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第4話 目的

 

 ゴブリンと戦ってる時に武器を貸してくれた青年ハルト。


 親切に森を抜ける道案内をかってくれたのだが同時にこの世界の事を教えてくれた。


「君みたいに異世界から来た人の事は通称〈来人(キタリビト)〉と言うんだ、でも自分が来人である事は基本的に隠した方がいいよ」


「そうなのか? なんか問題でもあるのか?」


 ハルトは難しそうな顔で答えた。


「僕みたいに来人に興味がある人も、もちろんいるけど、中には物凄い嫌悪感を抱く人もいるんだ、それこそ見つけ次第監禁、過激な集団だと処刑なんて話もあるくらいだ」


「そんなに嫌われてるのか……」


「まあその人達の言い分も分かるんだ、来人は別の世界から来るだろ? という事は知識や経験、戦闘能力に至るまで元から居る僕達とは文字通り住む世界が違うんだ」


 言われてみれば確かにそうだ。


 突然森から出現した人間、同じ人間なのに中身は全く未知の存在だ、恐怖や不気味さを抱かない方が無理かもしれない。


 続けてハルトが話す。


「拒絶派の中には来人に酷い事をされた人も居る、だからこの問題は非常にデリケートなんだ」


 それであんな難しい顔をしてたんだなと腑に落ちた。


 だが1つ疑問も生まれた。


「でもこっちの人達は基本的にさっきハルトがやったみたいに魔法? みたいなのが使えるんじゃないのか? いくら来人が未知でもあんなものに一般人が勝てる気がしないんだが」


 一般人と付け加えたのは俺みたいな古武術継承者などというヘンテコ来人が居てもおかしくないだろうと思ったからだ。


「その疑問に答える前にまず魔法について説明が必要みたいだね。」


 ハルトは魔法の成り立ち方から教えてくれた。


「まずこの世の魔法は全て大地から貰ったもので人間だけではなく動物や魔物も魔法を使いこなす種がいるって訳なんだ、だから来人もその例外にはならず時間の経過と共に大地から力を貰って次第に魔法を覚えるんだ」


 ハルトはそのまま話を続ける。


「そしてそのまま魔法を悪用する来人が生まれるって訳さ」


 ある日突然異世界に飛ばされ力を貰い、その力に溺れる。


 有り得るなと思ってしまった、事実格闘技や武術でもそういう輩は見てきた。


 そんな色々な事を教えて貰っていたらもう森の切れ端まで来ていた。



 森を抜けたそこには道が広がり遠くの方に街並みが見える。


「じゃあハルトありがとな、俺はここで野宿でもするよ」


 俺は別れの挨拶をしたが、ハルトはキョトンとしている。


「いやいや! まだ話は終わってないしとりあえず今日は僕の家で泊まっていってよ! 言いたい事もあるんだ」


 家はこの近くなのか? とハルトに尋ねたがハルトは首を横に振った。


「いや、家は僕と一緒にあるんだ」


 そう言うと武器を出した時と同じ様に腕を突き出し集中し始める。


 「リリース」


 ハルトが呟くと目の前に先程より大きいポータルが出現してその中から小屋が出現した。


 「これが僕の魔法、異空間に物を詰めておける能力さ」



 中は暖かみのある木で作られた小屋だった。


 これまた暖かいココアのような飲み物を飲みながらハルトが話し始める。


 「実はこの小屋、工房にもなってるんだ、ほら辰馬に渡しただろ? あの武器は僕が作ったんだ」


 「という事はハルトは鍛冶屋って事なのか?」


 ハルトは少し悩ましげな顔をする。


 「んー、辰馬が想像するような鍛冶屋ではないかもね、魔法を使って作る武器職人って感じなんだ」



 「ほーそうなのか、でも確かにあの大剣は凄かった」


 俺は素直に褒める。


 「でしょ!でもね、あの武器の凄さはあんなもんじゃないんだよ、実は……あの大剣が変形するって言ったらびっくりする?」


 「変形!? 男でその言葉にワクワクしないやつは異世界だろうと元の世界だろうと存在しないんだよ」



 「だよね! でもこっからが本題なんだ」


 ハルトが真剣な表情で話す。


 「実は僕はこうやって魔法を使いながら1人で流浪の武器屋をしてるんだ、その旅を辰馬と一緒にしたいんだ」


 突然のスカウトだった。


 「僕の武器を使って魔物を倒し宣伝しながら旅をする、そうやって色んな所を巡る旅を」



 「今まで1人で旅をしてたんだろ? なんで会ったばかりの俺なんだ? こんな世界だ、他にも闘える奴は居るんじゃないのか?」


 至極当然の質問を投げたつもりだ、多分ハルトは良い奴だ、助けてくれた恩義もある。


 だがそれでもこの世界での今後の生き方を決める重要な選択だと思うからこそ聞かないといけない気がした。


 「それは……辰馬が僕の武器で魔物と戦ってる姿を見て僕の武器が違うモノに見えたんだ、いつもよりかっこよくて、恐ろしくて、残酷で、そしてなにより使ってる辰馬も使われてる武器も楽しそうに見えたんだ」


 「その時に思った、僕の武器を1番輝かしてくれるのはこの男なんじゃないのかって」


 その後ハルトはこんな変な事言う奴と旅なんてしたくないよねと苦笑いを浮かべた。


 そうか、俺楽しそうだったのか。


 思えばずっと窮屈だった、死ぬ思いで修行して身に付けた技を活かせない生活に。



 「最後に少し質問したいんだが、来人がこの世界から抜け出す方法ってあるのか?」


 ハルトはぽつりと答える。


 「帰ったって話は聞いた事ない」



 俺の中で決心がついた。



 「よし、やるかハルト流浪の2人旅ってやつを」




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