1、つまり、今の状況である。
「え・・・?今なんと・・・・・・・?」
2年とちょっとお世話になった学園の卒業まであと数か月となったある日。
窓の外は深々と雪が降り続いている。
例年の4倍ともいわれている雪の量を学園から眺め、今年は私の愛する領地に帰ることは困難かなとぼんやり考えていた私が、近くの教室から聞こえてきた声に驚きの声を上げ反応してしまったのは仕方のないことだったと思う。
私がそこに居たことも、ましてや反応するなんて考えていなかった生徒たちは、教室に現れた私の顔を見るなり顔色をぐっと悪くした。
驚愕に目を見開き、酸欠の魚のように口をパクパクと開閉しながら、顔色を健康そうな肌色から白色へと変化させていく彼女らを眺めながら、私は先ほど聞こえた言葉を反芻する。
「アルツウォーネ様はレジンドラ伯爵とご婚約されるそうよ。」
「まあ!!あのレジンドラ伯爵と!?すごい勇気ねぇ、私には真似できませんわ。」
「仕方ないことなのでは?アルツウォーネ様はせっかくのイドアラ様の婚約の打診をお断りしたのですから。あんな素晴らしい方からの栄光ある婚約打診を、好みではないからの一言で断ったのですから、当然それ以降の良縁には恵まれないでしょう。」
まあ、そんなところだったと思う。
彼女たちは、ちょっと知ってる?なんて軽いノリで話したのだろう、いつもの噂話であった。
「私がレジンドラ伯爵と・・・・・・?」
レジンドラ伯爵とはこの学院が建てられている地の領主で、常に黄金で出来た大ぶりのアクセサリーを身に着けているため裏では『金色の豚』と呼ばれている方である。
私も何度か話したことはあったが、仲が良いわけではない。
『金色の豚』と呼ばれていることは知っていたが、私は表でも裏でもそんな呼び方はしたことがなかった。
良い子ちゃん振るつもりはない。
ただその男に興味がなかっただけだ。
いつも重そうだな・・・と考えながら、金色のアクセサリーを見ていた記憶はある。
まあ、特に興味がなかったので記憶は朧気だ。
そんな記憶朧気男となぜ婚約の話が出ているのか・・・。
というか婚約の話を本人が噂話で初めて知るなんてあっていいのだろうか?
色々と言いたいことはあるが、とりあえずこれだけ言わせてほしい。
・・・・・・・・まじかぁぁぁ。
私は昨夜夢を見た。
夢の中の私は窓から外を眺めていて、その時学生たちの噂話が聞こえてくるのだ。
「アルツウォーネ様はレジンドラ伯爵とご婚約されるそうよ。」
「まあ!!あのレジンドラ伯爵と!?すごい勇気ねぇ、私には真似できませんわ。」
「仕方ないことなのでは?アルツウォーネ様はせっかくのイドアラ様の婚約の打診をお断りしたのですから。あんな素晴らしい方からの栄光ある婚約打診を、好みではないからの一言で断ったのですから、当然それ以降の良縁には恵まれないでしょう。」
まあそんなところだった。
つまり、今の状況である。