかりました」
当面空腹をしのぐ食べ物として先行して貰い、種と種芋を入手した。
あとで、入手した種を畑に植えることにしよう。
まずは、先程の魂の件について二人に教えることにした。
「二人に俺の正体について話がある、これは内緒にして欲しい、お願いできるか?」
「はい、わかりました」
「私もヒミツにしておきます」
二人が内緒にしてくれという事で自分の正体について語ることにした。
「実はな、俺はこの世界の人間じゃない、別世界から転生してきたんだ」




