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第5話 旅の始まり


夜が明けた。


ハルトと旅をすると決めた1日目、まだまだ疑問も多いが、まあおいおいハルトに教えてもらおう。


「おはよう!」


さわやかにハルトが挨拶をくれる。


おはようと返して、ハルトに今日からの目的地や俺のする事など聞いてみる。


「その前に、まずは地図を見ながらこの世界について覚えてもらおうかな」


そういうとハルトは大きな地図をテーブルに広げた。


それは一際大きな大陸が中心にあるのとそれを取り囲むように海を挟んで大小様々な島がある地図だった。


「まずは中心に位置するのが大陸〈エスカ〉、そしてエスカを囲むように存在してる島々の事を〈スピノ〉って言うんだ」


ハルトはトントンと指を指しながら詳しく説明してくれた。


〈エスカ〉、モルド国王が収めこの世界のあらゆる事柄の中心である大陸。


〈スピノ〉、エスカ以外の島を指す総称で大小様々だが大きく5つの島が中心にあるらしい。


テム、ライバルト、コーザ、キオン、セントカイン。


「まあスピノについては複雑だからまた別の機会に話す事にするよ」


とハルトは地図をしまいながら話した。


「さて話はそこそこにして、今から旅の時間といきますか!」


俺達は外に出て旅支度をする、と言ってもハルトが家自体を閉まってくれるのでなんとも楽な旅支度だ。


「まずは南の方に少し歩くと村があるからそっちに向かおうか」


歩きながらハルトは言う。


「もう行先は決まってるんだな、そこで武器を売るのか?」


「いや、まずは辰馬のその来人丸出しの格好を旅人仕様に変えようかなと」


確かにと思った、この格好じゃもろに来人ですと言っているようなものだ。


「そこの村は来人にも優しいし僕も知り合いが居るから安心なんだ」


「気が利くし優しいな、ありがとう」



ハルトは突然俺が感謝するもんだから少しびっくりしてるようだ。


「なっ、そんな感謝されるような事じゃないよ!」


「俺のいた世界の俺がいた環境では当たり前だぞ、礼節を重んじる、それも武術ってものだ」


そんな会話をしながらのどかな風景を歩く。


だがそんな雰囲気に似つかわしくない殺気を感じ取る。


「ハルト、なにかいるぞ」


小声で伝える。


「えっ、気配感知の魔力も持ってないのになんで分かるんだ」


「これも武術ってやつだ」


脇の森から唸り声と共に狼が現れる。


一匹の狼だが、俺の知っている狼より身体も大きく、尾が太くトゲトゲしていた。


「あれはフレイウルフ、強靭な尾での攻撃を得意とする魔物だ」


俺はハルトに聞く。


「どうする、狩るか逃げるか」


「やろう、この先の事を考えると辰馬には慣れてもらわなきゃいけない魔物狩りってやつを」


ハルトが右手を突き出しポータルからあの大剣を取り出す。


「武器にも慣れてもらわないといけないしね、この〈全局面対応魔共具 ガルガイア〉をね」


俺はハルトからガルガイアを受け取りフレイウルフの前に立つ、フレイウルフにも殺気が伝わったのか身体を低くし飛びかかる準備を完了していた。


「なっ!」


昨日戦ったゴブリンより数段早い突進に回避が遅れ、少し爪が肩をかすめた。


「辰馬!」


「大丈夫だ、この位すぐ対応してみせる」


今度は突進と共に身体を捻り、尾を振り下ろしてきた。


ズンと重たい衝撃を大剣で受け止めるが、2段目の爪が躱せない。


ヒットアンドアウェイで致命傷にはならないが、傷が増えていく。


「この武器じゃ重すぎて狼の攻撃に対応出来ないな……」


そう呟くとハルトがすかさず俺に叫ぶ。


「辰馬!柄の部分に出っ張りがあるだろ、そこをツヴァイと言いながら押してみてくれ」


こんな状況だ、言われた通りにしてみるしかない。


距離が離れた隙に言葉に出しながらボタンのようなものを押す。


「ツヴァイ」


瞬間、ガキンとガルガイアの内部で音がすると今まで刃だった部分が引っ込み、丸みを帯びる。


「辰馬、そのまま抜刀するように柄を引き抜け!」


グッと力を入れると中から先程より小ぶりで扱いやすそうな両刃剣がキラリと刃を光らせながら現れる。


軽い、現代で使ってたどの刀よりも軽く、そして扱いやすい。


ブンブンと感触を試し確信する。


「これならいける」


鞘になった大剣部分を地面に落とし柄のギリギリを持つ。


飛びかかってくるフレイウルフに集中する。


「紡流武刀術 白牙(しらきば)


脱力した状態から瞬間、力を解放し一気に下から斜め上に振り抜く。


フレイウルフは断末魔を上げる間もなく絶命した。


「辰馬!凄いよ今の技!」


終わるやいなやハルトが抱きつく勢いで駆けつけてくる。


「いや凄いのはこの武器だよ、これが昨日言ってた変形だったんだな」


ハルトは自信満々にフフンとドヤ顔しながら言う。


「でしょでしょ!これが僕の最高傑作ガルガイアさ!」


「これ戻す時はどうするんだ?」


俺は大剣の部分を拾いながらハルトに尋ねる。


「戻す時は元に戻してボタンを押しながらアインスと言ってくれ」


「アインス」


ガキンという音と共にガルガイアが元の大剣に戻った。


ハルトはガルガイアとフレイウルフの死体をポータルに入れる。


「その狼なにに使うんだ?」


「こいつのお肉は絶品だしこの尾は武器に使えそうな気がしてね」


俺は物思いにふけながら村までの道中を歩いた。


ゴブリンにフレイウルフ、あんな魔物達がこの世界には山ほどいるんだな……。


右手を見ると少し震えていた、これは武者震いか不安かはたまた疲労か。



今の俺には判断が付かなかった。

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