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86の約束  作者: 仙道 神明


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10/26

Lap 10「ポールの衝撃」

 GT4クラスの注目チームが次々とタイムアタックに挑むなか、椎名のエントリーが確認された。元チームメイトの早矢とは顔を合わせることこそなかったが、彼の存在はGT4の“目玉”としてすでに注目の的となっていた。


▷ Q1(Race1スタート順)


早矢の走行順がコールされる。


「行ってきます!」


 ドライで完璧に仕上げたGR Supra GT4 Evoを操り、早矢は立ち上がりから一気にフルアタック。セクターごとのタイムも安定し、最終ラップで──


1分47秒348


「よしっ! 今日は乗れてる!」


しかし、その直後──


 ピットには椎名のアタックラップが映し出されていた。


 GT4最速ドライバーと呼ばれる椎名が、難なくラインをトレースし、富士の最終コーナーを加速で抜ける。


1分47秒058


 電光掲示板に刻まれた数字に、ピットがざわめいた。


「……やっぱ速いな、アイツ……」


 そう言う早矢に近づき悟はかばう


「でも、早矢ちゃんも見事な走りだったよ。 調子いい感じでしょ? 見ててわかったよ」


「ありがと、悟さん。でも……ごめんね。レース1は2番手からのスタートになっちゃった。でも絶対、抜き返してみせるから!」


「うん、頼むよな! 俺も足引っ張らないように頑張るからさ!」


「ふふふっ」


早矢は、不敵に笑った。


「……ん?」


「さ、次は悟さんのQ2だよ!」


「ああ、そうだった!」


そそくさとレーシングスーツを羽織う悟


「悟さん本人が気づいてないだけで……たぶん、すごいタイム出すわ──」



▷ Q2(Race2スタート順)


 交代の準備をしていた悟に、早矢がそっと近づく。


「悟さん、セクター2……あそこの下り、ちょっと早めにターンインしてからアクセル開けてください。重心が後ろに残ってるうちに」


「あ、うん……うん。イメージできた」


 緊張の面持ちでコースインした悟。シミュレーターで苦手だったセクター2を──早矢のアドバイスどおりに修正していく。


そして最終アタック。


1分47秒523


──電光掲示板が、その異変を告げた。


2位との差、約2.5秒。


解説:「これは……GT4アマ枠とは思えないタイムです!」


 パドックでモニターを見ていた椎名の眉が動いた。


「なんだ? アイツ……」


 ガレージに戻ってきた古川も、あ然として口を開ける。


「……アマのタイムじゃねぇ……」


その瞬間──


「悟さーーんっ!!」


 早矢が小躍りしながら悟に駆け寄り、両手で飛びつくようにして抱きついた。


「わ、わわっ……!」


 カメラマンたちのシャッター音が響くなか、照れながら悟がレース後のインタビューを受ける。


 ピットの片隅でその姿を見つめながら、早矢が古川にぽつりとつぶやいた。


「……あの人、本当に速いよ……たぶん、私より……」


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