第2話 狩り
「全部で10匹か」
視界の先にいるにやけ面を数える。
前の5匹と後ろの5匹の背格好が違う、親子なのかそれとも別種か。
どうやら後ろのでかい方は観戦らしい様だ、前の5匹だけがずいと茂みから出てきた。
「俺にとっては好都合だ」
今の俺の装備はさっきのゴブリンから奪い取った錆びたナイフ1本。
流石に10匹相手をするのには役不足だっただろう。
チビゴブリンの装備は……棍棒2匹に無手が2匹、それに両刃の剣が1匹か。
これは武器を奪えるかが鍵になりそうだ。
俺はナイフを構え、相手がどう動くかを見る。
先に動いたのは棍棒ゴブリン2匹だった。
シンクロした様に左右から棍棒を振り回してくる。
咄嗟に後ろにかわしたがいつの間にか回り込んできた無手のゴブリン1匹の拳が背中にめり込む。
「ぐっ!」
鈍痛が背中から全身に駆ける。
だがそんな痛みを気にする間もなく、剣を持ったゴブリンが目の前のゴブリン2匹の後方から走ってくる。
すんでのところでナイフを構え剣を受け止め弾く。
「こいつら……戦い慣れてる」
敵を囲みながらの攻略、味方を巻き込まないように統率が取れた波状攻撃。
このやり方を俺は知っている、多数で1人を攻略する狩り方、こんな練習を俺も昔した事があった。
たしか親父も言ってたな、元は狩りをする野生動物のやり方を真似た戦術だと。
であれば攻略法も学んでいる。
また先に動いたのは棍棒ゴブリン2匹だった、左右からの今度はジャンプしながら振り下ろす攻撃、これ自体は本来当てる必要のない攻撃、言わば敵を後ろに引かせる行動。
だからこそここに隙はある。
振り下ろすタイミングの少し手前、その刹那1歩前に出る。
「あぎ!?」
驚いたのかゴブリンから間抜けな声が出る。
止まらぬ2匹の攻撃、棍棒よりその無防備な腹に標的を定める。
「紡流武刀術簪!」
2匹の腹めがけて1匹には手刀、1匹にはナイフで抉りこみ、続けて刺さったナイフの柄の部分をそのまま殴り深く突き刺す。
本来は二刀流の技だったが致し方ない。
悲鳴を上げながらのたうち回る2匹。
突然の事で他のゴブリンも驚いているがその隙を逃す程やわな鍛え方はされてない。
素早く棍棒を1本奪いつつ、手刀で攻撃した方のゴブリンの首を踏み抜いて折る。
そのまま後ろに方向転換しながら走る。
「次はお前だ」
俺は後ろの無手のゴブリンから狙う。
ここは棍棒の本来の使い方、力任せに振り抜き1匹の頭に直撃させる。
クリーンヒットしたのか、一撃でゴブリンは絶命した。
「残るは2匹……という訳にはいかなそうだ」
後ろで観戦していたゴブリン達がぞろぞろと前進してきていた。
子供達には任せられないと思ったのか俺に殺されたゴブリンを見て怒っているのか、どちらかは分からないがまずい状況になったものだ。
見た感じ先程のゴブリンより明らかに戦闘能力は格上だろう。
「せめてまともな武器でもあれば……」
周りを見渡しても武器になりそうなものは落ちてない。
逃げてみるか? いやゴブリンの走力が分からない以上今より危険かもしれない。
その時後ろからガサガサと音を立て進む足音に気付いた。
咄嗟に後ろを振り向くとそこには同い年くらいの華奢な青年が立っていた。
「武器を求める声が聞こえた!!」