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ドール・イン・ファンタジー 〜ドール精霊を救う旅へ~  作者: 屑野メン弱
第一章 リュミエール剣魔学園編
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第五話 成長する魔法


 森を歩き続けて数日が経った。その道中には魔物と呼ばれる、魔力を帯びた動物が襲いかかって来ることが多々あり、その際はユノが魔法で撃退して俺は傍観者となる。

 リュミエールの王都に行く着くには、リュミエールの国土の半分を占める大森林を抜けなければならない。しかしこれは俺とユノにとっては好都合であった。先日のような追っ手が未だにいると考えれば、大森林ほど身を隠すのに最適な場所はないからだ。もし街道があれば早くリュミエールに着くことが出来るが、その分人に見つかりやすく俺たちの目的地が相手にバレてしまう。そのため森を抜けないよう、ユノが定期的に空からリュミエールの方向へと案内した。

 そういえばユノは常に浮いているが、それも魔法の一種なのだろうか。


「ユノってずっと飛んでるけどそれも魔法なの?」

「少し違うわね。私たちドール精霊の体には浮遊石という鉱石が使われているのよ。それに微弱な魔力を送ることによって高さや早さを変えているの」

「なるほど。魔力ね……もしかしてさ、俺も魔法って使えたりするの?」

「もちろん使えるわよ」

「本当! じゃあ教えて!」


 俺は食い気味ユノに頼んだ。そんな俺に対しユノは苦笑いで答える。少し引かれただろうか。

 やはり異世界といえば魔法! しかし単に好奇心だけって訳じゃない。俺は自分の身を守る術を知りたいのだ。いつまでもユノに頼りっきりってのも気が引ける。


「それでどんな魔法を教えてくれるんだ?」

「まず始めに言っておくけど、レイはそこまで魔力量が多くないわ」

「え?」


 初っぱなから鼻っ柱をへし折られた気分だ。

 俺の明らかに落胆した表情を見てユノは機嫌を取る。


「だ、大丈夫だから。それに使えないとは言っていないでしょ。確かにレイには魔力の才はあまり無いようだけれど、レイには他の誰にもない強みがあるのよ」

「強み?」

「そうよ! 断言するわ。貴方はこの世界の誰よりも精霊適性が高いの」


 ユノは興奮しながらどこか嬉しそうにそう言い切った。

 しかし世界? いきなり現実味の帯びない話になり、流石に信用ならない。大体、世界中の人間を調べた訳でもないのになんで断言できるんだろうか。


「な、なによ! そんな信用できませんみたいな顔して。いい? 殆んどの人間が精霊とは契約出来ないの。それでも運良く適性を持った人間が、下位精霊、上位精霊と契約しているわ。それですら滅多にないことなのよ。特に私たちドール精霊……いえ特異精霊は存在の格が違うわ。普通の人間が私たちと契約すれば、強力すぎる魔力によってその身は滅ぶことだってあるのよ」

「な、なにそれ滅茶滅茶怖いんだけど」

 

 でも以前ユノは俺と契約を成功させたといってた気がするが。確か……。


「俺たちが結んだ契約は奴隷契約って言うんだっけ? 俺大丈夫なの?」

「レイは特別なのよ。基本的に精霊と人間が奴隷契約を結ぶことは出来ないわ。というか、するメリットすらないのよ。奴隷契約は従わせた相手から一方的に魔力を奪えるの。今のレイには無理だけど、ちゃんと魔力を扱えるようになれば私の魔力を奪えるわ。ただ精霊の場合は、一方的に奪うよりも精霊契約を結び、互いに力を共有し、高め合うことが出来る。だから精霊契約という両者にメリットのある契約を用いるの」

「な、なるほど。つまり俺はユノの魔力が使えるようになるってことか」

「そうね。まあ口ばかり動かしてもしょうがないわ。さっそくやってみましょうか。まずは私の魔力を直接レイに渡すから、それを使って魔法を撃ってみて」


 ユノはそういうと、小さな手を俺の手に被せ、魔力を直接流し込んだ。

 これが魔力の感覚…………手の内側を凄い勢いで血が巡っているような感覚でとても暖かい。初めての感覚なのに嫌な感じ一つせず、ユノの魔力が俺に馴染んでいくのが分かる。

 目を閉じ、俺は手から全身にかけて渡る魔力に集中する。


「そう、その調子。魔法で大切なのはしっかりと集中して、丁寧に魔法を構成すること。体に巡る魔力を感じたら、それを手のひらに集めるようなイメージよ」


 ユノの指示通り俺は手のひらに魔力を集めた。集めた所はさらに熱を増し、小さな魔法が生まれる。


「そうしたら手を前に向けて、その集めた魔力を思いっきり飛ばすイメージで! 私に続いて!」

「「ダークネススピア」」


 俺の手から、禍々しい闇の槍が目の前に木に向かって解き放たれた。

 ズバンッッ!!

 魔法は見事命中した。成功だ。

 しかし、命中した木には掠り傷程度の跡しか残ってなかった。

 思っていたより威力がなくて釈然としない。


「ふふっ最初はそんなものよ。寧ろいきなり魔法が使えただけでも十分だわ」

「でもこれじゃ、魔物なんて倒せなくない?」

「魔法は筋トレと同じようなものなのよ。魔法一つ一つを何回も使って、体に馴染ませ、覚えさせて初めてまともな威力になるのよ」

「え? 魔法一つ一つ? 滅茶苦茶大変じゃん……」

 

 ユノ曰く、魔法はそれぞれ魔力の流れ方に違いがあり、自分の体に馴染みやすいものや、体に合わないものもあるらしい。自分の体に合った魔法、使い勝手の良い魔法を選定して使っていくのがこの世界では一般的とのこと。

 普通魔法と言ったら決められた詠唱があって、魔力量に応じて威力が上がるとか、そういったものなんじゃないだろうか。アニメや漫画のようには上手くいかないものだ。

 でも、頑張れば頑張るほど強くなるというわけか。

 だったら撃って撃って撃ちまくってやる!


 こうして俺はユノに魔法を教えてもらいながら、リュミエールまでの長い道のりを、暇さえあれば魔法の訓練に充てた。

 

次回「最強の魔法使い」

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