第11話 魔王は湖の問題を解決したい
リアにもらったトマト、とうもろこし、さつまいもの種を畑に植えて成長を見守ることにした。
なんと植えてからたったの一日で作物の芽が出てきて、さつまいもはツルが伸びてきた。
異世界産の作物だからだろうか、食べ物にも異常な成長能力が追加されるのか、それともマナの力が食物の成長を大きく促進しているのかは謎だったがこのペースで育ってくれれば、村人たちの食べ物が少しだけ豊かになるだろう。
時間があれば畑をもっと増やして更に色々な作物や調味料となる素材も育てたい。
作物に余裕が出来たら畜産もやりたいが、この世界ではあまりそういった事は考えないのだろうか。
俺は村長に相談してみることにした。
「村長、この世界では畜産はやらないのか?」
「ちくさん…?魔王様それはどのようなものでしょうか、私は存じませぬ」
「食料になるような動物を飼育して、ある程度育てたところで肉の材料にするのが畜産だが、そういった風習はないのか?」
「村は自分たちが食べる作物で精一杯でしたので…昔、森が豊かだった頃は現れる動物を狩猟して肉をいただいていました、自分たちで育てるというのは考えても見ませんでした」
「そうか、ありがとう」
畜産の考え方はこの世界ではないのか。
鳥、豚、牛に似たような動物を見つけて飼育することも将来的に考えないと行けないと思った。
俺とリブラは今日も森を復興するべく大樹へと向かおうとした。
だけどその前にリアが村に空間転移してきて、ある相談を持ちかけてきた。
「魔王様、リブラさん一つご相談があります」
「どうしたんだ、リア?」
「実は森の北側にある『アイゼンヘイム山』にある『ラグナ湖』に水の精霊ウンディーネが住んでいたのですが、その存在が確認できないのです」
「どこか別の場所に移り住んだとかは無いのか?」
「いえ、精霊はよほどの事がないと自分が住む地域から離れることはないのです」
「そうなのか?じゃあリアが拘束されていた間に行方不明になったと」
「はい、あともう一つ問題がありまして…」
「問題というのはなんだい?」
「実は、ラグナ湖に今まで見たこと無い水の魔物が住んでいるのです」
「魔物が?もしかしてそれが原因か?」
「わかりません、彼女の力を感じることができないので…ただ精霊ウンディーネは水のエキスパートで、水を浄化出来る能力もあるので彼女が存在しないと水質悪化が進み森の復活にも影響が出る可能性があります」
「そうか、それは確かに困るな」
「私の魔法では水の魔物に対処できなくて…もしよければ魔王様に退治してもらえませんでしょうか」
「わかった、とりあえずその湖に行ってみよう、リブラも一緒にいいか?」
「はい、お供します」
唐突なリアの相談から彼女の案内でラグナ湖へ飛んで向かうことにした。
水は全ての生命の源だから、水質浄化の能力があるウンディーネの力は必要だろう、もし今後水に関する問題が起きた時に色々と相談出来るかもしれない。俺は湖に向かいながらそう考えていた。
ラグナ湖に到着したが水面からは何も感じることが出来ないよう。
まるで何も存在しないように物凄く恐ろしい程静まり返っていた。
「何もいないように静かだな…リアどこにいるか感じるか?」
「水になんらかの力が働いてい場所の特定までは難しいです、恐らく魔物の力かと」
「リブラ、何かいい方法あるかい?」
「そうですね、雷魔法を落として水の中に電撃を流し驚かすのはどうでしょうか?」
「雷魔法を?爆裂雷でもいいのか?」
「はい、少し威力を抑えめに水の上に落としてもらえますか」
「わかった、やってみよう」
リブラの助言を受けて俺は雷魔法を落として魚を脅かす作戦を実行する事にした。
確か威力は少し抑えめといっていたな、確かに全力で打ち込んだら湖の生物が全滅しかねないからな。
「よーし行くぞ!爆裂雷サンダーブレイク!」
俺が魔法を詠唱すると湖の中心に巨大な雷が落ち湖全体に電撃が広がっていく。
落雷からしばらくすると水面が大きく荒れ始め大量の水しぶきと共に巨大なサメとも魚とも言えない生物が空に飛び上がり物凄い音を響かせながら水に着水した。
