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失われた三十年

「強制をともなわない法は、燃えていない火というような、それ自体に矛盾を含むものである」

イェーリング

 昭和六十二(1986)年二月、盛岡駅ビルの地下トイレで、男子児童の遺体が発見された。彼は東京在住の中学生で、首吊り自殺を図ったものと思われた。遺書には『このままじゃ生きジゴクになっちゃうよ』と書かれていた。

 後に『葬式ごっこ事件』として大きな社会問題に発展するいじめが原因であった。


(当時、筆者も中学生でした)


 あれから三十年以上が経過した。

 その間、いじめへの対応は進歩したのであろうか。

 平成十九(2007)年には、文部科学省と国立教育政策研究所によって『いじめ問題に関する取組事例集』が発行された。

 そこでは全国の学校において、いかにいじめを解消したか、その実例が紹介されている。

 また平成二十五(2013)年には、大津市でのいじめ自殺事件をきっかけに、いじめ防止対策推進法が施行された。

 現在、全国の学校では、この法規に基づいて、いじめ対策を行っているらしい。


(現物はググってね)


 その一方で、三十年以上に渡り、いじめを原因とする自殺は後を絶たず、その度にメディアによって大きく報道され、学校や教育委員会は批判に晒されてきた。

 今日の学校におけるいじめ対応は、いじめ自体の性質によるところが大きいとしても、教員のスキルや熱意、そして学校や関係者のサポート如何によって、各学校、各地域によって、大きなバラツキがあるように思われる。

 確かに、『取組事例集』を読めば、教員や関係者らが、如何に熱意を持って、創意工夫を凝らして対応に当たってきたかが良く理解出来る。

 しかし、同じような対応を、全国の学校で一様に、同レベルでやれと言っても、恐らく不可能であろう。


 本来であれば文部科学省が、より実用的かつ具体的なマニュアルやガイドラインを作成し、あらゆる状況に対応可能な体制構築と法整備を進めるべきところだが、現状においては、積極的に指導、関与する姿勢が欠けていると言わざるを得ない。

 事件が起きる度に、メディアでその実態が大きく報道され、人々は学校の無策に憤り、関係者はいじめ対応の難しさに頭を悩ませることになる。

 しかし、誰も具体的な対応策を考えている形跡がない。


(既に考えているのかもしれないが、少なくとも誰も知らない。それでは意味がない)


 もうそろそろ、この悪魔のループから抜け出す時ではないだろうか。

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― 新着の感想 ―
[一言] いってはなんですが。 いじめる側は大勢で、しかも「強い」側です。 いじめられるものはただでさえ少数、孤独なのに、 加えて弱く、「負け組」となります。 被害者が正当な権利を訴えても、 それは握…
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