第12話 魔王は水の精霊を助けたい
俺とリブラは精霊リアの要請で『ラグナ湖』に出現している魔物の討伐と精霊ウンディーネ探索に来た。
三人のコンビネーションで魔物の討伐は出来たが精霊ウンディーネが見つからないのでリアが周辺を調査してみることにした。
リアが周辺を探索している最中、リブラから討伐した魔物についてある提案があった。
「バル様、この魔物に滞留している闇の力を吸い取って貰えますか?」
「それは俺の復活にも使えるという事かな?」
「はい、闇の力は肉体の復活エネルギーに使用できます」
リブラから頼まれたので、俺は魔物の体に手を当ててストローで飲み物を吸い取るように闇の力を吸い取った。吸収した闇の力で僅かだが肉体が戻ってきたような気がする。
そんな中リアが驚いたように突然叫んで俺に伝えてきた。
「魔王様!魔物の体内からウンディーネの反応が!」
どうやら闇の力に隠れてウンディーネが体内に取り込まれていたようだ。
俺は魚を捌くように腹を切り裂き内蔵を取り出すと巨大な胃袋が飛び出してきた。
手の風圧で胃を切り裂くと水色の結晶となった塊が出てきたのでリアに尋ねてみる。
「これが精霊ウンディーネか?」
「はい、彼女の気配がします。恐らく力を吸い取られて乾眠状態になっていたのでしょう」
「元の姿に戻すには以前リブラがやってくれた大樹のマナを流し込むことで復活出来るかな?」
「同じ精霊種ですのでマナが復活の手助けになると思います」
「じゃあ、大樹まで戻って復活させようか。でもこの魔物ここに置きっぱなしにするのはマズイよなあ、持って帰って食料に出来たらいいけど運ぶ手段もないし、かと言って放置したままだと腐って環境にも良くないだろうからなあ」
「そうですね、運搬手段が無いので、ここで燃やしてしまったほうがいいと思います」
「じゃあ、燃やすから二人とも離れてなさい」
「わかりました」
周囲には燃え移るような物もないしリブラの言う通り炎の魔法で焼き尽くしてしまおう。
「行くぞ!地獄の炎ヘルズバーン!」
俺の魔法詠唱で巨大魚の魔物は蒼い炎に包まれて燃え盛る。
しばらく燃え続けた後にその体は完全な消し炭になってしまい風に乗って粉々に飛び散ってしまった。
残された一部の炭から何か光るものが落ちていた。
「なんだ?これは」
俺は光るもの拾い上げてみた。
銀色で十字架のような形状をした紋章、上下左右に各色の宝石が埋められ中心部に黒曜石のような黒く光る宝石が埋められている。
「リブラ、これなんだかわかるか?」
リブラに十字架のような紋章を見せると即答してきた。
「これは堕天の紋章…聖なる属性を闇に変えて力を吸い取るアイテムです」
「今、何も調べなかったけど、なんで知ってるんだ?」
リブラはハッとしたような表情を見せて手を左右に交差させて少し慌てながら俺に答えてきた。
「え、えっとこれは魔族の中でも有名なアイテムだからです!」
「魔族のアイテムか…このアイテム使ってウンディーネが封じられるように使われた可能性はあるのかな?」
「そうですね…これを拾って封じられるというの不自然です、リアさんと同様に誰かに仕掛けられた可能性は充分に考えられます」
そう言ってリブラは何か考え込んでいるようだった。
リアも人間の誰かにやられたと言っていたし、ウンディーネも人為的な策略に嵌められて封じられたのだろうか。
目的は周囲の環境悪化を狙っての事か?でも何故人間がそんな時間を掛けて人を苦しめるような策略を行うのだろうか?別の目的があって精霊を封じ込める必要があったのだろうが、現時点では何も解らない。
とりあえず、ウンディーネを復活させて話を聞いてみようと二人に提案して大樹へと戻ることにした。
大樹へ戻った三人は、魔法陣にてウンディーネの復元を行うことにした。
リブラが以前と同じ様に大樹のマナをウンディーネと思われる塊に注ぎ込む。
「大樹のマナよ…この者に力を分け与え給え」
