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ドール・イン・ファンタジー 〜ドール精霊を救う旅へ~  作者: 屑野メン弱
第一章 リュミエール剣魔学園編
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第十四話 マギア族VSマギア族


 バタンッッッ!

 勢いよく開いた扉から現れた人物は、鬼のような形相を浮かべた第二王子だった。第二王子は教室全体を満遍なく見渡すと、獲物を見つけたライオンのように目を光らせ、俺の元に闊歩する。


「君だね、精霊を隷属させている愚か者は。嘘を吐いても無駄だよ。僕の精霊であるウィリアが確信している」


 学園ではユノの正体を隠しておく手筈だったはずが、入学早々にユノの存在を明らかにされて、俺は動揺を隠せなかった。


(ユノ! 早速バレちゃってるみたいだけど)

(しょうがないわね。取り合えず誤魔化しときなさい)

(分かった)


「えっと……何のことか分かりませんが、人違いではないでしょうか」

「あくまで知らぬか……まぁいい単刀直入に言う! 今すぐ契約破棄し、その精霊を解放してもらおう。どうやって精霊を隷属させたのかは知らないが、それは神への冒涜だ」


 どうやら第二王子は、俺たちが奴隷契約してることすらお見通しらしい。契約破棄しろと言われても、そもそも俺から契約した訳ではないし、やり方分からないし。


(って言ってるけどどうする?)

(王子だかなんだか知らないけど、こっちの事情も知らずに随分と自分勝手ね。なんとかやり過ごせないかしら)

(やってみるよ)


「えっと……レクス王子。大変恐縮なのですが、そもそも人が精霊を隷属させることは不可能と聞いたことが…………」


 俺は第二王子に弁明しようとしたが、レクス王子は痺れを切らし話を遮られた。


「そうか! しらばっくれるというなら私にも私なりのやり方がある! 君に決闘を申込む。拒否すると言うなら、反逆罪で君を捕えさせてもらう! フリーズ先生、構いませんね?」

「ちょっと!? レクス! 何言ってるの!!! それはあまりにも強引すぎるの!」

「ウィリアは黙って」

「…………」

「それでフリーズ先生、許可してもらえますよね」

「………………はぁ……分かりました。しかし当然ながら命の取り合いは無しですよ。危険だと判断したらすぐに試合を中断させていただきます。それでいいですね?」

「構いません。感謝します」


 結局俺の意向は汲み取られる事なく、半ば強制的に第二王子と決闘することになってしまった。

 これでこの状況に一段落つくかと思えば、つい先程までフォルティナを蔑み暴言を吐き散らしていた、マギアの男が第二王子に便乗し、フォルティナに決闘を申し込んだ。


「フリーズ先生! 俺もそこの出来損ないと決闘させて下さい! そいつがここに居るべきではない事を証明して見せます!」

「はぁ………………まぁこの際だからどっちでもいいんだけど…………どうする? フォルティナ、受けるかい?」

「…………受けてもいいけど条件があります」

「なんだい? 言ってごらん」

「そこの四人を一度に相手させてくれるなら、受けてあげてもいいです」


 そんなフォルティナの挑発にも取れる言葉にマギアの者たちは、机を強打し、立ち上がる。


「舐めてんじゃねぇぞ!!! 四対一だと!? 相手になるわけがねぇだろ!」

「しかしフォルティナは、四人でなければ受けないと言ってるが」

「チッ!!! いいだろう! 身の程を教えてやる!」


 こうして入学早々Aクラスでは、第二王子VSレイ、四人のマギア族VSフォルティナの決闘が、学園の闘技場にて行われる事になった。


 ◆◆◆


 闘技場と訓練場の大きい違いは、観客席の有無にある。さらに闘技場には土魔法で作られた障害物があり、実戦に近い形で戦うことが出来る。

 そんな闘技場には一年Aクラスの生徒だけでは留まる所を知らず、騒ぎを聞きつけた上級生なども集まっていた。第二王子の試合、五人のマギア族の試合と聞けば、それなりに大きな闘技場の観客席を埋めることは、そう難しくはない。

 そして第一試合は四人のマギア族VSフォルティナだ。


「おいおい、あんなの試合になるのかよ」

「一人の方はまだ子供じゃねぇか」


 観客席の野次馬たちは、相手とフォルティナの身長を見比べて、面白さを通り越して心配になっていた。同期で入学したマギア族は同年代とはいえ、フォルティナの身長は相手と比べて頭二、三個分は小さく、十五歳を疑う程だ。

 そんな中、観客席では別の心配をする者たちがいた。


(あれ、試合になるのかしら)

(え? フォルティナが不利なの?)

