Lap 10「ポールの衝撃」
GT4クラスの注目チームが次々とタイムアタックに挑むなか、椎名のエントリーが確認された。元チームメイトの早矢とは顔を合わせることこそなかったが、彼の存在はGT4の“目玉”としてすでに注目の的となっていた。
▷ Q1(Race1スタート順)
早矢の走行順がコールされる。
「行ってきます!」
ドライで完璧に仕上げたGR Supra GT4 Evoを操り、早矢は立ち上がりから一気にフルアタック。セクターごとのタイムも安定し、最終ラップで──
1分47秒348
「よしっ! 今日は乗れてる!」
しかし、その直後──
ピットには椎名のアタックラップが映し出されていた。
GT4最速ドライバーと呼ばれる椎名が、難なくラインをトレースし、富士の最終コーナーを加速で抜ける。
1分47秒058
電光掲示板に刻まれた数字に、ピットがざわめいた。
「……やっぱ速いな、アイツ……」
そう言う早矢に近づき悟はかばう
「でも、早矢ちゃんも見事な走りだったよ。 調子いい感じでしょ? 見ててわかったよ」
「ありがと、悟さん。でも……ごめんね。レース1は2番手からのスタートになっちゃった。でも絶対、抜き返してみせるから!」
「うん、頼むよな! 俺も足引っ張らないように頑張るからさ!」
「ふふふっ」
早矢は、不敵に笑った。
「……ん?」
「さ、次は悟さんのQ2だよ!」
「ああ、そうだった!」
そそくさとレーシングスーツを羽織う悟
「悟さん本人が気づいてないだけで……たぶん、すごいタイム出すわ──」
▷ Q2(Race2スタート順)
交代の準備をしていた悟に、早矢がそっと近づく。
「悟さん、セクター2……あそこの下り、ちょっと早めにターンインしてからアクセル開けてください。重心が後ろに残ってるうちに」
「あ、うん……うん。イメージできた」
緊張の面持ちでコースインした悟。シミュレーターで苦手だったセクター2を──早矢のアドバイスどおりに修正していく。
そして最終アタック。
1分47秒523
──電光掲示板が、その異変を告げた。
2位との差、約2.5秒。
解説:「これは……GT4アマ枠とは思えないタイムです!」
パドックでモニターを見ていた椎名の眉が動いた。
「なんだ? アイツ……」
ガレージに戻ってきた古川も、あ然として口を開ける。
「……アマのタイムじゃねぇ……」
その瞬間──
「悟さーーんっ!!」
早矢が小躍りしながら悟に駆け寄り、両手で飛びつくようにして抱きついた。
「わ、わわっ……!」
カメラマンたちのシャッター音が響くなか、照れながら悟がレース後のインタビューを受ける。
ピットの片隅でその姿を見つめながら、早矢が古川にぽつりとつぶやいた。
「……あの人、本当に速いよ……たぶん、私より……」




