第5話 魔王はイメチェンして新たな姿になる
魔王城を脱出した俺とリブラは飛翔魔法で空を飛んでいた。
しばらく飛んでいた所にリブラからお願いがあった。
「魔王様…あの私もう飛べますので、降ろしていただけますでしょうか」
「ん?なんだ嫌なのか?」
「い、いやではないのですが…そのちょっと恥ずかしくて…ダメでしょうか?」
お姫様抱っこを恥ずかしがってるリブラの表情を見て少し萌えを感じた。
でも確かに腕に抱えたまま飛ぶとリブラも疲れるだろうだから了承した。
「よし、ちょっと休憩として、地上に降りるがよいか?」
「はい、わかりました」
地上の森にあるちょっとした開けた場所に着地して休憩することにした。
寛ぎながら俺は思ってるある事をリブラに提案してみた。
「ところでリブラよ…いやリブラ」
「なんでしょうか魔王様?」
「我はもう魔王辞めたから魔王様っていうのは辞めないか、あと二人の時は敬語もなくて普通に会話したいんだけどどうだろうか?」
「え、でも私は魔王様に生み出された配下なので敬語でお話したいのですが…」
「我も今まで魔王と言うことで偉そうな口調で話してたけど、二人の時は普通に話したい」
「一人称も俺に変えて口調も普通にしたいんだ、形式とは言え俺の許婚になったんだから上司と部下みたいな感じではなく普通に会話したいんだがダメかな?」
「解りました、二人きりの時だけですね…それ以外は今までの魔王様と同じ様に接してもよいでしょうか?」
「ああ、リブラがそうしたいならそうすればよい」
「わかりました、努力します、ところで魔王様じゃないとしたらどうよんだらよいでしょう?」
「うーん、バルテオスだからパルくんとかバルさんとか?」
「ええ!突然呼び捨てはちょっと気が引けます…しばらくはバル様と呼んでもいいでしょうか?」
「いいよ、それで俺はリブラと呼んでいい?」
「はい、私はそれで構いません」
「よし!じゃあ普通に会話できるから楽だ、偉そうにするの疲れるんだよなあ」
「ふふっ…」
「ん?どうした?」
「バル様の言葉を聞いて、魔王様なので恐い人だと思ってたんですがとても優しそうな感じがします」
「俺は、男には厳しいけど女の子には優しいぞ」
そう、社畜時代に差し入れくれたり優しくしてくれる唯一の後輩女子がいた。
その子のおかげで、辛い社畜生活を頑張れていたようなもんだ。
もう俺は死んでしまったけどいいダンナさん見つかるといいなあと思った。
「そういえばバル様、少しいいでしょうか?」
「なんだい?」
「今、魔王法衣を装備されていますが、その姿のままだと魔王様と気付かれてしまいます、他の衣装に着替えるのはどうでしょうか?」
魔王法衣は過去の記憶から暗黒の力を集中させて自身の体を実体化させてくれる装備だ、もしこれがないと実体化が止まるかも知れない、その懸念点も含めリブラに問いかけてみた。
「リブラ、この魔王法衣は俺の実体化を助ける装備なんだ、だから脱ぐと実体化が止まり肉体が復元できなくなる可能性があるんだが、それは知っているか?」
「はい、ですが私の記録から他の装備に魔王法衣の機能を持たせる術式があります、だから着替えても大丈夫だと思います」
「そんな便利な術式があるのか!?それなら着替えてもいいな」
「はい、それで手持ちには装備がないので、何か洋服かなにか買ってこようと思います」
「そんなアテはあるのか?」
「はい、ここから少し東に言った所に『ボルガット』という街があります」
「俺が行ったらマズイよなあ」
「そうですね…バル様の格好は目立ちますのでこちらで待ってていただければ」
「わかった待ってるよ、農作業やるかもしれないからできれば汚れてもいい服で頼む」
「わかりました、行ってきます」
そう言ってリブラは空を飛び街がある方に飛んでいった。
まあリブラも魔族だけど見た目は普通の魔法使いみたいな感じだし大丈夫だろう。
