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ドール・イン・ファンタジー 〜ドール精霊を救う旅へ~  作者: 屑野メン弱
第一章 リュミエール剣魔学園編
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第十三話 マギア族と第二王子


 入学手続きを終えた、俺とフォルティナは理事長推薦の元、特別生として受け入れられることになった。そのため学費などは全額免除。さらに寮も無償で貸してもらい、寝床も手に入れることが出来た。

 そして約一週間後、とうとう入学式当日がやってきた。

 入学式は日本の体育館のような場所ではなく、いくつもの長椅子が整然と並ぶ、講堂のような場所で行われた。この場所では新入生と限られた在校生、そして全教師が集合したが、俺とフォルティナはとても居心地の悪さを感じていた。それは恐らくここにいるほとんどの生徒が、貴族やそれなりの身分がある者の多くが占めているからだろう。一つ一つの所作が俺たち庶民とは根本的に違うのだ。

 さらに年齢にはかなりバラつきがあり、中高一貫に大学を混ぜ合わせたかのような感じだ。

 そんな居心地の悪い入学式で特に印象に残っていたのが、新入生代表挨拶だった。つまり、実技試験と記述試験のトップである。


「新入生代表、レクス・ロア・リュミエール様」

「はい」


 レクス・ロア・リュミエール、金髪碧眼の童顔イケメンの彼が、この国の第二王子であることも印象に残った理由の一つだが、さらにもう一つ理由が存在した。長々とお決まりの挨拶を話した後、第二王子は精霊について話し始めた。


「ご存じの方も多いと思うが、私はこの学園で唯一上位精霊と契約できた者だ。彼女と契約出来たのは私が王子という身分である事は一切関係ない。私は彼女の友となり、共に歩んで行く事を誓った。心を通わせた。だから私は上位精霊である彼女と契約出来た。勿論彼女と出会ったのは偶然だったのかもしれない。しかし彼女の友に馴れたことは必然であり、運命だとも思う。紹介しよう、私の契約する光の精霊、ウィリアだ」


 第二王子が名前を呼ぶと、彼の目の前は突然と光だし、光が集束した所に精霊らしきものが浮遊していた。ユノのような人形とは違い、とても小さく、その姿は小人より妖精に近かった。紹介された光の精霊ウィリアは小さく頭を下げ、レクス第二王子の肩にちょこんと座った。


「この子が私の契約した精霊ウィリアだ。精霊について分からないことがあったら是非聞いてくれ。以上で新入生代表の言葉とさせて頂く」


 講堂が拍手で包まれる中、俺は壇上に向ける視線を離せないでいた。第二王子が紹介した、光の精霊ウィリアと目が合ってるような気がしてならないのだ。いや、これは確実に合っている。ウィリアは一切目線を逸らす事無く俺を見つめていたのだ。恐らく俺が同じ精霊と契約しているからだろうか。その真相は分からぬまま、とても長い入学式は終わりを迎えた。


 ◆◆◆


 入学式終わり、講堂の袖裏には一人の少年と精霊の姿があった。彼の名はレクス・ロア・リュミエール、この国の第二王子である。その隣にフワフワと浮いているのが、光の上位精霊ウィリアだ。代表挨拶が終わった彼等は、どこか思い詰めた顔で話していた。


「どうだった? ウィリア、僕の代表挨拶は」

「とても良かったと思うの…………」


 今回の新入生代表挨拶は単なる挨拶ではなかった。剣魔学園は他国からも貴族令嬢、令息を受け入れる重要な機関であり、そのような場所で一国の王子が、自分は上位精霊と契約しているなどと発言するのは、自分が次期国王になると宣言してるのと同義なのだ。第一王子の立場を揺るがすまでに精霊の存在は神聖視されている。


「兄さんに王座を渡す訳には行かないからね」

「分かってるの…………でも最近のレクスは少しこんを詰め過ぎなの……」

「僕は絶対に王にならなきゃいけないんだ。実力と実績が僕にはまだまだ足りない」

「…………」


 城では日々の勉学、法学、帝王学など加えて、舞踏会の練習、社交会、剣と魔法の訓練、最近では冒険者ギルドに所属し、自らの実力の宣伝すると同時に、民草の生活水準を把握し手を差し伸べる。剣魔学園に入学すれば、さらに過密なスケジュールになるのは明々白々だ。

 そんなレクスを隣で見守るウィリアは、彼のことが心配で心配で仕方なかった。最近はレクスに休むように伝えても、話すら聞いてくれなくなり、二人の間には小さな溝が生まれつつあった。そのためウィリアは、レクスに一言「あまり無理をしないで」と伝え本題に入る。


「そういえばレクス。新入生の一人に精霊と契約してそうな人がいたの」

「なんだって?」


 ウィリアの一言は、レクスに自分の耳を疑わせた。それもそのはず、今年の新入生に精霊と契約している者の存在は聞いていなかったからだ。それは例え下位精霊であっても、学園中の噂になるくらいには重要なことである。つまり精霊と契約しているのに、その事を口外しないメリットはない。

