第6話 魔王は村をみつけて暮らしたい
リブラと合流した俺は、最強の魔王から農家のおじさんスタイル衣装に着替えて、魔王法衣の術を掛けてもらった。
「これで大丈夫だと思います」
「わかった、ではエルフの娘に教えて貰った『ドイラム村』に向かってみよう」
準備が終わったの二人で空を飛んで南方に飛んでいくことにした。
リブラは背中より黒い鳥のような羽を出現させ空を飛べるようだ。
それから幾つもの山や森を抜けて少し大きめの村みたいな場所が見えてきた。
ただ、言われたような大森林の影もなく巨大な大樹が一本たっているだけで、周辺は枯れた木々が大量に残った死んだような森があり、村も人が少なく物凄く寂れたような場所だった。
「ここがドイラム村か?なんか聞いてたのと雰囲気が違うな」
「どのように聞かれていたのですか?」
「エルフの娘は森林資源が豊富でそれなりに反映した村だと言っていたが…どうみても過疎ってるなあ」
そんな時に遠くから叫び声が聞こえた。
声の感じから結構年配のお爺さんみたいだった。
「お願いします!それを持っていかれたら私たちの食べるものがなくなります!」
「ええい!煩いぞ!王国への税を納めないから食料を持っていくのだ、逆らうなら反逆罪で死刑にするぞ」
「そんな…それでは私たち領民はどうやって暮らせばいいんですか」
「こんな小さな村の民など知ったことか!国の命令が第一だ」
リブラと二人で様子を見ていたが村人達がどこかの騎士に大事な食料を奪われそうになっているのを村長らしき人物が必死に止めているようだ。
確かここはガンギルダ王国という国家の領地だったがそこの騎士だろうか。
「なんか食料を奪われそうなみたいだし、ちょっと助けてやるか…」
俺とリブラは二人のやり取りを止めるため騎士と村長の近くに勢いよく着地した。
着地の衝撃で土埃が舞い、そこから俺がカッコよく登場して騎士に言い放った。
「おい、そこの騎士!その食料を奪うのをやめてここから直ぐに立ち去れ」
相手は、こちらを見て動揺している。
だが、格好からただの農民みたいな姿の自分を見て怯えることもなく反抗してきた。
「貴様!ただの農民が何様だ!逆らえば逆賊として死罪だぞ」
相手は俺の衣装をみて只の農民だと勘違いしているようだ。
しょうがないので、自分の名を言って怯ませようとした。
「我が名は魔王バルテオスだ!逆らうなら貴様ら全員を殺す」
しかし、俺の格好と魔王の宣言にも怯まず農民が脅しで言っているのだと考え騎士達は笑い出す。
「はーっははは!!こんな農家みたいな格好をしたやつが魔王バルテオスだと、笑わせるわ!」
「みんな魔王なら容赦することない、倒してしまえ」
騎士たちは剣を構えこちらに攻撃しようとしてきた。
ここで簡単に相手を殺すのは容易い、だけど魔王になったからと言って人を殺すのは流石に躊躇する。
だったら強力な魔法を放って一発脅してみるか。
「爆裂雷!サンダーブレイク!」
俺は騎士たちの近くに強烈な爆雷魔法を落とし、周辺の地形が変わるほどの威力を見せつけた。
もちろん騎士たちには当てないように、狙った攻撃だ。
衝撃の勢いで騎士たちは周囲に吹き飛んだところにもう一度脅しとして騎士たちに伝えた。
「次は外さんぞ!ここで死ぬか!このまま去るか選択せよ人間ども!」
騎士たちはとてつもなく強力な魔法を眼の前で見せつけられ、叫び声を上げながら脱兎のごとく逃げていった。
「ひっ…ひいっ!!」
「次もまた来るようであれば、命を落とすことを覚悟せよ!人間どもよ!」
アレだけの強力な魔法を見せ付けたらとりあえず当面の間は奴らもこないだろう。
そう考えているとリブラが称賛してきた。
「やりましたね!バル様」
「そうだな、これで当面は大丈夫だろう」
騎士たちが去った後、食料を奪われるのを必死に止めていた村長らしき人物と村人たちが俺の近くで地面に跪き顔を上げ弱々しい声で問いかけきた。
「助けていただきありがとうございます…先程の会話で聞こえましたが魔王様というのは本当なのでしょうか?」
村長は俺が魔王かどうか疑問を呈しているようだ。
そりゃそうだ、どう見ても今の姿はただの農家のおっさんだからな。