「リブラ、あの生物は何かわかるか?」
「あれは、ガルベガルスです!」
一瞬飛んで見えただけでハッキリとはわからなかったが淡水魚なのにめちゃくちゃデカかった。
シャチよりも大きく小型のクジラに匹敵する位の大きさだから全長15メートル位だろうか。
大きさは違うけど地球の生物で例えるとピラルクに似た巨大淡水魚みたいな感じだな。
「しかし。あの生物が魔物なのか?ただの巨大生物のように見えたが」
リアが俺の疑問について詳しく解説してくれた。
「先程の魔物の体内に闇の力が溜まっています、それも恐ろしいくらいの量で」
「そうか、しかしどうやって倒そうか…雷で浮かせてもう一度電撃を重ねるとかか…リブラ何かいい討伐方法考えられないか?」
「ちょっと調べてみます、少々お待ちください」
リブラは本を取り出し、よい討伐方法がないか調べだした。
いつもより長めの時間をかけて対策を考えているようで、なかなかページが定まらない。
やっと止まったかと思ったがリブラの表情は難しい顔をしていた。
彼女にしては珍しい表情を垣間見れた。
「すごく難しいですが、恐らくみんなの息を合わせた魔法連携で出来るかもしれません」
「どんな方法なんだ?」
「はい、まずバル様が雷を落として魔物を飛ばします、そしてリアさんの力で風を使い魔物を浮かせた状態にしてから、私が湖の水面に魔法障壁を作ってこちらの地面まで滑らせて水に戻さないようにします、最後にバル様にトドメを刺して貰います」
「なんだ簡単そうじゃないか」
「いえ、リアさんが魔物を浮かせられるのは数秒のはずです」
リアはその話を聞いて驚いていた、風魔法の威力と維持時間をリブラが知っていたからだ。
「なぜ、その事をご存知なのですか!?」
「リアさんはまだ復活したばかりで風魔法の威力も持続時間も今は本調子ではないはずです」
「そうなのか、でもそれだと二人のタイミングがめちゃくちゃシビアじゃないか?」
「はい、だからみんなの息を合わせるのが大事なんです」
コンビネーションで魔法を繋ぐ、しかもリアは魔法の持続時間が短い。
確かに難しい連携だが実行してみるしか無い、二人を信じてやってみよう。
「よし!とりあえずやってみるか、リブラ、リア準備はいいか?」
「はい!!」
「よし行くぞ!爆裂雷サンダーブレイク!」
俺の詠唱と同時に巨大な雷魔法が湖に落ちて湖面全体に広がる。
しばらくすると水面が大きく波立ち巨大な渦巻きが発生して魔物が飛び出してくる気配がする。
水が大きく飛び出して先程の魔物が飛び出してきた。
「リア!くるぞ!」
リアが風魔法の詠唱を始め風魔法の準備を始める。
「竜巻嵐!ウインドストーム!」
巨大魚の魔物が飛び出したところで風の竜巻により巨体を浮かせる。
続けてリブラが魔法障壁で水に落ちないようにバリアを貼っていく。
「魔法障壁展開!水面に壁を作れ!」
魔法障壁が徐々に広がり水面を覆うが全体に広がっていくまで時間がかかっている。
そんな中リアが詠唱を続けていた魔法が限界のようでリブラに伝えてくる。
「ダメです!もう風魔法の維持が…」
「もう少しです!」
リアが限界で辛そうな表情をしていて魚の高度が落ちてきている。
これでは失敗してしまう、そんな時俺の中で閃きが生まれた。
「闇の手よ!あの魔物を持ち上げろ!」
俺の体から伸びた闇の手が魔物を持ち上げるてなんとか持ちこたえる。
だが余りにも巨大なせいか重量もスゴイようで闇の手も押しつぶされそうになってきている。
ギリギリまで持ちこたえたところでリブラの魔法障壁が完成して二人に叫んだ。
「出来ました!落としてください!」
二人は合図とともに巨大魚の魔物を落下させる。
原理は不明だがまるで氷の上を滑るように三人がいる近くの地面まで魔物が流れてきた。
眼の前まで滑ってきたところで俺がトドメを刺す。
「氷の槍よ相手を貫け!アイスピラー!」
俺の氷魔法にて巨大魚の首筋と心臓、尾の部分に氷のヤリで貫き仕留めた。
三人のコンビネーションで巨大魚の魔物を仕留めることができ、あとはウンディーネ探しをする事にした。




