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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ポイ捨て

この国では誰もがポイ捨てをします。自らの所有物に責任を持つことは炎天下で放置し気の抜けた温いコーラを飲むことのように誰しもが不快ですから、当然の行為でしょう。しかし、私は思うのです。そのような温いコーラにも活用法がある、と。


そう思い立ち、ゴミ拾いを始めて、何年でしょうか。そこかしこの道端にあるゴミを選り分け、小遣い稼ぎするのはある種宝探しにも似て、中々愉しいものです。


今日も少し遠くの繁華街にやってきました。人が多く集まるところに、掘り出し物は眠るのです。歩きながら周囲をくまなく確認し、気になるゴミがあれば、近づいて確かめる。その繰り返しです。通行人からは怪訝の眼で見られますが、この街で私の悪評が広まった所で何の問題がありましょう。


五分ほど探索しましたが、驚くべきことに、ゴミがほとんどありません。実際には、古いテレビや冷蔵庫はあったのですが、車に入りそうもなく、断念せざるを得ませんでした。途方に暮れて街を見渡していると、前方に何やら白いポリ袋を持った男性が目に入りました。おそらく同業者なのでしょう。同業者を見たのは初めてです。興味が湧いたので、話しかけてみます。


「こんにちは。ゴミを集めているのですか?」


振り向いた彼は異邦人なのでしょう、顔立ちはこの国の人間らしいものではありませんでした。


「はい。この街にはゴミが多くて、嫌なものですから、拾い集めてたんですよ」


私は感動しました。まさか私以外にも、まだ有用なゴミが落ちているのに誰にも使われないことを不快に思う人間がいたとは。


「実は私も、ゴミ拾いをよくするんですよ。よければ一緒にゴミ拾いさせてもらえませんか」


彼がまだ探索していない道になら、まだゴミが残っているはずです。少々強欲な私の提案を彼は快諾してくれました。彼の収穫が減るというのに、何と寛大な方なのでしょうか。


彼はゴミを見るなり、ポリ袋に入れて行きます。私の目には、一銭にもならないように見えるゴミですが、彼は有効な用法を知っているのでしょう。私も見習って、ありふれたゴミを集め、袋に詰めていきます。


私が路地裏へと入っていこうとした時、彼は「路地裏のゴミなんか、拾っても汚いままで、仕方ないだろう」と止めてきました。正直、私はこういった路地裏を目当てにこの街までやってきているので、構わず進みます。彼も仕方なく付いてきます。


足音に驚き、犬の死骸にたかっていたネズミや虫が群れを散らします。毎度のことながら臭いは最悪ですが、大抵、それを上回るリターンがあるものです。


「なあ、確かにゴミだらけだが、こんなところを掃除しても仕方ないだろう」


「まあまあ、後少しだけです」


もうそろそろ抜けるかといった時、ゴミ箱の裏に物影があることに気づきました。


「何を見つけた―子供!? ちょっと待ってろ。警察呼んでくるから」


彼は走り去ります。少々理解できない行動です。それに、警察も危険物でもない捨て子程度では相手にしないでしょうに。


目の前の寝ている子供を担ぎ上げ、車に運んだら、ゴミ拾いは完了です。


明日は、寿司でも食べましょうか。

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