 そしてもしその存在が、下位精霊ではなく上位、或いはそれ以上の存在だった場合、レクスが焦るのは無理もない。


「気配と存在の隠し方がうますぎるの。つまり上位精霊の可能性が高いの」

「!? 上位精霊!? そんな馬鹿な……」

「でね、少し気になることがあるの」

「まだあるのか?」

「うん、契約主と精霊の間で行われる魔力循環が少し変なの…………契約主が一方的に精霊の魔力を吸い取ってるような…………そんなイメージ?」


 魔力の流れが見える精霊には、レイとユノの間に流れる魔力がとても不自然に視えていたのだ。そしてレクスとウィリアは、一つの可能性に辿り着く。


「なぁウィリア……人と精霊が奴隷契約を結ぶことは可能なのか?」

「ううん、そんなの聞いたことがないの。そもそも精霊を契約で縛るのはいくら下位精霊でも無理なの。人と精霊では魔力の質が違いすぎるし、そもそも人が精霊に魔力量で勝ることはないの。でも……この魔力の流れは奴隷契約そのものなの」

「そうか………………行くぞウィリア」

「え? どこにいくの?」

「精霊を助けにだ」

「で、でももしかしたら何か事情があって…………」

「関係ない! 精霊を魔法で縛るなどどんな理由があっても決してあってはならないことだ!」

「ま、待ってなの! レクス! 話を聞いてなの!」


 何度も呼び止めるウィリアを無視して、レクスは険しい表情で歩き出した。


 ◆◆◆


 入学式を終えたレイとフォルティナは、これから一年間共にする教室へと向かっていた。

 クラス分けは実力と能力によって振り分けられ、レイとフォルティナはAクラスに当てられた。Aクラスは、その学年の中で最も実力のある者たちが集められる。AからEクラスまであり、下にいくほど実力は落ち、そして一クラスの人数は増えていく。Aクラスは全員合わせて二十人といったところだ。

 二人は教室に着くと席に座り、他のクラスメイトと担任を待った。続々とクラスメイトとが教室に入る中、幾人か気になる人物の姿が見られた。

 一つは二人組の、真っ黒の髪に黒目の男女である。レイはすぐにその者らの正体に気づく。以前ユノが話していた、レイと同じ世界から来た勇者である。この世界では黒髪黒目は珍しいだけであって、いない訳ではないが、その存在は東の国に行かないと中々見ることはない。

 勇者二人もまたレイの髪の色を見て、もしかしてとは心の何処かで思ってはいたが、この国の勇者が集まった時にレイの姿はなかった為、そこまで気にしてはいなかった。その為レイは、幸いにも自分の事を聞かれることは無かった。

 しかし問題は勇者ではなかった。

 少ししてから入って来た水色髪の四人組。その特徴的な髪の色は、この世界ではマギア族の他にいない。男女二人ずつの彼らはフォルティナを見て、少し驚いた表情を見せたが、その次には蔑むような目でフォルティナの元に近づいた。


「おいおい なんでこんな所に魔法が使えない落ちこぼれがいるんだ?」

「あれれ? もしかして落ちこぼれのフォルティナちゃん?」


 フォルティナは見知った男たちに軽く冷罵されるが、フォルティナは彼らを相手にすらしなかった。そんな態度が気に入らなかったのか、一人の男がフォルティナの胸ぐらを掴み怒号を上げた。


「聞こえてねぇのか! ここはお前のいるような場所じゃねぇって言ってんだよ!」


 しかしそれでもフォルティナは無視を決め込んだが、すぐ横に居たレイが男の手を掴み仲裁する。

 

「ちょっとそこまでにしなよ。ここは喧嘩をするような場所でもないんじゃない?」


 レイに注意されマギアの男は周囲を睥睨すると、周りのクラスメイトは騒動を迷惑そうに見ていた。レイの正論に男たちはぐうの音もでず、舌打ちを鳴らし席に着いた。


「大丈夫か?」

「うん、ありがとう」


 レイはフォルティナの過去を察し深く問い詰めることは無かった。精々、知り合いかどうか訊ねるくらいだ。

 そしてクラスメイトは十九人が揃った所で、担任の教師が入室し、教卓についた。


「皆さん初めまして。私がこのクラスを担当することになったフリーズ・マギアだ。宜しく」


 百八十センチをゆうに超える高身長かつ、イケメンでマギア一族特有の髪の色、さらにそのロングヘアは色合いと混ざり合い、とてつもない清潔感を漂わせた。

 フリーズ・マギアは、この学園を代表する魔法講師であり、その実力は折り紙つきだ。フリーズは一通りの挨拶を終えるとフォルティナの席に向き合い、彼女らに話しかけた。


「やぁ、君達だね今年の特別生というのは。もちろんフォルティナ、君のことも歓迎するよ」


 フリーズのフォルティナに対する対応は他のマギア族とは違い、とても友好的だった。もちろんその理由をフォルティナは知る由もなく、そんな様子をマギアの生徒は気に入らない様子で見つめていた。


「さて、もう一人の生徒についてだが…………お、丁度来たようだね」


 バタンッッッ!

 先生が二十人目について触れた途端、廊下側の扉が勢いよく開いた。

次回「マギア族VSマギア族」

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