相変わらずだな、この女神は
「やっほー!おひさだね!」
明るく元気な声が聞こえてくる。
やはり、ここも変わらずか。
ただただ白い世界。
果てしなく続いている空間。
正直ここには来たくなかったが……
「聞こえてないのー?」
「いえいえ、聞こえておりますよ、カルミナ様。」
腰まで伸びた銀髪に、相変わらず露出の多い服装で素肌が映えており、誰しもが魅了されそうな笑顔。
「ホント、ひさびさだねー。」
「10年ぶり?、いや正確には7年ぶりになりますかね。」
「あー、前回の召喚からは10年ぶりで合ってるね。」
前回の召喚が、中学3年の15歳になったばかりの頃だった。
魔王がやばそうだから倒しちゃってよー、と軽くお願いされ、なんやかんやで目標達成で地球に帰還、といった具合だ。
「それより、思い出話をするために呼んだわけじゃないですよね?」
「きゃっはー、思い出話もしたいところなんだけどさ、ちょっとまたやばそうなんだよねー。」
「そもそも、もう一回召喚するってありなんですか?」
「うーん、普通はしないのかもしれないけど、今回はちょっと特殊でさぁ。」
女神カルミナの話をまとめると、前回のように魔王が魔族をまとめあげ、人族に攻め込んでいるのではなく、魔族以外にも様々な種族同士との小競り合いが増えており、世界的な争いが起こりそうな状況とのこと。
小競り合い程度なら、特段女神サイドに介入するつもりはないが、世界規模で争いが起きてしまっては、ここまで育った星が一気に衰退する恐れがある。
そのために、複数の解決できる人間が必要になったことと、それをうまく統率ができる人間も必要になったこと。
「そしたらさ、圭吾が教師になってるし、まとめるのうまいんじゃね?そいでそのまま生徒も一緒に呼んだらいいんじゃね?万事解決っしょ!、となったわけ。」
「相変わらず楽観的というか、なんというか。」
圭吾が唖然としていると、だって考え込むと熱が出てくるんだよーと喚いている。
「それにさ、たまに圭吾のことも観察してたんだけどさ、あんまり楽しそうに生活してないなっていうか、かなり大変そうに生きてるからさ、久々に刺激でもどうかなって。」
無邪気な笑顔で語りかけてくるが、ただの思い付きで行動しているだけでは?という考えが浮かんでしまう。
「人の人生を覗き見しないでくださいよ。」
恨めしく目線を向けていると、少し真面目な顔をしたカルミナが話を続ける。
「まぁ今回もノルマにお願いして許可はもらっているからさ。」
ノルマは地球の女神であり、カルミナより先輩にあたる。
初めて話を聞いたときは、信じられないというより、理解ができなかった。
創造神がこの宇宙を作り、女神が星を育てていく。
地球の女神が【ノルマ】
そして召喚されている星、ラインの女神が【カルミナ】
創造神が宇宙の中に新しい星を作り、その星の管理を女神に託し、託された女神は星を育てていく。育て方は自由で、退廃させたりしなければ概ね自由。もちろん今回のように他の女神にヘルプをお願いすることも可能となっていた。
「なんか、ノルマには協力してもらってるからあんまり言いたくないんだけどさ。圭吾の人生かなり運命的に厳しくない?って思うことが多くてさ。」
「まあ、15歳で召喚されて、3年間もこっちの世界で生活して、地球に戻ったら元の生活に慣れる暇もなく受験でしたからね。」
「それは申し訳なかったと思ってるよー!」
受験失敗を誰かのせいにするつもりはないが、それでも当時はかなり辛かった。
「ま、そんなこんなでまた協力してもらいたいけど、よいかな?」
「カルミナ様にお願いされて、断るわけにはいけませんね。」
「やっぱり圭吾は変わらないね。久々に嬉しいよ。」
「カルミナ様も変わらないようで何よりです。」
こうして、2度目の異世界転移が始まった。