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ドール・イン・ファンタジー 〜ドール精霊を救う旅へ~  作者: 屑野メン弱
第一章 リュミエール剣魔学園編
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第十七話 偽りの歴史


 波乱万丈の入学初日から数日。

 俺はレクス第二王子から、学園の個室に呼び出されていた。

 また話も聞かずに、いきなり決闘でも仕掛けて来るのかと思いきや、それは早計かつ見当違いだった。


「本当にすまなかった」


 第二王子は深々と、一般人である俺に頭を下げた。

 突然呼び出し、唐突に謝られるものだから流石にびっくりする。


「い、いえいえ頭をお上げください。別に気にしてませんから」

「いや、そうゆう訳にはいかない! 話も聞かずに勝手に決めつけ! あわよくば殺そうとまでしたこの愚かな私に罰を与えてほしい!」

「いやいやいやいや結構です! ユノの事をみんなには黙ってくれればそれで結構ですから!」

「いやしかし…………」

「ならこういうのはどうかしら?」

「ユノ?」


 影に身を潜めていたユノが姿を現し、第二王子に提案をする。


「今後私達に関わる情報、つまりレイと私含めた十二体のドール精霊について、リュミエール王国にとって有益な情報を得ても、それを口外したり悪用したりしない事。もしこれを破れば、私達精霊はこの国から姿を消す。それで如何かしら」


 国及び国民が信仰する精霊が、姿を消す。俺は最初、そこまで重い罰ではないと思っていたが、どうやら国の存続に関わるほど重い罰をユノは提示したようだ。

 信仰する対象が国から消えるだけでなく、精霊がもたらす自然の恵み、魔力の恵みがその国から消える。その影響は他国との外交にも及び、精霊を失った国内内部から、外部にわたり、国が衰退していくのだ。

 そんな愚かな選択を第二王子が選択するはずはなく、ユノの提案をすぐに受け入れた。

 

「はい! それで構いません。必ず守る事を誓います」

「レクス王子、そろそろ頭をお上げ下さい」

「改めて! 本当にすまなかった!」


 しかしプライドの高そうな王子が頭を下げるとは、やはり意外だった。

 そしてやっと頭を上げたレクス王子は俺とユノに質問を投げた。


「可能であれば教えてほしい……どうして君が特異精霊……いやドール精霊の彼女と奴隷契約を結んでいるのか、結べているのか」

「どうする? ユノ」

「口外しないって言ったんだし良いんじゃないかしら」


 ユノに確認を取ったあと、俺はレクス王子にこれまでの事を事細かく話した。


「そうか……君はこの世界の人間ではなかったのか」

「はい」

「教えてくれてありがとう。それと、これからは私の事をレクスと呼んでくれて構わない」

「い! いえそんな!」

「構わないと言っている。それもまた罪滅ぼしと受け取ってくれ」

「わ、分かりました。これから宜しくお願いします。レクス」

「あぁ宜しくとも。レイ」


 第二王子を呼び捨てとは、中々慣れたものではないがしかし…………これからレクスとはいい関係が築けそうだ。



 

 それから約一週間。

 学園の授業は、本当に色んなものがあった。

 言語理解(国語)、算術、実技(剣術又は魔法、或いはその両方)、付与魔法(魔法具)、契約・召喚魔法(精霊も含む)、世界史、気品作法、教養雑学など。

 殆どの生徒には関係ないが勇者育成特別プログラムと言うものもあった。

 実技は剣か魔法、又はその両方を選べた。ちなみに俺とフォルティナはもちろん両方選んだのだが、二人とも問題が発生した。

 Aクラスというのも相まって、俺は剣術の授業に全くついていけなかった。クラス全員と戦ったが、誰一人として勝てなかった。因みにフォルティナはというと、技術がない分、力で補っていた為、随分なお手前だった。

 だがそんなフォルティナが問題だったのは魔法の授業だ。手始めに火水土の初級魔法を全員が試したのだが、それぞれ得意不得意はあれど、数メートル先の的を射抜く程度には大体の人が使えた。しかしフォルティナはその的一つすら射抜けなかったのだ。魔法が使えなかった訳ではない。ただ全く飛ばないのだ。何度も試しても駄目だった。授業を見ていたのはフリーズ先生なのだが、先生でもフォルティナが魔法をまともに使えない理由が分からないらしい。その為フォルティナは授業に参加せず、端っこで一人永遠と訓練を続けた。

 そんな姿を見て、俺もクラスの皆もマギアの一族も、フォルティナを馬鹿にすることは無かった。当然だろう。あの戦いを見てフォルティナを馬鹿にしようと思える筈もない。短期決戦であればここにいる誰よりも強いのは明白。しかもフォルティナは魔法がまともに使えないというハンデを負ってだ。それでも尚高みを目指すその姿を見て、誰もが追い付きたい、これ以上実力を離させる訳にはいかないと焦らずはいられないだろう。その結果、一年Aクラスの授業は薄く緊張感が漂い、意識を高く保つことが出来たため、より質の良い授業になっていた。