しばらく暇だろうなと思い座ってのんびりしていたら何か叫び声のようなものが聞こえてきた。
「誰か!誰か助けて!!」
声の感じから結構近い、俺は声の主の所に飛んでいってみた。
そこでは、大型のケルベロスのような魔物にエルフの女性が今にも襲われそうになっていた。
飛んできたエルフの前にダイレクトに着地をして、俺はケルベロスのような魔物に獄炎魔法を放つ。
「獄炎の業火に包まれよ!ヘルファイア!」
魔物は一瞬で全身が炎に包まれあっという間にその生命を落とした。
最強魔王とはよく言ったものだ、魔法一発でこんな巨大な魔物を一撃で倒すなんてスゴイ力だ。
眼の前のエルフの女性は金髪で少し大人びた美人の女性だ、体のラインも出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいるスタイルがよい理想の女性体型といえる。(だけどリブラがいい)
そんな中彼女は助けてくれた自分に対してお礼を言ってきた。
「た、助けてくれてありがとうございます…あ、貴方様は?」
「我か?我が名は魔王バルテオスだ」
「ば、バルテオスって…最強最悪のこの世界の魔王じゃない!なんで私なんか助けたんですか!?」
「いや、『助けて!』って声が聞こえたから飛んで助けに来たんだけど何かおかしいか?」
「魔王って人を殺すことを躊躇しない部下を沢山抱えていてるんでしょ!?なんでよ!」
一般人からしたら魔王というのは人に対する脅威だというのはこの娘のいう通りだ。
それならば、正直に話して納得させるしかない。
エルフの娘に対して魔王城からの脱出に関するこれまでの経緯を説明した。
「つまり、魔王様は魔王軍に愛想がつきて辞めて逃げてきたって事ですか?」
「ああ、そういう事だ」
「だけど、にわかに信じられません…」
「まあ、納得してもしなくてもいい、ところでちょうどいい一つ聞きたいんだが」
「な、なんでしょうか?」
「実は魔王城から離れた辺境の農村とかで静かに暮らしたいんだがどこかいい場所しらないか?」
「それでしたら南方にある『ガンギルダ王国』近くに『ドイラム村』と言うのがあります」
「私が住んでいた故郷の近くにある村で『アルタイルの大森林』があり森林資源も豊富な所だったはずです、30年程前の話しですが」
「そうか有益な情報をありがとう、そこを目指してみるよ」
「念の為お聞きしますが、侵略とか支配とか考えていないんですか?」
「無論だ、さっきもいった通りのんびりと暮らしたいだけだ」
「わかりました、今からそちらに向かうんですか?」
「いや、相棒と待ち合わせしているのでそちらに戻ってからだな、ではまたな!」
そう言って先程リブラと一緒に休憩していた場所に戻ることにした。
すると既にもう彼女は戻ってきていたようだ。
「魔王様どうしたんですか?」
「いや、ちょっと女性の悲鳴が聞こえてな、魔物に襲われてたので助けてきた」
「え、そうなんですか?私には聞こえませんでしたが」
「リブラが飛び立って行った後だったからな、それで衣装は?」
「はい、買ってきましたのでお着替えお願いします」
リブラが用意した衣装に着替えてみた。
上着はゴワゴワとした褐色の羊毛チュニック。肘や膝の部分には、色の違う当て布が重ねて縫い付けられており、激しい労働にも耐えられそうだ。腰には革のベルトと物入れ用の麻袋、足元は、足首まである頑丈な革ブーツ、そして極めつけは強い日差しを避けるための、幅広の麦わら帽子だ。
全部を装備して思った。
「って、どう見ても魔王と言うより農家のおっさんじゃねーか!」
「お似合いですよバル様」
「リブラ…今ちょっと笑わなかったか?」
「い、いえそんな事はありません」
リブラが用意してくれた新衣装で魔王から農家のおじさん風衣装になった俺は、新たな場所へ向かうのだった。