「そうだ!我は魔王バルテオスだ!理由があってこのような格好をしているが本当だ」
その言葉を聞いて村民たちは驚いていた、突然来襲した魔王に対して怯えているようにも見えた。
とりあえずここに来た目的を伝え、みんなを安心させようとした。
「皆よ聞いてくれ、我は魔王軍を辞めて辺境の村で暮らそうと思いやってきた、通りすがりのエルフよりこの村が森林資源抱負でよいと言われやってきた次第だ、お主たちに害意を与える気はない」
「魔王様の言葉は真実です、私たちはこの村で暮らすためにやってきました」
リブラも俺の言葉を肯定して村人たちに伝えた。
村人たちと村長がその言葉を聞き、害意がないことを聞いて若干安心しているようだ。
そこで俺はある提案をしてみた。
「皆を助けた見返りとしては少し大きい要求かもしれないが、一つ頼みがある」
「な、なんでしょうか?」
「どこか空いてる住居があったら提供してもらえないだろうか?我らのねぐらとして使いたいのでな」
村長は少し考え俺の要求に答えてきた。
「わ、わかりました。大きめの家がひとつ空いていますのでそちらを提供いたします」
「では、案内してくれるか」
「わかりました、ではこちらにどうぞ」
村長に連れられ、少し離れているが、一つの家を提供してくれた。
中は埃っぽく長い間使われていない様子だった。
だが広さも充分で暖炉と寝室もある、以前はいい暮らしをしていた人物が住んでいたのであろう。
「こんなボロ屋で申し訳ございません、魔王様…」
村長は申し訳なさそうに伝えてきたが、以前自分が住んでたボロアパートに比べたら全然広いし個人的には気に入った。しばらく住めば慣れるだろう。
「掃除すれば普通に使えそうだな、気に入ったぞ」
「バル様、では私が掃除させていただきますね」
「うむ、リブラしばらく掃除を頼む我は村長と少し話したいことがあってな」
「わかりました!おまかせください」
リブラが掃除に向かったことでこの村について疑問に思ったことを村長に聞いてみることにした。
「村長、一つ質問がある」
「な、なんでございましょうか?」
「我は、この村は大森林があって、森林資源抱負で比較的豊かな村だと聞いていた、しかし現状はそうではない。村人皆が痩せ細っているし、食料もままならない様子だ、いったいどうしたと言うんだ?」
「はい…実は十年くらい前は確かにその通りでございました…この周辺が豊かだったのは森に住む精霊ドリアード様のおかげで森が管理され実り豊かな資源をこの村は享受しておりました」
「うむ、それで?」
「アルタイルの大森林には森の大樹があり、そこに精霊のドリアード様が住んでおりました。しかし十年程前に突如行方不明になり、それから森の大樹に異変が起きたのです、周辺の栄養を奪い始めこの村の作物も育ちが悪くなり、どんどんと食料が逼迫するようになりました」
「なるほど…森に異変が起きたわけか…」
「今では大樹を除き森の殆どの木が枯れてしまい、資源が乏しくなってしまいました、生活が苦しくなった村人はどんどんと逃げ出してしまい、残った村民で細々と作物を育てておりましたが、ガンギルダ王国に収める食料も厳しくなり、騎士たちが強制的に作物を奪う暴挙に出てきているわけです」
「そうか、だれか森の大樹に精鋭ドリアードを探しに行かなかったのか?」
「もちろん、村の若い者たちで大樹に向かいドリアード様を探しにいきました、しかし大樹の入口付近に強力な魔物が立ちふさがっており何人もの人達が殺され今では立ち入ることすらできません…」
俺は考えた、もし精霊ドリアードが大樹に閉じ込められているのなら助けて協力を仰げば以前のように森が復活できるかも知れない。せっかく済む村を決めたのに食糧難では今後住み続けるのも大変になる。
思い立ったが吉日、俺は問題を解決するため早速森の大樹へ向かうことにした。
「よし、我がその問題を解決してみよう」
「ええっ!?魔王様がですか?」
「村の復興になるかもしれないなら、まず当面の問題解決だ我に任せよ」
村長にそう伝え、リブラを連れて共に森の大樹へと向かうのであった。