 色んな授業がある中、特に印象に残っていたのは世界史の最初の授業に違いない。

 何故なら、語られた歴史には特異精霊が深く関わっていたからだ。


 ◆◆◆


 それはまだ世界に魔力というものが存在しなかった時代。

 人類が繁栄を始め、文明を築き、場所によっては小さな国が出来始めた時代。

 その時代は大きな争いなど一つもなく、まさに平和そのもの。

 しかし、そんな平和を壊すかのように世界に十二ヵ所の異質な場所が突如として生まれた。

 人類はそれを特異点と呼んだ。

 そして特異点を中心として生み出される謎の力が、世界を良くも悪くも蝕み始め、その力が後の魔力である。

 特異点から生まれた魔力は、自然、生き物など様々な物に影響し、枯れた大地には水と緑が生まれ、メリットがある面もあった。

 だが突如、各特異点が異常な高濃度の魔力が観測され、その高濃度の魔力はとある生き物を生み出し、この世に解き放った。

 生まれた生き物は、自らの力を完全に制御出来ていないのか、ある者は暴風を荒れ起こし、ある者は潤った大地を焼き尽くした。

 特異点から生まれたそれを、人類はそれを特異十二悪魔と呼んだ。

 あらゆる力を司る悪魔たちの災いによって、人類にも影響を及ぼし、幾つもの文明が滅び、世界中の生き物が息絶えることになる。

 

 そして世界が危機に瀕した時、神の奇跡が世界に降り注いだ。

 各特異点に神は十二体の精霊を送り込んだ。

 神の一部の力授かった精霊は、それぞれ十二体の悪魔に立ち向かった。

 しかし、特異十二悪魔の余りに強力過ぎる力は、神の一端たる力に及ぶ程だった。

 十数年と決着が着かず、精霊達は悪魔を封印する事にした。

 精霊は封印に成功し、一時的ではあるが世界を破滅から救ったのだ。

 生き延びた人類はこの戦を精魔大戦、十二体の精霊を特異十二精霊と呼び、精霊を英雄として迎え入れた。



 

 精魔大戦が行われた中央大陸は、精魔大陸と名が変えた。

 そして精魔大戦中、精魔大陸跡地を中心として、人類は東と西にそれぞれ逃げた。東に逃げた人類は武に特化した進化を遂げ、西に逃げた人類は大戦跡地の魔力に多大な影響を受け、魔に特化した進化を遂げる。東に逃げた人類を人族、西に逃げた人類を魔族と区別した。

 それから長い年月が過ぎ、人族と魔族はそれぞれ国を築き、大きな発展を遂げた。

 しかし現在魔族が繁栄する大陸の西側は、元々は人族のものであり、その土地を取り返す為に人族と魔族は争うようになる。

 人族は魔法が魔族より上手く扱えないため、戦いは不利な状況が続いた。

 そこで人族は魔族に対抗するため異世界から人間を呼び、勇者と称して魔族と戦わせた。

 そのお陰で人族は魔族と対等に戦えるようになったが、一人の異世界人が大問題を起こした。

 その異世界人は人族を裏切り、封印されていた特異十二悪魔の封印を解き、悪魔達を従えて魔族側についた。特異十二悪魔達は魔族の王、魔王となり魔族の頂点に君臨した。


 ◆◆◆


「魔王が誕生したことで人族と魔族は、さらに溝を深めることになりました。それでは今日の授業はこの辺にしておきましょう」


 まさか特異精霊が過去に世界を救った存在だとは思わなかった。

 でもそうなると少しおかしな点がいくつか見えてくる。

 ユノの人間に接する態度は、あまり心地良いようには見えないのだ。今聞いた歴史では人族には精霊が、魔族には魔王が居て、双方が対立しているように聞こえたが、ユノが人族に向ける目は何処か悲しく、とても一言では言い表せないものだった。

 そんなユノは、俺が授業の時は俺の側を離れて、街や学園で情報収集を行っていた。

 一応ユノに歴史の事を聞いてみたが、上手くはぐらかされてしまった。明らかに何か隠している様子だったが、まぁきっとその内話してくれるだろう。

 ユノには聞きたいことがあまりにも多すぎるが、俺はユノが自分から話してくれる事に期待し、待つ事にした。

ここまで読んでくださった読者の皆様。本当にありがとうございます!

今回のお話の重要な点を少しまとめさせていただきます。


・特異十二精霊=ドール精霊

・特異十二悪魔=魔王

・特異精霊は人類の味方

・特異悪魔は人類の敵

・精魔大戦では、精霊が悪魔を封印した。

・勇者(異世界人)とは、人族が魔族と戦うために召喚した。


次回「仮面剣士」

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