第28話 台所での戦い
台所の排水から、次々と飛び出てくる暗い水色の物体。
何がなんだかわからないまま、わたしとおじいさんは悲鳴をあげた。
(ネズミを切り殺すわけにはいかない!
魔物は魔石に変わるけど、ネズミは死体になるだけ。
死体もとっても不衛生だわ!!)
「……あれ?」
床に着地したソレを見て、悲鳴が止まった。
「スライムだ」
「そのようじゃのう」
なんだ、びっくりした。
スライムが数匹なら、わたし一人でも倒せる。
「どうやら、結界は地面の下までは張られてないようじゃのぅ」
落ち着いておじいさんと会話していて気付いた。
止まらない。
排水溝から、どんどん出てくる。
そして、合体して〔巨大なスライム〕になった。
「逃げるんじゃ! アイビーちゃん______」
わたしはすぐさま左手で右の袖をずらし、右手を振った。
〔グンラウグの剣〕が回転し、右手で握りしめる。
「おじいさん! 逃げてください!!」
おじいさんの前に出て、〔巨大なスライム〕に切りかかる。
わたしが使える攻撃魔法と、〔シーガルスホルムの剣〕は、空から光が降ってくる。
山小屋を壊してしまうわけにはいかない。
ちょっと時間はかかるけど、切るしかない。
幸い、この〔巨大なスライム〕は、前回ほど大きくない。
大丈夫!
「ア、アイビーちゃん!?
えらい鮮やかに剣を使うとるのぅ!?」
「おじいさんが剣をくれたおかげで、レベルが上がったんだと思います!
ありがとう! おじいさん!!」
おじいさんにお礼を言って、再び〔巨大なスライム〕に切りかかった。
「長期戦は得意なので、逃げてください!」
「イヤ、長期戦が得意でも【ユニオンスライム】を、アイビーちゃん一人で倒すのは無理じゃ!
ワシも闘おう!!」
おじいさんは優しい。
台所にあった〔おたま〕を握りしめ、スライムが〔巨大なスライム〕と合体してさらに大きくなろうとするのを、叩いて邪魔をした。
なんて勇敢なんだろう。
すぐ近くに〔巨大なスライム〕がいるのに、剣がないなら〔おたま〕で戦う。
それもこれも、わたしがおじいさんに助けを求めたせいだ。
こんなにいい人を死なせるわけにはいかない。
「わかりました!
では、なるべく時間をかけずに倒します!!」
やるしかない。
〔巨大なスライム〕が得意とする攻撃は〔体当たり〕。
冒険に出るときと違い、山小屋では装備を外してしまっている。
おじいさんでは、ひとたまりもないだろう。
とりあえず〔身体強化〕をおじいさんにかけ、それから自分にも〔身体強化〕の魔法をかけた。
「な、なんじゃ、この手際の良さは!?
まるでベテランの冒険者じゃ!!」
〔グンラウグの剣〕は袖に隠れるぐらいの長さなので、室内でも振りやすかった。
〔シーガルスホルムの剣〕を抜いていたなら、天井や梁に剣が刺さって身動きが取れなくなっていただろう。
(気を付けるべきは〔体当たり〕と〔全回復〕。
それを阻止しながら切る!!)
ちょうど流しに、フライ返しがある。
それを、左手で握った。
(ほんの少しのダメージも、すぐ回復しようとする。
だから、一撃目は弱くていい!!)
「バシィィィィィン!!」
左手のフライ返しで〔巨大なスライム〕を叩く。
すると、〔巨大なスライム〕が、ほんの少し光って全回復しようとするので、そこを右手の〔グンラウグの剣〕で切りつけ、全回復の邪魔をする。
山小屋の台所は、三人でも余裕で調理ができるほどの広さなんだけど、〔巨大なスライム〕のせいで狭く感じた。
おじいさんが〔おたま〕でスライムを叩いている近くを、フライ返しが通る。
顔の近くだったため、おじいさんがビックリして「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」って驚いていた。
申し訳ない。
でも、今回は早く決着がついた。
「ブッシャァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!」
〔グンラウグの剣〕で、〔巨大なスライム〕を倒すことができた。