(いえ、幾ら四人とはいえ前衛なしの魔法使いじゃ、フォルティナの動き止められるとは思わないわ)

(やっぱりそうだよね。フォルティナ……やり過ぎないといいけど)


 フォルティナの実力を知るレイとユノは、フォルティナが負けるとは思っていなかった。短期決戦に特化し過ぎているフォルティナだが、その実力は理事長が認めるほど。

 しかし、幼い頃のフォルティナだけを知っているマギア族は、完全にフォルティナを下に見ていた。

 そして闘技場のフィールドには、それぞれ魔法の杖を構えた四人のマギア族と、鉄の杖を構えてすらないフォルティナが相対する。


「チッ!!! 杖も構えねぇのかよ!!! 舐めやがって!」


 試合の審判はフリーズが行い、双方の間に立つ。

 そしてフリーズの合図で、


「それでは! 試合! 始め!!!」


 試合開始合図と同時に、四人のマギア族は一斉に後ろに飛び、フォルティナから距離を取る。そして四人同時に詠唱を開始する。


「灼熱の炎よ! 敵を包みその身を焼き尽くせファイアストッッッ!?」

「敵を氷結にて貫ぬッッッ!?」

「風よ! 敵を斬り裂く刃もその身を変えろ! ウィンドスラッッッ!?」

「敵の攻撃を防げ! ストーンシーッッッ!?」


 一年生と言えどAクラスでありながら、マギア族の血を引く四人の魔法の才能は本物だ。威力も、詠唱から発動までのスピードも他の生徒とは桁違いだ。

 …………しかしそれは発動出来たらの話である。

 もちろんフォルティナが魔法を使わせる筈もなく、相手が体の魔力を使い、魔力を練り始めようとした瞬間、魔力が乱れやすいその瞬間を狙ったかのように、フォルティナは相手に攻撃を仕掛けた。

 地面を蹴り、まずは氷魔法を使おうとした女に接近し、その小さな拳を相手の腹に捩じ込んだ。


「ガハッッッ」


 女は吹き飛ばされ、闘技場の壁に背をぶつけ一発KO。そして同時に意識を失った。


「「「なっ!?」」」


 そんなフォルティナの圧倒的なスピードを前にして、他の三人は焦りを見せる。

 焦り…………これは魔法使いには致命的な心の乱れである。魔法はしっかりと集中し魔力を安定させなければ、発動した魔法に大きな影響が出る。そしてそれは魔力の練り始めが最も大切であり、そこが乱れて終えば、もう一度魔法を発動し直すしかない。

 フォルティナはその瞬間を見逃さず、風と土魔法を使おうとした男女を同様に仕留めた。

 残ったのはいつも最初に噛み付いてきた男だけ。


「ま、待ちやがれ! これは魔法使いの戦いだ! 卑怯だぞ!」

「はぁ……そんな事は聞いていないけど」

「そんなの言わなくても当たり前だろ!!! 俺たちはマギア族だぞ!!!」

「そう……じゃあ強化魔法を使っていいのね?」

「な!? 今まで魔法を使って無かったとでも言うのか!」

「え? うん。だってフリーズ先生が殺しちゃダメって言うから」

「――――!?」

「それじゃあ、終わらせようか」

「ま、待て! わ、悪かった! 俺が悪かったから!」

「強化魔法は便利よね。体に魔力を流すだけでその効果を発揮するのだから」


 フォルティナは右腕に魔力を流し強化を施す。

 そしてフォルティナの拳は相手の顔の寸前で止まり、辺りをその余韻で吹き飛ばし、男はその意識を失った。

次回「契約破棄」

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