第4話 魔王は配下と共に逃避行する
新たに自分好みに生み出した配下『リブラ』を許婚にして、魔王城を二人で脱出することにした。
脱出前に彼女からある進言があった。
「魔王様一つよろしいでしょうか?」
「なんだ、リブラよ?」
「城を脱出して辺境で暮らすとしてお金が必要になるのではないでしょうか?」
確かにそうだ、俺は魔王としての姿を完全に取り戻していないが、実体を取り戻したら食事とかも必要になるだろうし、今後の生活に必要なお金もいると思う。
リブラは既に実体があるから食事も必要だろうし、今後何かで稼ぐ方法を考える事にして当面の生活が出来るように先立つ物が欲しいところだ。
「そうだな、そのうち何か稼ぐ方法を考えないといけないが先立つものは確かに必要だな」
「私の記録からこの地下には宝物庫があります、そこからいくらか拝借していくのはどうでしょうか?」
「そうなのか?そこまで案内できるか?」
「はい、恐らくですが数々の宝物と共に金貨数万枚が保管されています」
「なに?そんなにあるのか、全部もらっていこう」
「え、いいのですか?一応魔王軍の資産ですけど…」
「魔王軍の資産イコール、魔王の資産だ我が貰っても文句あるまい」
「そうですね、魔王様に従います」
二人で宝物庫に向かうと門番のガーゴイルが立っていた。
堂々と行ってもいいがシエルや他の配下に報告されても困るし、どうしようか。
とりあえず睡眠の魔法で眠らせることにしてみたがリブラの考えを聞いてみよう。
「リブラよ、あそこの門番に気付かれないように中に入りたいが眠らせる方法で問題ないか?」
「いえ、宝物庫にいる門番のところには定期的に見回りが来ています、異常があると直ぐに気づかれてしまいます」
「なにか良い方法はあるか?」
「そうですね…堂々と入ってみるのはどうでしょうか?」
「なに、バレないか?」
「宝物庫には魔族召喚に必要な触媒も保管されています、それを取りに来たという事で辻褄は合うとおもいます」
「わかった、行ってみるか」
リブラと共に宝物庫の入口まで歩き門番の前まで来た。
案の定門番のガーゴイルが要件を尋ねてきた。
「これはこれは魔王様、今日は何用で?」
「今日は魔族召喚の能力が復活する日だ、知っているか?」
「ああ、魔族召喚を行われるのですねそれで触媒を取りに来たと」
「そのとおりだ、シエルからも言われていて先に触媒を取りに来たのだ」
「ところでその方はどなたですか?」
「この娘は試しに魔族召喚を試した最初の配下だ、ただまだ力が不足しているようでな…触媒がいると思ったのだ」
「ああ、なるほど触媒を使って力を強めようということですね、解りました、では宝物庫を開けましょう…」
ガーゴイルは宝物庫の扉を開けて中に俺とリブラを招き入れた。
意外とすんなりと入れて拍子抜けだった、腐っても魔王という事か。
「よし、では金貨を奪っていくか」
二人で宝物庫を探したのだが数万枚の金貨など存在していなかった。
中を探しても数百枚程度しか残っていなかった。
「リブラ…金貨余っていないぞ?」
「どうやら何かに使われてしまったようですね、とりあえずある分を持っていきますか?」
「そうだな、持っていけるだけ持っていこう…ところで何かいい運搬方があるか?」
「はい、私が持っているブック・オブ・カオスはアイテムを保管する能力を持っています」
「わかった、では触媒と金貨、あとはなんか適当にアイテム保管しておいてくれ」
「わかりました」
当面の金貨やアイテムと触媒を持って二人でしれっと宝物庫を出ていった。
門番のガーゴイルは中に入っていないので異変には気づくまい。
脱出の準備は整った、とりあえず外への繋がる出口がある玉座へと向かう。
玉座到着した二人は誰か来ていないかこっそり覗いてみた。
今のところ誰も来ていないようだった。
そんな中リブラが質問してきた。
「魔王様、玉座に来ましたが脱出口はどこにあるのでしょうか?」
「玉座の裏に外につながる窓があってな、そこから出れる」
「そうなんですね、では直ぐに脱出されますか?」
「いや、こういう辞める時はちゃんと書き置きを残すものだ」
宝物庫にあった紙をこっそり拝借していた俺は自分の世界でいた辞表を書いておくことにした。
そして書いた紙を玉座に貼り付けて脱出の準備は整った。
「よし、では行こう」
「はい、それであの…魔王様ひとつお願いがあります」
「ん、どうした」
「魔法障壁を貼って結界をすり抜けるために魔力を全力で使いたいです、だから私を背中に抱えて貰えますでしょうか?」
どうやら結界を抜けるのに魔法力を全開で使いたいと言われた。
それなら協力しなければと思い抱っこしようとしたがリブラは一応許婚なのでそれでは味気ない。
相手の願いとは異なるが俺はとある思いつきで彼女を抱えることにした。
「わかった、ではこうしよう」
俺はリブラを右腕で足から抱え左腕で背中を支える、そうこれはお姫様抱っこの体制だ。
「これでいいか?」
「ひゃ、ヒャい!大丈夫です」
突然のお姫様抱っこにリブラが照れているようだ。
なんだか普通の女の子みたいで新鮮でかわいいなあと思った俺だった。
「では、飛ぶぞ飛翔魔法!」
魔法を使い二人で空を飛んだ。
上手く結界を通り抜けられる事を願い飛び続ける。
「魔法障壁展開!」
リブラが魔法を唱えると二人の周りに球状のバリアみたいなものが貼られた。
この魔法が結界を防いでくれるのか賭けだったが彼女を信じて突き進む。
すると障壁が結界に当たった感触があったがスルリと通り抜けることが出来た。
「魔王様!結界を抜けられたようです」
「そのようだな、リブラお前のおかげだ」
「もったいないお言葉です。ところでここからどこに向かうのでしょうか?」
「私は外の世界を知らないん、魔王城から遠く離れた辺境の農村を探したい所だが何か情報を持っていないか?」
「申し訳ありません、私も外の世界の情報については知り得ておりません」
「そうか、まあ少し旅をしながら進むか、魔王城は北西にあるからとりあえず南東に向かう」
「はい、わかりました」
──魔王が脱出して1時間後
魔王城の玉座にシエルと四天王が玉座へと現れた。
シエルは入ってくるなりいきなり命令口調で
「魔王様!早速魔族召喚の儀式を始めますよ!」
「あれ?魔王いないじゃないか」
「なんか玉座に張り紙が貼ってあるぞ」
「どれどれ…」
「読んでみるか」
『──魔王バルテオスは、本日付で魔王を辞任させていただきます、後継者はシエルを指名し彼女を次期魔王として任命します』
「はぁ!?魔王が辞めるだって」
「おい!魔王が逃亡したぞ!!」
「魔王結界があるから出れないだろ?」
「とにかく魔王を探せ!魔王城からは出られないはず!よく探すんだ」
魔王が逃亡した魔王城では蜂の巣を突いたような大騒ぎになっていた。
しかし、魔王は既に逃亡し遠くに飛んでいってしまっている。