大樹のコアよりマナエネルギーが水色の塊に注ぎ込まれ、どんどんと人の形を取り戻していく。
ウンディーネは人魚みたいな感じかと思ったがこの世界では完全な人形だった。
水色の流れるような長髪に髪に耳の所に魚人のような水かきみたいな装飾具、顔はリアのような美人系だが水を司るためか優しいおとなしめな感じがする。
体は肌の露出が多く青色のビキニ水着みたいな服に大きなリボンを体に巻いている。
手には肩近くまであるグレーの手袋のような装飾、足は黒いニーソックスに白いブーツを履いていた。
体が復元したところでみんなで彼女が目を覚ますのを待つことにした。
しばらくするとウンディーネは目を開けて覚醒した。
体を起こすと突然飛び退き俺に向かって叫びだした。
「何者だ!わらわの元に現れた邪悪なものよ!」
叫んだと同時に彼女は攻撃体制を取りながら魔法の詠唱を始める。
「忌むべき存在よ!この地より去れ!いでよ!水魔法アクアカノン!」
問答無用でウンディーネの水魔法高圧で放たれた水魔法が飛んでくる。
またこのパターンかよ!と思った時にリアが正面に立ち、水魔法を受け止めた。
「止めなさい!ウンディーネ!貴方を助けたのはこちらの魔王様なのよ」
突然のリアによる乱入によりウンディーネはその場で立ち尽くして呆然としていた。
「邪悪なる存在がわらわを…?なぜそのような事を」
「とりあえず私の話を聞いて、魔王様に敵意はないわ」
リアの説得によりウンディーネは落ち着きを取り戻し、こちらに来た目的や周囲の復興を進めていることを話し、彼女に話を聞くことにした。
「それでウンディーネが魔物に飲み込まれた理由はわからないのか?」
「わらわがある人間に湖の水について相談したいと願われ、姿を表した所に何らかの魔法で拘束された後は意識を失ってしまいその後は覚えていないのでのう」
俺は考えた、リアと同じ様にウインディーも騙し討ちされて、何らかの形で拘束され水の魔物に食われたもしくはエサにされた可能性が高いという事だ。
「リアの件といい、ウンディーネの件といい誰かが悪意を持って精霊を封じ込め環境悪化を狙っていたのは確かだ、だけど誰の企みかもハッキリとした目的もわからない、要調査対象だろうけど現状動きにくいな」
リアも同じ様に考えていたようで俺の意見に相槌を打つような感じだった。
「そうですね、ひとつ解っているのは環境破壊が目的…それ以上の狙いがあるのか」
二人の会話を聞いてリブラが提案してきた。
「環境破壊が目的なら環境を復元することで何らかの動きがあるのではないでしょうか?」
リブラの言う事にも一理ある、相手の目的が環境破壊だとしたら環境を元の状態に戻すことで、この事件を引き起こした勢力が何らかの動きを見せるかもしれない。
「そうだな、森と湖の復元を進めて行けば二人を狙った勢力が動き出す可能性がある、問題があったら直ぐに報告することでいいかな?」
「はい、わかりました」
「わらわも了解したぞよ」
話し合いが終わり解散かと思ったたらリアからあう提案があった。
「そう言えば魔王様、ウンディーネにも名前を授けてもらえますか?」
「ん?要望があれば付けるけどいいのか?」
「はい、魔王様に名付けてもらうことで、力が繋がりその存在をお互い確認する事が出来ます」
「ウンディーネもいいか?」
「わらわは問題ないぞよ」
ウンディーネの名前かあ…ウニちゃんとか?いやいや安直すぎるな。
ディーネも同じ様に簡単すぎるし、少しもじって『ティナ』でどうだろうか。
「では、精霊ウンディーネよお主の名前は『ティナ』だ」
俺の名前で満足したのかウンディーネは、新たな名称を受け入れてくれた。
「わらわは『ティナ』、改めて拝命いたしました」
これで力の繋がりが出来たのか、一旦解散してリナと森の復元、ティナには湖の様子を確認してもらうことにして、今日はお開きとなった。




