Lap 21 「新体制」
年が明け3月、風馬レーシングはスーパー耐久シリーズに参戦するため、公式テストが行われるツインリンクもてぎにいた。
耐久用に仕上がったLexus RC F GT3は順調に走行を重ね、早矢と悟の精度も上がっていた。
そんな中、チーム代表の古川がクルー全員を集めた。
「耐久レースってことで、ドライバーを増やすことにした。チーム専属では無いが、優秀な若手を探してきたぞ」
そう言うと、レーシングスーツを身にまとい、黒髪ロングを後ろで縛った、どこか品のある女性が現れた。
「平峰真里奈です、よろしくお願いします」
スポットではあるが、よく耐久レースで目にするドライバーだ。
「真里奈さん!」
早矢が近づく。
「早矢ちゃん、久しぶりね。大活躍じゃない、すごいわ」
「えへへ、真里奈さん、相変わらず美しい」
(……古川さん、顔で選んだな…)
チームの誰もが思ったが、心に閉まった。
「あー、そう言うことで今年1年、3人体制でやっていくからよろしく」
古川はそう言って、そそくさとガレージを後にした。
真里奈は、悟と目が合い近づく。
「あ、こちらが早矢ちゃんの彼……」
言いかけた口を塞ぐように早矢は、
「ま、真里奈さん、早速マシンみてください、案内します!」
悟は苦笑いしながら、軽く会釈をした。
参戦体制が整い、風馬レーシングは新たなスタートを切った。
第1戦ツインリンクもてぎを皮切りに、風馬レーシングは耐久レースの熟練度を着々と上げていった。
中でも、早矢の成長ぶりには目を見張るものがあり、予選では常に上位のタイムを出し、決勝では鬼ブロックで他を寄せ付けない走り、チームを牽引していった。
悟はと言うと、Lexus RC F GT3の挙動に対し、ある程度は安定したタイムで周回を重ねた。驚くほどのタイムは出ないが、タイヤマネジメントと抜群の安定さで、早矢をサポートする走りに徹した。
──第1戦 もてぎ クラス4位
──第2戦 鈴鹿 クラス3位
──第3戦 富士 クラス3位
──第4戦 SUGO クラス5位
──第5戦 オートポリス クラス1位
──第6戦 岡山 クラス3位
──第7戦 富士 クラス1位
ポディウム5回、年間チャンピオンを獲得。
風馬レーシングは最高の成績を収め、翌年に控えたスーパーGT300クラスへの参戦に弾みをつけた。
ただ、ガレージの片隅で古川と悟が深刻な面持ちで話す様子が度々あった。
「あれ以上は攻められない……な…」
と悟がつぶやくと、古川は笑いながら言った
「歳の割には上出来よ!タイヤ管理と安定したタイム、これで十分。」
悟は一抹の不安を残し、開幕を迎える。




